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88-78

作者: 九藤 朋

 終戦記念日の今日、伯父が他界しました。

 脳梗塞で倒れ、意識の戻らないまま逝きました。

 八十八歳。米寿でした。


 母より十一、上で、長男でした。母はよく可愛がってもらったと思います。

 病院から貰った薬をきちんと飲まなかったから、と、母は亡くなった伯父が、まだそこに生きているかのように文句を言っていました。


 夕飯は私が作ろうかと言いましたが、身体を動かしているほうが良いからと、母が作りました。お葬式は金曜日に決まりそうです。


 今年は終戦から七十八年目にあたりますが、伯父は当時、もう十歳。しっかり物心のある年齢です。言い得ぬ苦労は多かったと思います。祖父は母が二十歳の時に亡くなったので、尚更、自分がしっかりしなければという思いはあったでしょう。


 私の記憶の中にある伯父は、陽気でよく笑う人でした。

 ぬいぐるみのお尻の縫い目を示して、丁度良いところに穴がある、などと言っていたものです。


 最後に逢ったのは数年前だったでしょうか。料亭で、親族として美味しいご飯をいただきました。コロナ禍があったので、以来、中々逢えず、今年の秋にでもまた、一緒にご飯を食べようと言う話が出ていましたが、それは叶いませんでした。


 十歳の伯父は、とことこ、お空に昇っていきました。


 私には、その小さな背中が見えた気がしました。


 これは終戦の日の、身内を亡くして、少しセンチメンタルになっている私の絵空事です。




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