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銀河機動旋風~真紅の緋音~  作者: 恥骨又造Mark.2
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分隊長バミューダ

「バミューダ。マルスは勇敢にも私を守ってくれたわ。そのせいで、アイツから暴力を受けて……」

「ふふ。マルス、よくやった! それでこそ、レジスタンスの勇敢な戦士だ。

だがな、無茶ばかりするなよ」


バミューダ笑みを見せて、そっとマルスの頭を撫でてやった。

マルスは嬉しくなり、誇らしげに胸を張った。


「姉ちゃん、気にすんなよ! これは名誉の傷だ。男なら抵抗したまでだよ。

なぁ、バミューダ?」


二人から話を聞いている最中、バミューダは鋭い視線を『緋音』に向けていた。


「あぁ。それが戦う男の名誉かもしれない。それで、この人は?」

「おっと、いけない! この人が俺たちを助けてくれたんだ! 分隊長達にも負けないぐらい強いよ! 

なんたって、あの三銃士の一角ミケルをぶっ飛ばしたんだもん。

ただ……。結果的に俺たちが足手まといになって人質にされて、あぁいう状況にさせちゃったんだ」


マルスの説明を耳にして、バミューダは警戒心を緩めた。


「そうだったのか……。それにしても、あんた強いな?」

「ギリギリだったさ。あなたも見事な射撃ね。まさか、一撃で頭を撃ち抜くとは」


この時、二人は近づき顔を合わせた。互いに銃へと目線がいった。


「あぁ、これか。俺の相棒である『小宇宙銃剣コスモガンソード』。狙撃は宇宙一さ! って、あんた女なのか?」

「こ、小宇宙銃剣コスモガンソード!? あたし意外に所有者がいるとは……。うん? 女だけど、それがなにか?」


バミューダは緋音が【女性】だと知り動揺が隠せずにいる。

緋音は彼が自分と同じ小宇宙銃剣コスモガンソードを所持していることに驚いた。


「女がこんな危険な戦場に来るもんじゃない。

それにしても、俺以外にもコイツを持っている奴に出会うとは……」

「何だって、そんな女を邪険にするのさ。あたしは、そんじょそこらの女子とは違う。

宇宙海賊――人呼んで『真紅の緋音』さぁ!」


バミューダは必要以上に女性が戦場で戦うことに対して嫌悪感を抱いている。

それは彼自身のある「出来事」がトラウマと化している。

この“真相”はおいおい、明らかになっていくだろう。


小宇宙銃剣に関しては宇宙に数本存在すると伝えられている。

その所有者が『奇跡的』に出会う形だった。


バミューダの銃はライフル型だった。

そのため、銃身は長く波動エネルギーを溜めて一気に放出し遠距離からの狙撃を得意としている。


「あの髑髏が付いた船の船員なのか! 機械伯爵不在中に襲撃をかけたが戻ってきやがった。

おかげで、俺たちは作戦変更を余儀なくされた」

「船員も何もあたしは『グランドアース号』の船長なんだ。なるほど。それであの基地は襲撃を受けていたのね。大まかに理解した」


想定外の事態によって、レジスタンスの基地攻略作戦は頓挫していた。

そのため、バミューダは劣勢になっていた戦地の仲間達を救うべく、彼は戦場を駆け回っていた。


「その口ぶりだと、あんたはあの時、基地にいたな?」

「あぁ。それには深い訳があってね……」


緋音は狼狽しつつも、これまでの経緯を洗いざらいバミューダに打ち明けた。


「……な、なんだと!? あの伯爵と一騎打ちをしただと? 

