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39.幸せへの道

あの騒動から1年が過ぎた。


国王ご夫妻にエバンズ殿下は元気に生活されている。

あの時、強力な毒を盛られたらしい。

マリーンの魅了の魔法で魅了されていた複数の使用人が操られ、毒を盛ったそうだ。


レナード殿下は留学先のトリニスト王国がこの国を狙っている事を知った。

付いてくると言うマリーンを何かあると思い、警戒しながらも連れ帰った。

トリニスト王国の尻尾を掴もうとしていたと話している。


アーノルドはマリーンに気に入られた。

レナードに頼まれ、渋々、魅了の魔法にかかったフリをしていた。

しかしスイーツ店でアリサを見た時、もう無理だと思ったが、アリサと国を天秤に掛けた時、公爵家の人間である事、騎士団長である事を考えれば、どちらを優先すべきは歴然としていた。

しかしアリサが姿を消した時は、アリサを失った悲しみと任務を遂行する狭間でもう身も心もズタズタだった。

それを見兼ねたレナード殿下が夜会で再会させようと、魔女に招待状を託したそうだ。

それを知ったアーノルドはレナードからと言って渡して欲しいと、兼ねてから準備していた自身の瞳の色のドレスをアリサへ送った。

夜会でそのドレスを纏ったアリサが現れれば、まだ自分に戻ってきてもらえる可能性がある事を願って。


王宮を含む王都は、アリサの原状復帰のおかげで、そんな騒動がなかったかのように元通りになっている。


レナード殿下は、ここまで荒い事をしてくるとは思っていなかったらしい。読みが甘かったとかなり反省している。


マリーンは罪状をトリニスト王国に伝えた上で、処刑された。


アリサの功績に対し、爵位を授けると言われているがアリサ本人の意思を尊重したいと今現在、まだ保留になったままだ。

この国ではアリサは「救世主」と言われている。




「アリサ、行ってくるね。」


アーノルドは声を掛け、眠るアリサに口付けをして騎士団へ向かうのが朝の日課だ。


今、アリサは公爵家で眠り続けている。

あの日、魔力を使い果たし、倒れたアリサを抱きかかえたアーノルドのオニキスが光り輝き、釣られるようにアリサの胸元のアパタイトが光り輝いた。

原状復帰を使ったアリサへ反射的に攻撃される力を、オニキスが「助けて!」と叫び、アーノルドの攻撃魔法で防御すべくアパタイトが反応し、2つの石が光り輝いたのだろうと魔女は話していた。

その後、その光は一対になり、アリサの身体へ消えていき、同時に粉々に砕け散った。


それはアリサの命を繋ぐための光だと、口々に皆が言った。


「アーノルドさま…」


部屋を出ようとしたアーノルドの耳に懐かしい声が届いた。


「アリサ!アリサ!」


駆け寄り抱きしめると


「痛いですよ、アーノルド様。


私、長い長い夢を見ていました。

本当に長い夢…幸せな夢で、もうこのままで良いかなー?って思ってたんです。

なのに外からいろんな方の声が聞こえてくるんです。

「戻ってきて」って。

そして温かい感触が唇に落ちるんです。

この人の心、泣いてるなーって」


ゆっくり、ゆっくり話した。

まだ身体が怠い。

喋るぐらいしかできない。指一本動かせない。


「アリサごめん。心配かけない様に黙っていた事で、またアリサを傷付けた。許してもらえないのは分かっている。しかしアリサと離れられない。

こんな俺で本当にごめん。アリサ…愛してる。」


「アーノルド様、私も疑ってごめんなさい。身を隠してごめんなさい。心配かけてごめんなさい。

私もアーノルド様が大好きです。愛しています。


お仕事に行って来てください。

私、もう少し眠りたい。アーノルド様が帰られたら、元気にお出迎えしたいから。行ってらっしゃい。」


アリサは目を瞑り、また夢の世界に入って行った。

アーノルドは後ろ髪を引かれながら騎士団へ向かい、国王御一家にアリサが目覚めた事を伝えた。




いつもより早く帰宅したアーノルドの膝の上にアリサは座らされている。

眠り続けた事でフラフラして歩けなかった為の処置らしい。


公爵家の皆さんは目覚めた事を喜んでくれた。

そんなみんなの前で、アーノルドがソファに座らせたアリサの前に跪く。


「アリサ!私にとってどれだけ大切な女性か、今回の事で思い知った。

もう金輪際、隠し事はしない。

アリサ、俺と結婚してください。」


「アーノルド様…私、貴方を責めれません。

私も隠し事をしています。ごめんなさい…

わたし…わたし…異世界から来たんです。」


「義姉上、知ってますよ。」


「えっ⁇」


「我が家に魔女殿が訪問されてね、全て聞かされたんだ。魔女殿はこの国を守る為に王宮の奥深くに住われている。

未来を自ら変える事は出来ない。アリサにすまない事をしたと仰っていたよ。」


「公爵様もご存知なんですね。」


「義父と呼んでくれないのかい?」


「えっ!お義父様…」


「アリサ、奥さんになってくれるんだよね?

どんなアリサでも、今、目の前にいるアリサが全てだ。もう失いたくない。」


「アーノルド様…よろしくお願いします」




それから私が眠っている1年間の話を聞いた。


そして、アリサは爵位については断った。

出来る事をしただけで、見返りを求めてした事ではないからと。

ただ一つだけ、アーノルドの妻として、静かに暮らす事だけを望んだ。


シュガー公爵家は、ジフリートが後継を頑なに拒んだ為、アーノルドがいずれ公爵になる。

公爵夫人になる事については「アーノルド様のお側にいる為にお引き受けします」と言った。


私の左の薬指には、アパタイトの指輪がはまっている。

アーノルド様の指にはオニキスが。


「アリサ!俺の愛は重いけど逃げずにそばにいてね。」


「はい。私も負けないぐらい嫉妬深いですよ。」


今日も2人仲良く過ごします。



    完

ここまで読みいただきありがとうございました。

39話で完結となりました。

初めての連載、皆様のブクマや評価に背中を押していただき頑張れました!

本当にありがとうございます。


次の連載も頭にありますので、今、ゆる〜く詰めている状態です。

また始まりましたら、お付き合い頂けると嬉しいです。

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