エピソード1 25歳会社員、心療内科の受診を勧められる。
「空井さん、あなたは鬱病です。今すぐ、仕事を休んで休養して下さい。」
ゴールデンウィークがあけて、しばらくたった5月中旬。いきなり私は、仕事を休職することになった。
25歳になったばかり。ゴールデンウィークには、伊勢神宮にもいって、さあここから仕事がんばるぞ~と
意気込んでいた、そんな時期。
昨年、4月から職種が変わり、私がなりたかった職種につくことができ、1年間辛い事も楽しいことも経験し、駆け抜けた1年だった。職種が変わった1年目にすべての目標を達成し、準表彰され、その活躍を買ってくれたのか、担当顧客数も増え、グループ会社と自分の支店を行き来する、そんな充実した毎日を送っていた。
5月に入り、体調がすぐれない日は増えたものの、「ただ、慣れない環境でただ疲れているだけ」と毎朝、スターバックスのコールドブリューコーヒーを飲むことが日課になったある日、上司に別室に呼ばれこういわれたのだ。
「空井さん、最近体調悪そうだけど、大丈夫?顔色もよくないし、社食も残していると食堂の方が行ってたよ。自分の妹が同じような症状で、苦しんでいた時期があるから心配なんだ。一度、会社の健康相談室にいってみてはづだろう。」
確かに、ゴールデンウィークが明けたくらいから、朝起きても体の疲れが取れないし、仕事のモチベーションが落ちていて、気分がのらない日が増えていた。ただ、自分ではよくある「五月病」みたいなものかと思っていたのだ。しかし、傍から見て、そう思われているんなら、一度行ってみてもいいかもしれない。そう思って、わたしは会社にある健康相談室に足を延ばした。
「空井さんですね。お待ちしておりました。私は、桜井と申します。奥の部屋へどうぞ。」
と都会の景色が一望できる部屋へ通された。そこの部屋に置いてあったのは、A3用紙にびっしりと自分の症状をチェックするシートと一本の鉛筆。
「空井さん、今から15分ほどお時間差し上げるので、その紙を記入してもらえますか?15分くらいして、またこちらに戻ってきますから。」
そういわれ、私は1人になった。自分の名前と所属支店名、住所、連絡先のしたからは、ずらっと並んだ最近の症状のチェックシート、その隣には、最近不安に思っていること、困っていることなどを詳細に記入する欄が設けられていた。
恐ろしい事に、チェックシートに書かれている症状にほぼチェックがつき、A3用紙がみっちりとわたしの文字で埋まっていたのだった。
15分が経った頃、先程の桜井さんがノックと共に部屋に戻ってきた。私が提出した紙を見て、深刻そうな顔をした。
「空井さん、この症状で今までよく会社に行けてましたね。かなりお辛いでしょう。こちらで、初回の予約をとりますから、一度、専門の先生の診察を受けてみてください。」
そういわれたのだった。
1週間後、私は専門の先生の診察を受けることになった。いわゆる心療内科である。
「空井さん、5番診察室へどうぞ。」
私は、ついに人生初の内科の診察を受けることになったのだった。
つづく。