負けはしたが殺されずに捕らえられて、ここに来たのか」

「……まぁ。負けはしたけど、波動弾で半身を吹き飛ばしてあるわ☆ 

あいつが完全に復活するまでに時間はかかると思う」


現レジスタンスの戦士達が伯爵と戦い生き残った者はいなかった。

緋音の話を聞いてバミューダは半信半疑であった。


「経緯はおおよそ、理解できた。では何故ここで三銃士と戦っていた?」

「あの襲撃時、船員――あたしの家族達に助けてもらって脱出したのさ。

見慣れない地でレジスタンスを追い求めて、

森に入ったらマルス達が襲われているところに出くわしたって訳さ」


緋音の真っ直ぐな瞳を見て、バミューダは彼女の真意を汲み取った。


「となると、俺たちの『敵』ではないな。むしろ、目的は近いかもしれない」

「元々、レジスタンスと協力して、再度基地に乗り込む予定だった。なぁ、バミューダ。

あたしをレジスタンスへ加えてもらえないだろうか?」


緋音も必死だった。

宇宙機械伯爵の実力を知っているからこそ、独りでは到底仲間の救出をできないとわかっていた。


「よくわかった。とりあえず、俺たちの『アジト』へと案内はしてやるさ。

ただし、お前を迎えるかはリーダー次第だ。いいなぁ?」


「うん、それでいい。恩に着るよ、バミューダ」


バミューダの返答に対して、彼女は感謝の言葉を口にしていた。

その時の表情はいつもと違い可愛げのある笑みだった。


「よ、よし。二人もアジトへ行くぞ。準備はいいな?」


『うん!』


――こうして、緋音一行は森を後にした。

しばらく、歩み緑が消えて荒れた荒野へとたどり着いた。


「ゴホっ、ゴホ。こんなところに、本当にレジスンタスのアジトがあるのか?」

「あぁ。もうじき到着する。俺も毎回、迷っちまうがな」


砂嵐が吹き荒れ、足場も砂によって安定しない地帯だった。

大きな岩も転がっている。隠れ蓑にするには打ってつけの地形だった。


「うぅ~。バミューダ、疲れたよ……」

「もう少しの辛抱だ。ほら、頑張れ」


バミューダはしゃがみ込みマルスをおぶってやった。


「ふわー。父ちゃんを思い出すよ……」

「もうマルスは甘えん坊ね。でもいいな……」


気丈に振る舞っているがリナもまだ親に甘えたい盛りだった。

二人の両親は機械伯爵によって連れ去られていた。


「リナ。あたしでよければ乗りな?」

「えぇ……。でも緋音はミケルとの戦いで疲れているでしょ?」

「いいの! 子供は遠慮しないの」


緋音の計らいでリナはそっと、彼女の背中に抱き着いた。


「緋音、意外と肌が綺麗でスベスベで気持ちいいや。ありがとう!」

「意外って! まぁ、お褒めの言葉ありがとうございます☆」


安堵した姉弟はバミューダと緋音の背中で眠りについた。

ふと、緋音は歩きながら、こういった光景を懐かしんでいた。


生まれてから本当の両親の記憶は覚えていない。

それでも、育ての親である『星森勉』に愛情を注がれ今がある。


そんな彼女も物心つくまでに、親の温もりに餓えていたかもしれない。


「お前、いい奴だな……」

「な、何だよ! あらたまって!?」


バミューダからの予想だにしていない言葉に緋音は慌て顔が紅葉していた。

彼女は意外とシャイな一面もあった。


「はは。何をそんなに慌ててやがる。リナが起きちまうぞ」

「わ、わかってる。あまりあたしをからかうなよ!」


そんな他愛もない会話をしつつ時が流れた。

ようやく、目的地へと到着した――。


「おっ。座標はここだな。緋音、マルスを頼んだ。少し離れてくれ」


バミューダは静かにマルスを降ろし緋音に託した。

そのまま、しゃがんだ体制を維持したまま足元を探っている。


「これだな。っし!」


砂を払ったところには鋼鉄でできた扉が姿を現した。

バミューダは扉を持ち上げた。


「これでよし。さぁ、中に入ろう。あまりうかうかしていると扉が閉まってしまう」

「ここまで、厳重にしているとは驚いた。うん、わかった」


そのまま緋音一行はアジトの中へと消えて行った。

それと同時に扉も閉じられ、地面に収まった。

アジトまでの通路は、必要最低限の明かりだけが点灯している。


緋音とバミューダは姉弟を地面に降ろして、体についた砂埃を払った。


「バミューダ、ありがとう! どうやら、アジトに着いたみたいだね」

「緋音もありがとう! おかげで体力が回復したよ」


眠気眼で目を擦りながらも姉弟は緋音、バミューダに感謝を口にしていた。

その言葉に緋音とバミューダは微笑んだ。


「おう。それじゃ、最後は自分の足で歩けるな?」

「もう大丈夫さ! さぁ、行こう」


緋音一行は歩くことを再開した。

不思議と心身共に疲弊していたはずなのに、緋音達の歩幅は移動当初と変わりがなかった。

しばらく、道なりを進み一際明かりが強い入口に出た。


うっすらと、人の声も聞こえている。


『よし、着いた。みんな、ただいま!』


「おぉ、バミューダ! 無事だったか! よかった。

おーい、参謀。分隊長が戻られたぞッ!」


バミューダ、帰還の報せが届いた瞬間、一斉に歓喜に包まれた。

ぞくぞくとレジスタンスの面々が集まり、バミューダを迎えた。


よく見ると、マルスやリナぐらいの年の子達も奥から出てきて、勢いよく駆け寄っていた。


「一時はどうなるかと思ったよ。バミューダ分隊長のおかげで生き延びたよ。

さぁさぁ、休んで休んで!」


基地攻略は失敗に終わったが、バミューダの計らいによって【戦力】は思いのほか削られずにいた。

バミューダが殿を務めて、レジタンス達を退避させた賜物だった。


「みんな、手厚い歓迎ありがとうよ。いたせり尽くせりって感じだな」


――あっと言う間にバミューダは仲間に囲まれ、

子供達に手招きされながら、中央の椅子に腰を掛けた。

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