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銀河機動旋風~真紅の緋音~  作者: 恥骨又造Mark.2
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調査任務へ

――闇夜が明けて、辺りは太陽の光によって照らされていた。

レジスタンスの基地も光が差していた。

人々の生きる糧となる【希望の光り】にも思えてこの星でも人の活動を告げる合図だった。


バタバタと朝から世話しない足音を立てながら緋音の寝室へと入り込み、

毛布に包まり未だ寝ている緋音を二人は容赦なく起こした。


「もう緋音ったら、朝だよ! ほら、起きてっ!」

「早く起きないと、朝ごはんなくなっちゃうよ~。ここじゃ、早い者勝ちだよ」


なかなか起きてこない緋音をリナ、マルスが起こしにやってきた。

二人は朝から元気いっぱいだった。


朝が弱い緋音だったが、二人からのモーニングコールにより目が覚めた。

それでも、寝た状態を維持したままだった。


「うぅ。わかりました~。起きる起きるってば。二人とも朝から元気だね。

ただ、今度からはレディーの寝室には勝手に入ってはダメだから☆」

「次は気を付けるよ、緋音。僕はレジスタンスの戦士だ。いつでも元気なんだ!」


二人は緋音の片腕を掴み、勢いよくそのまま彼女を起して上げた。


「こんな風に起こしてくれるとは、いたせり尽くせりだね。ふわー」


緋音は体を伸ばしなら、今度こそ起き上がりベッドから立ち上がった。

姉弟はすかさず緋音の手を取った。


そして、緋音が二度寝しないようにと、みんなが食事しているところへと案内した。


「みんな、おはよう☆」

「おはようさん。寝坊助、海賊さん?」


緋音の朝のあいさつに対しみんなから爽やかな返答がある中、

バミューダのみが、一癖ある嫌味が効いたあいさつを口にしていた。


「ったく、朝から気分が悪いよ。まぁ、朝寝坊は事実だし。ご飯食べようっと」

「そうそう。まだご飯残っているし。朝はお腹一杯食べて力をつけようよ!」


リナは緋音の分の朝食を取りに行ってあげた。

マルスも姉の後を追った。


「……。昨日はよく寝られたか?」

「えぇ。久しぶりに熟睡できた」


どこか、余所余所しいバミューダだった。

緋音も昨日までの彼の雰囲気の違いを肌で感じ取っていた。


しばらく、二人は無言のまま気まずい時間が流れた。 

それでも【沈黙】を破ったのはバミューダだった。


「……それで、昨日リーダーや参謀とは何を話していたんだ?」

「えっ? な、何をと言われても……」


バミューダは何気ないつもりを装いつつ、緋音を詮索していた。


緋音は昨晩の出来事を瞬時に思い出している。

朝から頭をフル回転させても、彼に話せる内容はなかった。

当たり障りのないことを口にした。


「特段、内容がある話はなかったさ。私のちょっとした“身の上”の話を少しだけ話した……」

「そ、そうか……。まぁ、何もなくてよかった。宇宙機械――」


バミューダが続けて緋音に問いかけをしようとしたところ、姉弟が席に戻ってきた。

彼の問いかけは姉弟達によって掻き消されてしまった。


「二人ともありがとう! あ、バミューダ。何か言ってなかったか?」

「あぁ、それはいいんだ。忘れてくれ」


リナは緊張感がある雰囲気を察し、バミューダへコーヒーを差し出した。


「バミューダ。朝から難しい顔をしないで。これでも飲んでリラックスしてよ!」

「リナ、ありがとう。くぅー。目が覚めるぜッ!」


リナとマルスも食事の席に加わり、それからは四人揃って和気あいあいと会話が進んだ。

緋音もバミューダも気まずい雰囲気から救われた。


すると、彼らの声を聞きつけたレジスタンスの参謀達がやってきた。


「おぉ。ここにおったか、バミューダ。少しよいかの?」

「大丈夫だが……」


参謀はバミューダを連れて部屋の隅へと移動した。

その際、参謀は緋音へアイコンタクトを交わした。


彼の意図を汲み取れば「アン様はここでお待ち下さい」。

あとは我々にお任せください”といった具合だった。


「バミューダは忙しいね。きっと、次の任務かもね」

「ぼちぼち、準備を始めないと伯爵が再び動き出す。

あたしもこうしちゃいられない。リナ、マルス。

また一緒に夕食を食べましょ☆」


緋音はパン一切れを口にし、ミルクで軽快に胃へ流し込んだ。

参謀とバミューダが話し込んでいる場所へと、風の如く素早く華麗に接近した。


「うぬ。そろそろ、再度、伯爵の基地への攻撃作戦を再考する必要が出てきた。

そのため、調査がいる。お前の隊は比較的、先の作戦による被害が軽傷だ。

他の分隊長は戦力を整える時間が必要だ。故にバミューダよ。お前に基地の調査をお願いしたい。

よいか?」

「あたしもそう思っていたところだった。ちょうどいい!」


「流石はバミューダ。って、ア……ン。緋音!?」


背後から聞き耳を立てていた緋音はすかさず二人の間に割って入った。

