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銀河機動旋風~真紅の緋音~  作者: 恥骨又造Mark.2
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追従される者たち

「待て、真紅の緋音」

「うん? あんたは!?」


颯爽と走り出そうと勢いよく足で地面を蹴った瞬間、緋音は見覚えのあるロボットを眼にした。


「しまった。こんなところに偵察ロボットがいたとは。やるしかない」

「ま、待ってバミューダッ!」


同時期にバミューダも監視ロボットをその目で捉えていた。

小宇宙銃剣コスモガンソードを剣モードへと変形させ、

緋音の静止を無視し言おうなくロボットへと斬りかかった。


「お願いだ、バミューダ。少しだけあたしに時間をくれ」

「ど、どういうつもりだ。緋音ッ!?」


緋音も瞬時に小宇宙銃剣コスモガンソードを剣モードへと変形させて、バミューダの一太刀を止めた。


バミューダは緋音の行動に困惑した。

再び、怒りが込み上げていた。


「今、コイツを倒しておかないと。敵が集まってくる。何故緋音は止める?」

「このロボットはあたしが“基地”から逃げてくる際に世話になったんだ。

だ、だからせめて話をさせてくれ」


緋音も譲る気はなかった。

バミューダを押し返すほどの気迫だった。


そんな彼女の真剣な眼差しを前にし、バミューダは彼らに猶予を与えた。


「うッ。お前がそこまで言うなら、少しだけ待とう……」

「ありがとう、バミューダ」


鍔迫り合いになっていた二人は力を抜いた。

そっと、愛銃を納めた。

バミューダは静かに後ろへと下がってあげた。


「アンタは何でここにいる?」

「俺タチも基地にいることだけがやることではない。たまたま、外への警備中だった。

赤い閃光を見て元を辿ったら、あかねがいた」


「そ、そうだったのか」


レジスタンスの基地で警備ロボットを救ってから、緋音とロボットには不思議な縁があった。


「あの一件以来、大丈夫だったか? 少し心配だったよ」

「あいかわらずお人よしだな。自分の事や仲間を心配しろ。船員達は今のところ、全員生きているゾ」


こんな状況下でも緋音は監視ロボットを気遣っていた。

その優しさに監視ロボットもまんざらでもない。

しれっと、船員達の安否を彼女へ伝えている。


「お前といると、つくづく調子が狂う……。まぁ、これもやるぅ」

「みんな、無事なんだな。あんたとも再会できてよかった。

なんだか、元気が出たよ! ありがとう☆」


緋音は自然とロボットの手を取って、はしゃぎ無邪気に喜んだ。

彼女とロボットの手が触れた際に、緋音の手の中には紙切れが込められていた。


「うん? これは?」

「あの基地の全体図だ。今日のところはコレを持ち帰って、後日やってこい。

早く帰還しろ」


真意は不明だが、監視ロボットは緋音へ『基地』の全体図を託した。

伯爵の基地攻略には欠かすことのない情報。

まさか、このような形で二人は【任務】を達成するとは夢にも思わなかった。


黙りを決め込んでいたバミューダも流石に会話へ混ざった。


「……緋音。これは罠だ。

お前、俺らを騙してレジスタンスを一網打尽にするつもりだな。」


「そこまで深い意味はない。強いて言うなら、俺達は破滅を望んでいる。

レジスタンスどうこうよりも、この子に賭けてみたい気持ちがあル。

それはかつて、俺が人間だった頃、抱いていた気持ちなのかもしれない」


監視ロボットや警備ロボットもかつては人間だった。

いつしか、感情を失い宇宙機械伯爵の人形として、永遠の機械奴隷化していた。


そんな折り、星森緋音と出会ったことによって、魂に命の息吹が吹き込まれた。


例え肉体が滅んでも精神――魂は不滅だった。


この均衡を崩す存在として、監視ロボットは緋音へと肩入れをしてしまっている。

自分自身でも理解できない。


魂が解放されることが彼の真の救済かもしれない。


「お前は相当に変わっているな。俺達の“敵”でありながら手助けする。

まぁ、現状を打開したい思いだけは一致しているな。いいだろう。乗ってやる」

「うん。あたしも自分にできることはわかってきた。バミューダ、ありがとう。

これは貰っていくね☆ それじゃ!」


緋音は別れを惜しみつつ、監視ロボットに手を振りながら颯爽と立ち去った。

バミューダも彼女の後に続いた。


ただ、監視ロボットはどこか落ち着きがなかった。


「ま、待て! 真紅の緋音。その先は宇宙機械三銃士のダダがいる。つくヅク、運が悪い。

三銃士はわざわざ、外へと赴かないが今日は狩りを……。もう聞いていないか……。無事を祈る」


そんな事はいざ知らず、彼らはひた向きに走り抜けた――。


「ハァハァ。普段は比較的、静かな場所だが騒がしい……。

緋音、気を引き締めろよ」

「……わかっているよ、バミューダ。それにしても、あたしの人生は忙しい。

いつも走ってばっかりだよ」


走りつつも二人の思考は回っている。

レジスタンスの仲間達が待つアジトへと着実に向かっていた。


しかし、このまま簡単にアジトへ帰還できるほど、穏やかな道筋ではなかった。


『熱源反応あり。ニンゲンだな。捕獲に向かう』


人目に付かない森林を駆けていたが、監視ロボットに捕捉されてしまった。

