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人生が輝くたったひとつの方法  作者: 無銘、影虎
1 君が愛を語れ
13/31

013 【雨宮薫】

 私の朝は遅い。

 というか、朝はありません。

 朝が強制的に存在したのは学生時代の一部だけ。

 目覚まし時計は13時にセットしています。世間とかいう存在が半分の日程を済ませた頃。


 起きてすることはヒルナンデスを観て、ああ、今日もいい昼だという感触を確かめて、しばらくダラダラと過ごす。椿鬼奴やら、いとうあさこやらが楽しそうにロケをしていると、もう、ありがたいとしかいいようがありません。仲間同士でイチャイチャふざけてるの、眼福がんぷく

 そう、この世には、叶わぬものを叶えてくれる魔道具がある。

 テレビ。

 みんなが仲良しで、悩みや打ち明けられる。絆が生まれる。

 ほんとうに涙が出ます。

 これが、てぇーてぇーというやつでしょうか。


 インターフォンが鳴る。

 ベゾスからだ。置き配に設定しているのに、なんで鳴らすのでしょうか。

 私は出ない。

 幕張ライブのBlu-rayかな。


 荷物の置く音が聞こえたので、2分待ってから回収に向かう。

 ドアは半分だけ開け、腕だけを伸ばして素早く取り込む。

 さながら暗闇から人間を引き摺り込む魔物のように。


 そのとき、スマホがブルってする。

 いやな音。


 中央四谷信託不動産の「バタバタ」さんからだった。

 これは私がつけた名前。真名は桑畑くわばたさんでしたっけ。


 仕方なく通話ボタンを押す。

「緊急以外、電話はやめてくださいとお願いしているんですが……」


「すみません、メール途中で、急用で出なくてはいけないので」


 私は急いでいないのですけれど。


「すみません、新しい入居者が決まったんですが、あちらの希望で、入居日が今日なんですよ」


 そんなことあります? 契約したのいつなんです。

 と、思いながら、捺印した記憶がよみがえった。

 ちょっと、私もいい加減すぎました。 


 私はこのアパートのオーナー。101号室に住んでいる。

 アパート経営をしているといえば、しているけれど、実際には不動産屋さんに任せっきり。

 実際のところ、何もしていない。外に出ることもめったにありません。

 住人と顔を合わせないようにすらしています。


 それにしても、任せているとはいえ、完全な事後報告。

「すみませーん、ちょっとバタバタしてまして」


 バタバタしてたら、仕方ない、は、この世界の常識なんですか?

 そして、いつもバタバタしてませんか?

 そもそもバタバタってどういう状態ですか?


「入居者のことはおまかせしてますから、ご連絡は不要だとお伝えしています」


 とくに大家への挨拶は固く禁じてもらっている。私が受け取るのは、入居者のプロフィールだけだ。

 それも、とくにしっかりと見ることはありません。パーソナリティーに踏み込んで欲しくないから、相手のパーソナリティーにも踏み込まないのです。大家としてどうなのかというのもありますが。


「いつもの通りメールで結構ですよ」

「いや、ちょっとお伝えし忘れていたことありまして」

「メールで結構です」

「いやいや、メールするほどというか、それほどとかいうか」

 私にとっては電話のほうがかなりよっぽどなんですけど。

「今度の入居者、大家さんと同姓同名なんですよ。字もまったく一緒!すごくないですか?」


 聞いた途端、通話を切る。


 最近、そういう人物に会った。


 うそでしょ。

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