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6.イケメンと知り合いになりました

「こんにちは」


アリサはニコニコと声を掛けた。

まさかこんな場所で声をかけられるとは思わなかったのか、驚いた様に顔を上げて


「こんにちは」


と返す男。


いやー、格好いい!なんて言ったら良いのかしら?

ザ・騎士様!騎士の服を着ているし当たり前なんだけど、鍛えているだろうなーって思う感じ⁇

お顔もイケメンなのよー。鋭い目つきなんだけど、優しさがあるって言って伝わるかしら?世の女性、全員が格好いい!素敵!イケメン!って言うわ。

お付き合いしたいかと言うと…釣り合わなさ過ぎて無理だけど。

こんな方とお付き合いするご令嬢なんているのかしら?

羨ましい限りだ。


私にとっては目の保養対象よ!


脳内で1人で悶えていた。

挨拶したまま、ちょっと自分の世界に入っていた私を楽しそうな笑みを浮かべて待ってくれてる。

性格もお優しいらしい。


釣り合わないとか失礼だったわ。

お子様がいらっしゃるのよね。

あの後、あの子は大丈夫だったかな?


「間違いでしたらすみません。

先日、王都へ行った時に膝に怪我をした男の子を手当したんですが、大丈夫でしたか?

手当と言うほどの事はしてないのですが気になってしまって…」


「やはりあなたでしたか。

黒い髪に黒い瞳をした美しい女性だと聞いてましたので、もしかしたらと思っていました。

おかげさまで傷跡も残らずきれいに治ってますよ。」


ん⁇なんか聞こえたような⁇

幻聴が聞こえるのかしら?疲れてるんだわ。

お返事しなければ!


「深い傷でしたのに、傷跡も残らなかったなんて。

本当に良かったです。」


とフワリと笑った。


★★★


アーノルドはここの所、忙しくて休みも取れていなかった。

体力に自信がある騎士団長でも、机に向かって黙々とする書類作業が続くと疲弊してしまう。


「やはり体を動かす方が性に合ってるな。」


少し落ち着いた頃を見計らい休憩にでる。

馬を走らせ、街から出た湖まで行ってみようと思い、ここまで来て、馬を休憩させていた。


アーノルドも座り、深呼吸をする。

机に向かっての仕事を淡々としていたからか、新鮮な空気が体に巡るのが分かるぐらいだ。


「こんにちは」


突然声を掛けられ、驚いて顔を上げたと同時に


「こんにちは」


と返す。

気配に気付かなかった。

鍛錬が必要だな!と思いつつ、前に立つ女性を見つめる。


女性は黒髪に黒い瞳。もしかしてエバンズ殿下を助けてくださった方か?なぜか確信はあった。


今は殿下はどうでも良い。

なによりも自分の感情だ…

「美しい」

アーノルドは戸惑った。

この感情がなんなのか、自分には理解できなかった。

とにかく今は名を知りたい。

「こんにちは」以外の会話をしたい。


邪念を振り払うように、頭を仕事へと切り替える。


殿下の顔を見ても王族だと分からなかったのは何故か?

私の名を名乗ったら、何らかの反応はあるだろう。

シュガー公爵家と言えば、知らぬものがいないのだから。

これもこの女性の素性を知る為に必要な事。

サジェの態度もきになるからな。


そんな事を考えていると女性から話しかけられた。

殿下を心配して下さっていたのか。

最後にフワリと笑った笑顔に、逃してはならない!と心の中で思った。

まだこの感情が何か分からないのに。


★★★


「私は、アーノルド=シュガーと申します。

貴方のお名前をお伺いしてもよろしいですか?」


「失礼しました。

私はアリサと申します。」


そしてニコリと笑みを浮かべた。

この時のアーノルドは、やはりシュガー公爵家を知らないのだなと思っていた。


「アリサとお呼びしてもよろしいですか?

私の事はアーノルドと。」


えっ?呼び捨てなの⁇この国ってこれが普通なのかしら?

こんなイケメンに呼び捨てされるなんて、運を使い果たしたんじゃないかしら、私。

でもお子様がいらっしゃるんだから、ご結婚されてるわよね。


恋愛対象とか、畏れ多くて考えられないし、私には恋愛なんてものに縁はないのだから。

などまた1人、現実世界から逃亡していた。


「アーノルド様?」


この時のアーノルドは浮き足だっていたが、アリサは気付くはずがなかった。


★★★


しばらく湖畔で話していたが、アーノルドの目の下にクマが出来ていることは最初から気付いてはいた。が、話していると疲れが見える。

日本人のサガってやつですね。


「お疲れですか?