すぐさま警報が響き、監視ロボットに囲まれ二人は【選択】を迫られた。


「どうやら、俺達に楽な任務は無いようだな。まぁ、これも俺のせいかな」

「へへ。本当の所、賑やかなのも嫌いじゃない。っても、敵は一、二、三……十体。時には――」


バミューダは自嘲気味に緋音の顔を見て呟いた。

彼女はこの後、彼が打ち出す行動を予想し相槌を打った。


「この場合は逃げるが勝ちだな。緋音、行くぞッ!」

「うん。恥じることはない。

勝利できても、また追手がやって来て敵が合流する恐れがある」


監視ロボットに囲まれても二人は至って冷静だった。

バミューダには上手く逃げ切る“算段”があった。


「意見が一致したな、緋音?」

「あたしはこう見えて、物事は俯瞰で見られる方だ。ここで戦うのは悪手だ」


いつしか二人は背中合わせで会話をしていた。

直で相手の波動エネルギーを感じ取れた。


「流石は宇宙海賊。思いのほか、落ち着いてやがる。そしたら、緋音。

俺が合図したら、両目を瞑り耳も押さえるんだ!」

「そう言うバミューダも呼吸が整っている。何か策があるんだな☆ 了解!」


緋音はバミューダからの警告を耳にし、三銃士ミケルとの戦いを思い出していた。

あの時はミケルからの完全なる不意打ちで閃光弾を直撃した。


一時視力と聴力を失いながらも懸命に緋音は戦った。

そのため彼女は少なからず、閃光弾へトラウマを抱えている。


今の彼女には信頼できる仲間がいる。


「おうおう。随分集まったようだな。そんじゃ、行くぜ! 緋音、今だ!」

「やっぱり、そうだよな! 今回は事前に心の準備ができて大丈夫だ」


ぞくぞくと集結した監視ロボットを前にバミューダは胸元から閃光弾の栓を抜き、

辺り一帯は光に包まれ爆音が轟いた。


『ニンゲン風情が小癪な真似を……』


まさに監視ロボットらの意表を衝いた一撃だった。

あらかじめ、閃光弾に備えていた二人はほぼ無傷でことなく終えていた。

監視ロボットらは識別センサーや機体に不具合が生じショートしていた。


「グぅ。こうなっては我々では対処できない。ダダ様に連絡を……」

「お、お前――! 余計なことをッ!」


バミューダはダダの名を聞いて狼狽えている。

敵とは言え無抵抗な監視ロボットへ対して、彼は銃を構えた。

銃口は頭を指していた。


「……バミューダ。彼らを倒したところで、もう連絡を止めることはできない。

たとえ敵、機械人間であっても無抵抗な者を一方的には倒せない。彼らと同じことをしてしまう。

きっと、レジスンタスの仲間も望まない……」


緋音はバミューダの眼を真っ直ぐ見つめ、慈悲に満ちた措置を提案していた。


「強者が弱者を一方的にいたぶる光景……。

そうだな。ドジャーのおっさん達もこんな一方的な殺戮は望んじゃいない。行こう、緋音!」

「うかうか、しちゃいられない。さぁ、行くぞッ!」


彼らは再び、任務を果たすため、風のように走り出した。

逃走中、幾度も監視ラインを強行突破していた。

森林を抜けた先で二人は、土煙を立て勢いよく急接近してくる物体を感知している。


「この音は馬だな。となると、最悪な追手だ。三銃士のダダが迫っている。

だが、準備はできている。緋音。あの崖を目指すぞ」

「こないだの奴と同じ三銃士か。あの土煙は馬なんだね。数頭いる」


三銃士の一角であるダダは取り巻きと一緒に人間狩りを行っていた。


監視ロボットからの一報を聞きつけて、

配下と共に機械軍馬に跨り緋音とバミューダを追跡している。


「どうやら、ネズミを追い詰めたようだ。レジスタンスは殺しても構わない。

真紅の緋音は生け捕りにしろ。成功した暁には、伯爵様を飛び越えて皇帝陛下へと謁見でき、

永遠の命を授けて貰えるかも知れぬ。ふはは……」


三銃士のダダは表面上、伯爵に仕えているが、あわよくば伯爵を蹴落とし、

その座を密かに狙う野心を抱いていた。


ダダもかつては人間であり、一万二千前にミカギルから機械の体を与えられ、

宇宙機械皇帝へと忠誠を誓った。


今なおも、人間のサガを忘れず出世に貪欲だった。


「肉眼であの嫌味ったらしい服装を確認した。確かに三銃士だね。

しかし、バミューダ。この先は崖で逃げ場がなくなると思うが大丈夫か?」

「大丈夫とは言いがたい。ただ、最悪の事態は想定済みだな。

このまま、三銃士ダダを引き付けるぞ」


緋音の問いかけに対して、自嘲しながら不敵な笑みを浮かべて返答するバミューダだった。

良くも悪くも、冷静な彼のテンションに戻っていた。


「その様子だといらぬ心配のようだね。もうひと頑張りしますか?」

「あぁ、心配するな。それに三銃士の顔はこの眼で拝んでおきたい。

この偵察における俺達の最後の任務ってな」


レジスンタスはこれまでの戦いで幾度か三銃士と戦闘を繰り広げていた。

三銃士の戦闘能力はケタ違いで交戦した部隊は全滅させられていた。


その上で彼らは滅多に戦場へは出てこず、死神のような存在としてレジスンタスでは恐れられていた。そのため、レジスタンス内部では、まともに情報取集ができていなかった。


しかし、緋音がこの星にやってきてからは彼らの行動が活発化した。

中でもダダは極めて目撃情報が少なかった。


分隊長でもあるバミューダは今後を見据えて危険を冒してまで、三銃士の情報を得ようとした。

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