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銀河機動旋風~真紅の緋音~  作者: 恥骨又造Mark.2
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脱出

波動弾が機械伯爵の体を貫いた――。


「やったか……! いや、手ごたえが足りない。駄目なのか?」

「何と言う威力。この体を持ってしても、半壊するとは。ただ、頭を打ち抜くべきでした。

私は半機械人間のため、心臓を狙ったのでしょうが。私は生まれつき右にあるのです。

っても、傷みそのものを感じることができません。ただ、私は「賭け」にも勝った。

さぞ、貴女は絶望したでしょう。こうして、私直々に拘束させていただきますよ」


緋音は小宇宙銃剣コスモガンソードを取り上げられ、両手を拘束された。

屈辱的な姿だった。


「これで、貴女と私との因縁も清算できました。おかげ様で清々しい気持ちです。

こんな気持ちはいつ振りでしょうか。

ここから、皇帝陛下の覇道がリスタートしていきます」


この瞬間、真紅の緋音は宇宙機械伯爵に敗北した――。

それでも、彼女の闘志は燃え尽きることはなかった。


この状況を打破するため、必死に頭をフル回転させていた。

この出来事を機に緋音は現代へ跳躍した使命――。


そして、『出生』を知ることになる。

それは、緋音自身の体を廻る【血の宿命】であり、受け継がれた意思の赤き血潮。

これから、銀河に“旋風”を巻き超すかもしれないが、

無情にも拿捕されたグランドアース号は強制的にワープさせられ虚空へと姿を消した。


緋音の不屈の炎も限界を迎え、連戦により疲れがピークに達していたことあり、

意識が朦朧とし目の前が暗転した。


しばらく時が流れて、再び船体に衝撃が走った。

緋音はその衝撃によって目を覚ました。目覚めは最悪だった。


「……! 随分と荒い運転だね」


自ずと口調や態度も悪くなっていく。


「おイ。しんくのあかネ。着いたゾ。大人しくついテこい」

「もうちょっと、丁重に扱えや。大事な客人なんだろう?」


緋音が捕らえられている部屋へ「機械人間」がやってきた。

人間型をしているが、無機質な素材でできていた。

たどたどしい会話からすると、純粋なロボットに違いない。


悪態を付く彼女を見かねて、ロボットによって強引に立たされた。


「……。うるさイ、立場をわけまヱろ」

「はいはい。付いていくよ」


緋音はロボットに連れられなくなく部屋を後にした。

移動中に彼女は複数の足音を耳にした。


「ここはどこだ……。やけに静かだ」

「マルコ! 無事だったか?」


足音の主はグランドアース号の船員達だった。

彼らも緋音と同様にロボット達に連れられていた。

宇宙機械伯爵の襲撃後、再会を果たす形だった。


「姉御! よかった、ご無事で! 心配しましたよ」

「みんな、すまない。あたしのせいでお前たちを危険な目に合わした」


船員は全員無事ではあった。

緋音は自然と船員達に謝罪の言葉を口にした。


「そんなちっぽけな事は気にしないでくだせぇ。そんな事よりも……」


マルコは緋音に近付き声のトーンを下げた。


「ここがあの野郎の『基地』のようですな。にしてはやけに静かだ」

「あぁ、殺風景だしな。それにロボット共も戦闘型ではない気がする」


船員の中でも一際冷静な男、マルコ。

彼は一万二千年前から宇宙海賊を生業としている。

三十歳前半で独身。特別カッコいい容姿ではないが、シュッとしている。

頭はキレ白兵戦もこなせる。


肩書はないが、実質『副船長』的な役割を担っている。


「なにヲおまえら、こそコソはなしてぃる?」


二人が話し込む姿を目の当たりにして、不審に思ったロボットはたまらず間に割って入った。

そして、少々強引に二人を引き裂いた。


「わぁ、ビックリした! なんだよいきなり?」

「感動的な瞬間に水を差してくれちゃって。あぁ、お腹痛ッ!」


二人は驚きつつも、すぐさま小芝居を始めた――。


「お前が乱暴したせいで、姉御が倒れちまった。

あぁ。こりゃ、伯爵様の前に行く前に死んじまうな。アーメン!」


「託したぞ……マルコッ! 天下の大将軍になれよッ!」


緋音もマルコの悪ノリに呼応した。

演技プランゼロ、台本なしの状態でアクターとなった。


「わ、私ハ……らんボウはしていない。女が勝手に痛がりハジめただけだ」

「早く手当しないと、ホントに死んじまうぞ! 俺は“船医”でもある。

だから、俺の縄を解け! そうすれば、処置を行える。さぁ、早く!」


ロボットは【想定外】の事態に困惑し動揺している。

彼らは独自に考え、動くことはプログラムで想定されていない。

ただただ、主人から言われた命令通りに動き遂行するだけの機械に過ぎず、

物事を柔軟に受け入れる“心”がない。


「モタモタするな。最善を尽くせッ!」

「……りょうかいシタ。これでいいか」


緋音の人命を優先しロボットはマルコの縄を解いた。


「あんがとよ! 姉御大丈夫か?」


マルコはロボットへ感謝を口にしつつ緋音に近寄った。

再度、声のトーンを下げて二人は会話を再開した。


「うしっ。これで、姉御も解放できました。

小宇宙銃剣は別のロボットが持っているのを先程、見てやす。

きっと、残りの仲間もこの道を辿ってくると思います。それまで、横になっていて下さい」


「ありがとう、マルコ。助かるよ! 小宇宙銃剣の在り処までも把握しているとは流石だ。

