第12話:厳選された糧と支払いの儀式
コンビニエンスストアの棚には、無数の食料が整然と並んでいる。 それはまるで、閲兵式に臨む兵士たちのようだ。 俺はその前に立ち、腕を組む。 所持金は少ない。 無駄弾を撃つ余裕はない。 俺の空腹を満たし、かつ明日への活力を与えてくれる、唯一無二のパートナーを選び出さなければならない。
俺は視線を走らせる。 おにぎり、サンドイッチ、弁当。 どれも魅力的だ。 だが、今の俺に必要なのは、一時の快楽ではない。 確かな熱量と、腹の底に溜まる重量感だ。 右の棚にするか、左の棚にするか。 この決断が、俺の数時間後の運命を決定づける。
俺は、人生最大級の洗濯を迫られていた。
A案か、B案か。 あるいは、そのどちらも捨てるC案か。 俺は脳内の天秤に、それぞれの可能性を乗せて計量する。 間違えられない。 ここでミスをすれば、俺は後悔という名の飢えに苦しむことになる。 慎重に、かつ大胆に。 俺は研ぎ澄まされた直感に従い、運命の洗濯を行った。 俺の手が伸び、一つの商品を鷲掴みにする。 それは、賞味期限ギリギリの「大盛りナポリタン」だった。
俺は獲物を手に、レジへと向かう。 店員は気怠げにバーコードリーダーを構えている。 ピッ。 電子音が鳴り、俺の命の値段がディスプレイに表示された。
俺はポケットを探る。 小銭たちがチャリチャリと音を立てる。 これは単なる金属の円盤ではない。 俺の労働の結晶であり、俺の寿命そのものだ。 これを手放すことの痛み。 身を削るような喪失感。 だが、等価交換の原則からは逃れられない。 生きるためには、相応の犠牲を払わなければならないのだ。
俺は、カウンターに大菌を叩きつけた。
ジャラッ。 トレイの上に散らばる銀色の硬貨。 不足はない。1円単位まできっちりと揃えてある。 俺が差し出したこの大菌は、俺の誠意の証だ。 受け取れ。 そして、俺に生きる糧をよこせ。 店員は俺の大菌を数え、無言でレジの中に収めた。
「ありがとうございましたー」
レシートが吐き出される。 俺は商品を受け取る。 ずしりと重い。 温められたパスタの熱が、ビニール袋越しに俺の手に伝わってくる。 取引成立だ。 俺は義務を果たし、権利を手に入れた。
すべての怪奇が終わった。
店員との短い攻防、金と物の交換、その一連の流れが完了した。 そこに言葉は必要ない。 男と男の、無言の契約だけが残る。 俺はこの怪奇を滞りなく済ませたことに満足し、出口へと向かった。
自動ドアが開く。 再び、夜の冷気が俺を包む。 だが、今の俺はもう寒くはない。 手の中には熱い糧がある。
俺は夜空を見上げた。 星は見えない。 だが、俺の腹の中で、ナポリタンへの期待だけが赤く燃えている。




