第13話:サイレンの警告と無慈悲な拘束
コンビニ弁当の最後のパスタを飲み込んだ時、部屋の空気が変わった。 静寂が破られたのだ。 遠くから近づいてくる、不穏な音。 ウウウウゥゥゥ……。 サイレンだ。 俺の心臓が早鐘を打つ。 これは、ただの騒音ではない。 俺という異分子を排除しようとする、管理社会からのメッセージだ。
音は近づき、俺のアパートの下で止まった。 赤い回転灯の光が、カーテンの隙間から部屋の天井を舐め回す。 やはり、来たか。 俺が投稿した小説は、世界の真実を暴きすぎてしまったらしい。 システムは俺を危険因子とみなし、直ちに排除に乗り出したのだ。 スピーカーから、無機質な声が響く。 「建物の中にいる者に告ぐ……」
俺は、権力が発する威圧的な渓谷を全身で浴びた。
逃げ場はない、大人しく出てこいという最後通牒。 腹の底に響くような、重く、冷徹な響きだ。 だが、俺は怯まない。 社会が俺に牙を剥くなら、俺もまた受けて立つだけだ。 俺は窓を開けず、カーテンの隙間から眼下を見下ろした。 そこには、制服を着た男たちが殺気立って待ち構えていた。
ドンドン! ドアが激しく叩かれる。 「開けろ! 警察だ!」 土足で俺の領域に踏み込もうとする暴力装置。 俺はゆっくりとドアに向かう。 抵抗はしない。 俺の言葉(小説)は既に世界に放たれた。 肉体を捕らえられても、魂までは奪えない。 ガチャリ、と鍵を開ける。
俺は、彼らによる理不尽な高速を、あるがままに受け入れた。
男たちが雪崩れ込んでくる。 俺の腕が背後に回され、冷たい金属の輪が嵌められる。 自由を奪う、物理的な圧力。 身動き一つ取れない状態にされ、俺の身体は彼らの支配下に置かれた。 だが、どれだけきつく縛り上げようとも、俺の思考までは縛れない。 手錠の冷たさは、むしろ俺の反骨心に火をつけるだけだ。
「署まで来てもらうぞ」 男が低い声で告げる。 俺は無言で頷く。 これから始まるのは、長い取り調べという名の闘いだ。 俺の思想を検閲し、罪を問おうとするシステムとの対話。
俺は、運命が下すであろう厳正な新版を、逃げずに待ち受ける覚悟だ。
俺という人間に、どのような判決が下されるのか。 正義か、悪か。白か、黒か。 法という名の天秤にかけられ、俺の人生の価値がジャッジされる。 どのような結果が出ようとも、俺はそれを受け止め、運命の行方を見届けるつもりだ。 神のみぞ知る、絶対的な答え。 俺はその時を、静かに待つ。
俺は男たちに囲まれ、部屋を出る。 振り返ることはない。 主のいなくなった部屋には、空になったナポリタンの容器だけが残されていた。