うん、みんなと合流しよう」


――しばらくして、また騒がしい声が聞こえてきた。


「腹減ったー。それに眠い」

「もう歩くのは勘弁だぜ……」


グランドアース号の残りの船員達もロボットに連れられ、トボトボやってきた。


「マタ、ぞろゾロときたナ」


憔悴してやつれていた残りの船員達は、緋音とマルコを目の当たりにして彼らに飛びついた。


「姉御ッ! 大丈夫ですか、姉御? マルコどうなんだ?」

「シー! お前ら大丈夫だ。あんまり騒いで……余計な心配するな!」


床に横たわる緋音を横目に船員達は純粋に心配していた。

冷静なマルコは、彼らを静めた。


「それなら、よかった……。ふぅー。あれ? 姉御の縄が解けている?」

「ど、ドイウことだ。おまえ? だましたな?」


『ば、バカッ!』


ひょうきんな船員は一切空気を読まず、目にしたことをそのまま口にしてしまっていた。

これによって、マルコのプランは崩れた。

次なる手が閃くまでに……。


作戦を練っていた――次の瞬間、爆発音が響き基地全体へ衝撃が走った。


「な、何だ!?」

「コンナ時に、レジスタンスの襲撃か?」


すぐさま基地内で【警報】が鳴り響いた。


『レジスタンスによる攻撃を受けた。全機、戦闘態勢』


疑惑から確信へと変わりロボット達も状況を理解した。


「真紅の緋音、早く立ち上がれ。ワレワレはやるべきことができた」

「次から次へとイベント続きだわ。にしても、レジスタンスとは……?」


彼女の脳裏には気になる“ワード”が巡っていたが、

ロボットの指示に素直に従い立ち上がった。

そのまま“両手”をロボットに差し出した。


「騙してすまなかった。さぁ、早いとこあたしらを目的地へ案内して」

「サイショから、素直に従っていれば今頃は……」


ふと、その体制のまま緋音が頭上を見上げると、

天井に亀裂が入っていることに気付いた。


「……! 天井が落ちるぞっ! みんな、逃げて」

「その手には、のらないぞ。子供騙しも大概にシロ」


彼女の忠告を無視して、ロボットは緋音の腕に縄をかけようとした。


「あ、姉御! 落石がっ!」


船員達の声と同時に巨大な石が緋音とロボットの真上に落下した。


「危ない!」


緋音はそう叫びながら、ロボットを抱きかかえて飛んだ。

間一髪、巨大な石の下敷きになるところを二人は脱した。


「ふぅ、間一髪だった。大丈夫か?」

「……な、ナゼ!?」


彼女の咄嗟の行動によって二人は無傷だった。

それでも、ロボットは事態を理解できずいる。


敵対する者同士で自らを危険に晒してまで、ロボットである自分を救う矛盾点。

行動原理が機械のマニュアルオペレーションにはなかった。


「う~ん、あたしもわかんない。その場のノリかな。損得や考えて行動しなかった。

いつもなら悪い方に行くが、今回は結果オーライかな☆」


「これが、感情――。ヒトの意思なのカ」


特に誇ることなく自然な雰囲気なまま、緋音は屈託のない笑顔を見せた。

ロボットは彼女の返答に理解はできないが、納得はできていた。

それは、遠い昔持ち合わせていた“気持ち”なのかもしれない。


今は【超人プロレス漫画】でいうところ、ゆうじょうパワーを認識した状態だった。


「……ありがとう。これガ最適な言葉なンだろうな」

「あぁ、そうかもね……」


この場にいる全員、安堵していたが、一人だけは違っていた。

彼は千載一遇のチャンスを逃さなかった。


「全くの想定外だったが、それゆえに転機が巡ってきた! 

姉御はこのまま基地から脱出して、その『レジスタンス』とやらと、合流して下さい! 

さぁ、これを持って」


マルコの眼に光が宿り、緋音へ小宇宙銃剣コスモガンソードを投げつけた。


「おわ。いつの間にありがとう、マルコ。だ、だけど……」

「俺達は問題ないですぜ。頑丈だけが取り柄です。今の内に脱出を!」


緋音は船員一人一人と目線を合せて頷いた。


「必ず……かならず、みんなを迎えに来るからッ!」


彼女は反転し、基地の出口へと走り出した――。


「待ってますぜ、姉御……。って、アンタらは追わないのか?」

「イイ。どうせお前らガ暴れて、収集がつかなくなる。それにあの娘はきっと帰ってくる。

残されたお前たちが希望を託した者だ。

もし本当にレジスンタスと手を組むことになれば、厄介だがな……」


こうして、宇宙機械伯爵の基地到着後、

紆余曲折を経て緋音は基地から脱出することができた。


ただ、状況は依然として悪い。それでも、緋音は一心不乱に走り続け光を捉えた。


「はぁはぁ。どうにか、出られた……」


基地の外は殺風景で岩や砦に囲まれていた。

改めて、外から基地を眺めて強固な作りだと緋音は認識した。


「今回、レジスタンスの襲撃によって隙を突いて脱出できた。

それに加えて、伯爵に負けはしたが、波動弾を奴に命中させ、

一時機能不全にでき指揮系統も乱れていたはず。

近い内にここを攻めるには仲間がいるなぁ……」


緋音一人では“攻略不可能”な鉄壁の要塞。

万全な状態である【グランドアース号】ならば、一隻でどうにかなる戦力差。


「今は外観をこの目に焼き付けておこう。

にしても人影がない。砲撃もあれ以来、一度もない。何かがおかしい」


『キャー、助けて!』


基地正面の裏側から女の子のような声が聞こえた。

緋音はすかさず、声がする方向へと再び、駆け出した。

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