表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
銀河機動旋風~真紅の緋音~  作者: 恥骨又造Mark.2
16/17

反撃の狼煙

悪態も収まり静かに頷くなど、この話を事実と受け入れた様子だった。


「みんな、俺もこの話を少し前に聞いた。正直、俺もすぐには信じることはできなかった。

ただ、緋音がこの星――レジスタンスへ入隊したことを機に運命の歯車が動いたように思える。

数年前、俺のせいで大隊長ベティは死んだ。そん時、参謀は苦しいが、いずれ赤き戦士がやってくると言った。信じてはいたが、半ば忘れかけていた。

それでも、緋音がやってきて三銃士の一角を倒すことができた。

彼女と一緒に時を過ごしてみて、俺はもう一度、希望を持ちたいんだ」


大隊長ベティの名を聞いて、中堅の戦士達は身が引き締まった。

いささか、恥じらいの心もあった。

同時にその息子バミューダの姿に、感動している。


「うぅ……。バミューダ、大きくなったな。きっと、大隊長も喜んでおられるぞ」

「な、なんだよ。いきなり、ったく折角よ……」


出口のないトンネルに光が差しようやくゴールが見えた瞬間だった。

これからの戦いで命運を握る緋音も思いを吐露する。


「あたしは参謀やバミューダが期待するような人間じゃない。まだ、エンペリオンの力だって、

何なのか分かっちゃいない。でも、そんなあたしをレジスンタスへと迎い入れてくれたみんなが大好きだ。

だから、あたしは行くよ。船員も助けてレジスタンスの仲間も解放するさ。

みんな、力を貸して欲しい」


自分の運命――。

緋音は立ち向かう決意をしていた。


それは自分自身、みんなにとって、良い方向へと導かれる選択だと思っている。


「……アン様。よくぞ、おっしゃっていただきました。

今こそ、我らも一つとなりこの星を解放するのじゃ。よいな?」

「参謀、その通りだ。みんな、覚悟を決めよう。俺達はレジスタンスの戦士だ」


緋音を蔑んだ言葉や視線は消えていた。

むしろ、部外者にかかわらず、本当の意味で解放を宣言したその姿に尊敬や畏敬が込められている。

その雄大で慈悲ある姿を目の当たりにしている参謀はかつての「レフィーナ」を彷彿させていた。


参謀の目頭を熱くさせていた。


「……。して、バミューダよ。偵察任務の成果はどうじゃった?」

「警備レベルは上がっていた。ただ、ドジャーのおっさん達はまだ無事だった。

それに緋音のお陰でこれを入手した」


レジスタンスの基地到着後、息つく間もなく事態が進展していた。

本来の任務であった偵察任務の報告がまだだった。


「おぉ、ドジャーも無事じゃったか。うぬ。流石はアン様。どれどれ」


バミューダは緋音の協力者である偵察ロボットから授かった基地の図面を参謀に渡した。


「な、何と……。これがあれば、第二次基地攻略作戦を練れる。リーダーよ。

今すぐにでも分隊長を集めて作戦を考案するぞよ。アン様もお越し下さい」

「わかった。やろうッ!」


レジスタンスの幹部達は大広場を後にした。

緋音も彼らの後を付いて行こうとした瞬間、マルスに声をかけられた。


「あ、緋音。いや、アン様ッ! 無事でよかった!」

「マルス、ありがとう! もうアン様なんて止めてよ。緋音って呼んで。

参謀が余計なこと言うから。それからマルス。あたしらが留守の間、みんなから、

あたしを庇ってくれてありがとうね☆」


まだ幼いマルスやリナでもレフィーナとサーシャが起こした出来事は伝えられている。

思わず参謀から出た真名を聞いて、自然とその娘である緋音を「アン様」と呼称するほどだった。


「うん。いつもの“緋音”でよかった。僕は緋音が大好きだ。命の恩人でもある。

だから、大人達の身勝手な判断に嫌気が差したんだ。僕はいつでも緋音の味方だよ!」

「なんだか、こっちが照れちゃう……。嬉しいや」


「きっと、緋音なら伯爵を倒してくれる。ただ、一人で背負わないでね。

バミューダやレジスタンスを頼ってね」


自分を奮い立たせていた緋音だった。

マルスやリナと話したことで肩の荷が下りて、

彼女の中で渦巻いていたプレッシャーが和らいだ。


「あぁ。ハナっからそのつもりさぁ! それじゃ、行ってくるよ!」


緋音は満面の笑みを見せて姉弟の前から姿を消し、レジスタンスの幹部達と合流した。


「すまない。遅れた!」

「アン様、お待ちしておりました。早速ですが、基地攻略作戦を練りますぞ。

どうぞ、知恵をお貸し下さい」


緋音とバミューダは洞窟で仮眠を取ってから、休まずにレジスタンスのアジトへと帰還した。

当に肉体と精神は限界を迎えているがアドレナリンが出ているため、意識が覚醒していた。

緊張感を維持したまま眠気を跳ね除けている。


「なるほど……。奴らは塔上部分が入口になっていることは我々が知る由もないと思っていた訳か。

先の基地攻略作戦ではまんまと、三銃士ガイオンとダダへ正面から挑み敗走し、

仲間の多くが背をミケルに討たれた。だが、今回はミケルもいない。そして、アン様もおられる。

活路が見えてきたぞよ」


「うーむ。ガイオン、ダダを基地から引っ張り出し奴らを分断させ、

塔上から強襲する流れがいい気がするな。各部隊の役割が重要だな」

 