なんだかお疲れのような気がしたんですが?」


「分かりますか。

これでも分からないようにしてるつもりなんですがね。貴方にはバレてしまうみたいだ。」


なんて事を言う人だ。

喪女をドキドキさせてどうするつもりだ。


「私、すぐそこでカフェをしているんですが、もしお時間があるようでしたら、少し休んで行かれますか?」


「是非!」


と即答され、お互い笑ってしまう。


カフェへと並んで歩く。

話題は今向かっているカフェの事だ。

もちろん、のんびり・ゆっくり・スローライフ!は強調させて頂いた。


カフェに着き、キョロキョロしていたアーノルドがやっと入ってきて、好みを聞いてみたが、特に好き嫌いはないと答えたので、コーヒーと今朝焼き上げたシフォンケーキを出す。


「このシフォンケーキ、街で買うお菓子よりは甘味が少ないんです。

だからお口に合わなければ残してくださいね。」


と伝えておく。

カフェで出すものには、少しだけ回復魔法を混ぜている。

アーノルドに出したものは、いつもより多めに回復魔法を入れた。かなり疲れているようだったから。


アーノルドは恐る恐るケーキにフォークを入れ、口に運ぶ。


「うまい!

実は甘い物は苦手なんだ。

お菓子やケーキ類は甘過ぎて耐えられない。

しかしこのシフォンケーキと言ったか?これは甘味もすくなく、ふわふわ感がたまらないな。」


「ふふふ、ありがとうございます。

実は私も街でお菓子を買って、甘過ぎて無理だったのです。だからここで出す物には、甘さを控えようと思ってます。

また良かったら来てくださいね。」


「また来ても良いのか?

いや、小さなお店で驚いたし看板もなかったから、決まった客だけの店なのかと…」


「じゃあ、アーノルド様は是非、決まったお客様になってください。スローライフを邪魔しない方は大歓迎です。」


アーノルドが「決まったお客様になってください」と言う言葉に、どれほど脳内で小躍りしてるかなどアリサは知らないのである。


「アリサ、回復魔法を入れたか?」


「分かりますか?余計な事をしてごめんなさい。

あまりにもお疲れの様に見えたので、回復魔法を入れてしまいました。」


「いや、ありがとう。体が楽になってる。

すまないが少し目をつぶらせてもらう。」


回復魔法が使えるのか。

アリサが回復魔法を使える事はしばらく伏せておこうと思いながら、眠りに落ちていった。




アリサはカウターに向かって座り、魔法の本を読んでいる。

穏やかな時間が流れている。

アーノルドが起きたような気配がして振り返った。


「お目覚めですか?

ぐっすり眠っていらっしゃいましたね。」


「ああ、よく眠れた。アリサの回復魔法のおかげだな。」


「ふふふ

それなら良かったです。」


そしてしばらく静かな時間が流れた後、アーノルドがアリサの方へ近付いてきた。


「何を真剣に読んでるのだと思ったら、魔法の本か」


「はい。回復魔法が使えると聞いて、勉強中です。

コーヒーやスイーツに回復魔法を込めると、体力が回復したり、精神が安定すると知って頑張ってみたんです。

そうしたら楽しくなって。他にも色々と出来るようになるのかな?と勉強中です。」


本当に魔法って無限大で楽しい。

私には回復魔法しか使えないみたいだけど、それだけでも楽しい。

怪我や病気も治せるらしいけど、その辺りはまだ試した事がないから分からない。


「アーノルド様は魔法を使えるんですか?」


「私は攻撃魔法の方だ。騎士団では重宝している。」


改めて、戦いにも行く騎士さまなんだと思う。


「それにしてもこんなに体が楽になったのは久しぶりだ。

アリサの回復魔法は高度だな。是非極めて欲しいが…あまり他の人には言わない方が良い。

この国で回復魔法が使える人の数は少ない。

もしアリサが回復魔法を使える事がバレたら、スローライフだったか?できなくなるぞ。」


「えっ!私のゆっくり・のんびり・スローライフ生活が脅かされるなんて!

分かりました。絶対にバレないようにします。」


危ない危ない。

アーノルドが良い人で良かった。


アーノルドは焦ったアリサを見て、「可愛い」と思ったのは秘密にしておく。


「アーノルド様、王都には図書館はありますか?」


「王立図書館があるが、どうした?」


「あるんですか?

本を借りたりできますよね?場所を教えてください!」


「行きたいのか?

私が連れて行って良いだろうか?アリサはまだこの土地に慣れていないようだし、もしすぐでなくて良いなら、次の休みに案内するが?」


「良いのですか?助かります。

是非よろしくお願いします。」


と約束をしてしまった。

お忙しいみたいなのに、ご迷惑じゃなかっただろうか⁇と心配になるアリサに反し、アーノルドは自分の気持ちの正体を見極めようとしていた。


「長居してしまった。仕事がまだ残っているんだ。

ちょっと息抜きをしようとでたら、アリサに出会えて今日はついてた。

では失礼する。」


と言うアーノルドを呼び止める。


「これ、良かったらどうぞ。

先程、アーノルド様に食べていただいたシフォンケーキです。お子様にも食べてもらってください。」


「子供?

私には子供はいないが。」


「えっ⁇」


2人で見つめ合う。

その時、外で馬の鳴く声が聞こえ、我に返るとアーノルドは慌てて出て行ってしまった。


あの金色の子は子供じゃないの?

私の勘違い?

まぁ、アーノルド様の子供でも子供でなくても私には関係のない事だけど。


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