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8.デートじゃないです!デートなんですか?

王立図書館へ行く約束の日になった。

約束の時間を考えると、私を案内したらお仕事に戻るのだろうと考えられる。

サンドイッチをお昼に食べてもらえたらと朝から作っている。

決して機嫌が悪かったからって、ご機嫌取りではないですよ。これはお礼です。


パンは日本にいた頃焼いていた。

休みの日は外に行かず、家にいる事が多かったから。

いや、ほとんど家で過ごしていたザ・インドア人間だったから、結構色々な事が出来ちゃうのです。


待ち合わせは王都の入口にしてもらった。

迎えに来てくださると言って、押し問答になったけど、私の「そこまでしていただく理由がない」と言う言葉で引いてもらった。

ブツブツ聞こえたけど、聞き直しもしなかった。


私はサンドイッチと温かいコーヒーを入れたバスケットを持って、王宮への道を歩く。

お天気も良くて、少し早めに出て来たのが正解だ。気持ちいい。鼻歌まで出てくる。


今日の私の服装は、海を思わせる水色のワンピースにした。自分では明るい色は似合わないと思っていた。でもこの世界に来て、冒険するのも良いじゃないかと思う様になった。

違う自分になれた様で楽しくなる。


待ち合わせ場所に着いたら…女性に囲まれているアーノルド様が見えた。

素敵な笑顔で応えている。私に付き合ってもらうなんて、なんだか申し訳ない。


私に気付いたアーノルド様が近付いてくる。

今日は騎士服ではなく、私服だ。私服でもイケメンはイケメン。いつもと違ったキラキラ感がすごい。


後ろから

「アーノルドさま〜、後でお相手してくださいね」

「アーノルドさま〜、ご案内が終わったら戻って来てくださいね」

などと声が聞こえてくる。

これが先日アルが言ってた事か!と思う。

私の事をガツガツしてないと言ってたけれど、この国の女性はアピールがすごいらしい。

私には真似できないアピール力だわ。


なんだか機嫌が悪い?さっきまではご令嬢の前で笑顔だったのに。


「あの…よろしいんですか?」


「何が?」


「案内していただいてもよろしいのでしょうか?

ご令嬢方がお待ちなのでは?」


「いや、案内する約束だから連れて行く」


と言って、私の下げていたバスケットを持って下さる。

スマート過ぎてビックリするわ。


「ありがとうございます」


怖い…機嫌悪いよ〜とビクビクしながら、少し後を歩いて着いて行く。

この道のりもキツかった。色々なご令嬢に声を掛けられた。

ニコニコはしているけれど、特に親しい間柄ではなさそう。イケメンだし、騎士さまだし、人気者なんだろうな!と言う結論に至った所で、アーノルド様の大きな背中にぶつかった。


「いたっ」


「大丈夫か?王立図書館に着いたが」


「あっ、ありがとうございます。ちょっと考え事をしていたので、ちゃんと前を見ていませんでした。

入口は…あそこですね!ここからは行けますので、先程のご令嬢の所へ戻ってくださいませ。」


「なぜ?着いて行く」と言ってスタスタ歩いて行く。


ますます機嫌が悪くなってしまった。

なぜだー!!


図書館の入口に行くと

「アーノルド様!」

「アーノルド次期公爵様」

「騎士団長殿」

とすごい言葉が飛び交う。


アーノルド様は涼しい顔で挨拶をして話している。

私は回れ右をしてこっそりと出口に向かったのだが…もちろんアーノルド様に捕まりました。


「どこへ行く」


「ちょっとここでは…外に出ましょう。」


木陰のある場所まで行って口を開く。


「アーノルド様って、次期公爵様で騎士団長様だったのですか⁇

そう言えば、アーノルド=シュガーと名乗ってらっしゃいました…ごめんなさい。私、全然貴族の方々のお名前をまだちゃんと分からなくて。失礼しました。」


と頭を下げた。


「いや、なんとも思ってないし、気にしないで欲しい。

私の機嫌が悪い事を気にしてるのか?」


そして頭をガシガシかいて一気に


「アリサ、なぜそんな無防備なんだ!!

君の事をどれだけの男が見つめていたと思う!!

そしてなぜ私を他の女の元へ行かそうとする!!

今日はアリサと、その…デートのつもりなのに」


最後は声が小さくなっていた。

えっ⁉︎デートだったの⁇


「今日は、図書館へ案内して下さるだけだと思ってました。お忙しそうだし、案内後にお仕事に戻られるのかと。でも騎士服じゃないし、先程のご令嬢方とデートなのかと…」


「だーかーらー、なぜそうなる⁉︎今日私が約束しているのはアリサだけだ。私は、そんな不誠実な男だと思われていたのか。」


私、ちょっとプチパニックです。


「それに…アリサのワンピースの色が…私の目の色だから…その…期待していたのに」


「あのー、最後の辺りが聞こえなかったので、もう一度良いですか?」


「イヤもういい」


と言って黙り込んでしまう。

さてどうしたものか。私が悪いのだろうか?

よく分からないが、お昼に誘ってみるか。


「アーノルド様、もしお時間がありましたらサンドイッチを作って来たので食べませんか?」


「ああ、もちろんだ!いただこう!」


アーノルド様が連れて来てくれたのは、少し小高い丘の上だった。

丘の上のベンチに腰をかける。

アーノルド様からバスケットを受け取り、サンドイッチを広げる。あとコーヒーも入れて「どうぞ」と差し出した。

サンドイッチを口に運ぶアーノルド様が「うまい!」と言って、ビックリする量を食べた。

コーヒーを飲みながら

「また回復魔法を入れてくれたね」

と言ってくださる。


サンドイッチもメニューに追加しようかな?

とボーッと景色を眺めていると「誤解を解きたいのだが」と話しかけて来た。


「誤解ですか?何か誤解がありましたでしょうか?」


と私の返事を聞いた後から、ポツポツと話し始めた。

騎士団長や公爵家の事は、私が気付いていると思っていたらしい。なんだか怪しいけど、そう言う事にしておく。


なにより時間を掛けて、必死に話していたのはご令嬢の方々の話だった。

正直、私には前半の次期公爵様だった事や、騎士は騎士でも団長様だった方が重要な訳で。

これから言葉遣いとかも気にしなきゃいけないのかしら?

誰に聞けば正確な事が聞けるのだろうと考えていた。

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