参謀は彼女の気配にまったく気づかず、バミューダへの依頼内容が筒抜けになってしまっている。


「参謀……。俺への依頼内容が緋音に丸聞こえだぜ」

「な、えっ!? し、しまった……!」


早くも参謀の計画が無崩れになってしまった。

あえて、緋音の耳に入れず、隠密かつ内密にことを進める『計画』だった。


こうなってしまっては緋音の次なる一手は容易に予想できる。

だが、参謀たる者、不足の事態に対してリスクヘッジしていた。


「な、なりません! あ、緋音。あなたにはまだ休息が必要です。それにバミューダよ。

女性を危険な任務に連れていくなんて、ナウセンスでしょう?」

「何をそんなに血相かいて。冷静な参謀らしくもない。そ、それはだな……」


女性を戦場――危険な場所へと同行することを極端に嫌がるバミューダ。

そんな彼のポリシーを知っての参謀の奥の手だった。


この流れであれば、緋音が我々の想いを踏みにじってまで強硬手段に出られない老骨な戦い方。

内心参謀は悪い顔をしている。


逡巡したバミューダは静かに口を開いた。


「今回の作戦だが……。緋音にも同行してもらう。なぁに戦いに行く訳でもない。

レジスタンスの戦士ならばこういった任務も付きまとう。いざとなれば、俺が敵を倒すさ。

そん時は緋音を物影に隠れさすさ。とにかく、今回は俺と緋音二人で任務にあたるよ」

「う、うん……。緋音はここでたいき……。ふぇッ! ば、バミューダ。

今なんと。ぐぬぬ……、お前がそう言うとなぁ」


バミューダから予想外のカウンターをお見舞いされた参謀。彼の策は崩壊した瞬間だった。

意気消沈し横目で緋音を見た。緋音は得意げな表情で腕組みをしていた。

ほれ、見たことかと言わんばかり勝ち誇っていた。


「珍しく意見が一致したな、バミューダ? そうなれば、善は急げかな」

「あまり騒ぐなよ、緋音。俺達はピクニックに行く訳じゃない。大事な任務だ。

この調査次第では俺達の命運が決まるッ! 浮かれるな」


バミューダの激により緋音の眼の色が変わった。


宇宙機械伯爵――宇宙機械皇帝の目的は緋音の拿捕。

みすみす捕まる訳にはいかない。


「あぁ、わかっている。あたしは自分の“役目”をしっかり果たすさ。ただ、その前に……」

「ど、どうしたのじゃ。緋音?」


威勢がよかったはずの緋音は急に潮らしくなり、俯きながらあるお願いをした。


「その……シャワーだけ。シャワーを浴びてくる。三日ほど、まともに汗や汚れを落せていない。

バミューダは先に入り口で待っててくれ! 十五分後に集合で!」


彼女はクルリと体を回転させて、旋風を巻き起こし女子入浴所へと勢いよく走り出した。


「あ、待て! ったく、これだから女はッ!! 」

「あのお転婆は誰に似たことやら……。二転三転してしまったが、バミューダ。

改めて調査を頼んだ。くれぐれも無理はするなよ。よいな?」


バミューダは頷いてその場を去り集合場所へと歩み出した。


「アン様。お気をつけて下さい」


参謀は儚い表情を浮かべつつも、再び緋音を見送った。


「待たせたな、バミューダ。行こうか!」

「人を待たせておいて、仕切るなよ」


緋音は準備を済ませてようやくバミューダと合流した。

二人はレジスタンスの基地を後にした。

朝の出来事とは打って変わって緋音は移動中静かだった。


レジスンタスの任務ということもあり、やや緊張気味であるが妙に大人しい。

なにか想いふっけている様子だった。


「くぅ……。毎日、力仕事で疲れたぜ。それにしても、俺ら以外にも人間がいたとは」

「あの人らは無理やり伯爵達に連れてこられたんだ。やけに女や子供ばかりだった」


――あの襲撃後、グランドアース号の船員達は無事だったが、ここでの暮らしは劣悪極まりない。

食事も最低限で朝から晩まで肉体労働。

入浴も週に一度だけで人として生きられるギリギリの状態。


そんな彼らを支えていたのが船長である緋音の存在だった。

肉体や精神が疲労しても希望を持てる。


「姉御は大丈夫だろうか……。あの騒動後、ちゃんとレジスタンスと合流できたかな」

「姉御なら大丈夫。きっと、レジスタンスと共に俺たちを助けに来てくれるさ。

それはそうと、いまさらだがよ。久しぶりに俺達だけで寝泊まりするなんていつ振りだろうな……。

いや、正確にはあの人がいなくなった日を境に……」


「確かに体感的にはついこないだだが、よく考えたら俺たちは一万二千年の時を超えた。

俺らはあの時代、海賊と言ってもトレジャーハンターに過ぎず、宇宙の何でも屋だった。

たまたま、あの時ミカギルの野郎が宇宙……世界を滅茶苦茶にしようとしたところ、

レフィーナ様やサーシャ様のおかげで生きながらえた。

まさか、そのあとレフィーナ様と一緒に航海をするとは思わなかった」


超次元の扉から過去から未来へ飛翔した際、レフィーナも彼らと一緒に航海を共にしていた。

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