宇宙機械伯爵を討つには障壁がある。

三銃士ではなくなったがガイオン、ダダは分隊一つでは太刀打ちができない戦力差。

ミケルのような迂闊に単独行動に出ることは予想できない。


逆に言えば、伯爵から剥がして防衛力を弱体化させれば、

強襲により伯爵へレジスタンスの牙が届く可能性がある。


「三銃士を引き付けていい具合に基地から離す」


「リーダー、参謀。その役目は俺の分隊に任せてくれ。

ガイオンとは因縁がある。左翼、右翼に分けて分隊を連結させ決戦に備えよう。

元ドジャー分隊長の残党である俺らが命を懸けてガイオンを引き付けて分断させる。

俺が左翼大隊を請け負う。マイティー分隊は右翼大隊を任せてみてはどうだろうか?」


元ドジャー分隊長の元で戦っていた歴戦の戦士、クリスが名乗り出た。

その彼から白羽の矢が向けられたのはマイティーだった。

彼は大隊長ベティの元で彼女を支えつつ、

現場で柔軟に対応してこれまで幾多の戦場で活躍してきた。


「大役だな。俺も生き長らえている意味があったな。それいいと思う」

「クリスにマイティーよ。率直にお前達、いや連合分隊はかなり被害を受けると思う。

これは参謀として言わなければならない。それでも、この大役を受けてくれるか?」


二人は腕を組みながら静かに頷いた。

他の幹部達からも特に異議はなかった。


「これで伯爵の懐刀を無力化できる。後は基地内部の攻撃部隊。

これは性質上、少数につきる」

「その役目はあたしに任せてッ!」


静観していた緋音だったが、自ら名乗り上げた。

彼女は唯一、伯爵の基地から生還したこともあり、内部を把握している。

まさに、この攻撃部隊の適任と言えた。


――すると、意外な人物も彼女に続いた。


「アン様をお守りするのもワシの役目。

みなの者、参謀ではなくレフィーナ様を支えた大臣としての役割を全うさせてくれ」


緋音を見守るだけではなく、参謀は一緒に戦うことを決意し自ら志願した。

レジスタンスのリーダーは若干、驚きはしつつも快諾した。


「いいでしょう、参謀。これは各々、与えられた役目を全うする決戦。

俺も戦場に出て指揮し、レジスタンスの戦士達を鼓舞する」


そして、一同は褐色の戦士へと目をやった。


「バミューダよ。お前はどうする連合分隊として戦場を駆け回るか? 

それとも、ワシらと一緒に基地内部へと強襲するか。どっちみち、鋳薔薇の道じゃが」


「みんな、これまで色々あったがそろそろ、決着の時を迎えられると信じている。

俺は緋音と一緒に伯爵を討つ。だから、みんな死ぬなよ?」


バミューダは緋音と共に戦うことを選択した。

緋音は彼の決断に思わず、嬉しさの感情を露わにしていた。


「バミューダ、ありがとう! これでみんなを救えるね☆」

「ば、馬鹿野郎……! 離れろッ。まだ、何もなしえちゃいねぇだろ」


緋音の真っ直ぐで気持ちが込められた愛情表現にバミューダは過剰に反応していた。

その光景に両翼の連合分隊長は苦笑している。


「バミューダ。ガキじゃあるまいし。お前も抱き返してやれよ!」

「そうそう。ようやく、君にも春が訪れたようだね。ベティ大隊長も喜んでいるよ」

 

連合分隊長からバミューダに茶々が入った。

どうやら、こういった淡い恋模様は中年の戦士達は好きらしい。

バミューダは相変わらず点で駄目だった。


緋音も緋音で純粋故に勘違い男子を生む小悪魔的な立ち振る舞いをしてしまう。

間違いないのは彼女もバミューダに対して好意は抱いている。

でなきゃ、さすがに抱き付きはしないだろう。

そうでしょ? きっと。


「ゴホっ。バミューダにアン様よろしいでしょうか?」

「お、おう」


カオスな状況を見かねて参謀はバミューダに助け船を出した。

参謀はいつしか、元よりアンこと緋音に対しては叔父や父親に近い感情を抱いている。

そのため、緋音が若い男と良い雰囲気なのが、やや複雑な心境だった気もする。


「うん、大丈夫だ。基地内部へと突入後はどうしようか?」


「その後は俺から提案がある。俺と緋音で分担しみんなを解放しようと思う。

俺はドジャーのおっさんやレジスタンスの戦士を解放する。体はボロボロかもしれないが、

まだ彼らの心は死んでいない。きっと、大きな戦力として基地内部で暴れてみせる」

 

バミューダは確信していた。

偵察任務の際、ドジャーをはじめ強制労働に苦しめられていたレジスタンスの戦士の眼を見て、

心は死んでいない。一縷の希望は持っていた。


ただ、きっかけとなる出来事がなかった。


前回の基地攻略作戦では彼らを解放できず、失敗に終わった。

これが成功すれば革命が起る。


「ドジャー達は無事じゃったな。奴等なら武威を奮ってくれるだろう。しかし、バミューダ。

成長したな。不確定要素ではあるが、ワシもその案を考えておった」

「その作戦で行こう。あたしも船員を救出後、グランドアース号を再起動させる。

あの船があれば、伯爵何てイチコロよ」

 

第二次基地攻略作戦の大枠が決定した。

あとは作戦を実行するのに必要な段取りをすり合わせる必要があった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