3.異世界を見てまわります
カフェのカウンターの上には籠バッグが置かれていた。
中を覗くと、鍵とお財布が入っている。
私の頭は、日本人が持っている常識しかない。
この世界で生きていく為には、この世界の常識を知る必要がある。
★★★
カフェの扉から外に出ると、一本道が続いていた。
この道を行けば街に続くよーと言ってくれてる様な気がするのは、私の勘違いだろうか?
直感を頼りに道を歩いていくと街の入り口に辿り着いた。想像していたより大きな街だ。
色とりどりの服装をした老若男女がたくさんいて賑わっている。
目を凝らすと先の方にお城が見える。
この街は王都なのだろうか?
王都でも王都でなくても、私の生活には関係ないし、そのうち分かるだろうと気にもしなかった。
こちらの世界の人は、髪の色も目の色も決まっておらず、さまざま色をしているので余計に明るい雰囲気に見えるのかもしれない。
私の黒い髪も目も目立たないみたいで助かった。
スローライフを目標にしている私は目立ちたくないのだ。ひっそりと過ごしたい。
そう考えると街の中ではなく、少し離れた、程よい場所にカフェを造ってくれた神様に改めて感謝したい。
神様って、落ちこぼれと自ら言っていたけれど、私からしたら素晴らしい神様だと思う。
今では大袈裟ではなく、心強い存在だ。
活気のある街の中を、キョロキョロしながら探索していく。
通りすがりの人が何を話しているのか聞き取れる事にビックリした。
神様ありがとう!!言葉が分かるのね!!
またまた神様に感謝だ。
物珍しさにかなりの時間ウロウロしていた。
道を覚えなきゃいけないし、可能な限りどんなお店があって、どんな物が手に入るのか知っておきたかった。
物価はよく分からない。
こちらの単価が日本のどれぐらいになるのか基準が分からないのだから。1ドル=125円みたいな基準ね。
まぁこれは慣れていくしかない。
異世界1日目にしての情報量としては多い。
なんだか疲れてきし、そろそろ帰ろうかと、歩いていた時に見つけていた食料品のお店まで戻る。
中を覗いてみると色々な物が売っている。
だいたい私がいた日本と同じ様な物が揃っていた。
カフェに出せそうな物の材料はとりあえずこのお店で揃いそうだ。
適当に持てるだけの物を買おうと、店番のおじさんに声を掛ける。
神様以外では初の異世界人との会話だ!
「あのー、すみません…」
「はいはい、決まったかい?
それにしてもお嬢ちゃん、見かけない顔だけど、新しく引っ越してきたのかい?」
街の外れで今後カフェを開くのだと説明した。
そして必要な物を伝えて、お会計を済ませる。
おじさんの名前はアポロと言うらしい。
「あの街外れでカフェをするのかい?
まぁ客入りは見込めないかもしれないが、景色は良いし、生活するには良い場所だ。
この辺りは騒がしくて、年寄りには住みにくいわい。」
と言ってガハハと笑っている。
街外れなら買物も大変だろうと、配達もするから贔屓にしてくれよーっとにこやかに手を振って見送ってくれた。
アポロおじさんのお店を出ると、なんだか騒々しかった。私の後からアポロおじさんも顔を出す。
「何かあったみたいだね。王宮に仕えている騎士団の面々が走り回ってるからね。
どうする?店で落ち着くまで休憩して行くかい?」
「大丈夫です。騎士団の皆様は何かを探してるみたいですし、私は街の外に出ますから。
それに帰ってからする事もありますし。」
と言って、にっこり笑って頭を下げた。
★★★
私は家に向かって歩みを始めた。
私が歩いてる間も騎士さま達をあちらこちらで見かける。
人を探している様だった。騎士さまのお仕事も大変だなぁと思いながら、目で追ってしまう私の目。
決して制服フェチな訳ではない!断じて違うと誓う!
でもカッコいい。
カチッと来た騎士の皆さまの服装。それにみんなイケメン!!
騎士さまの制服を着ればイケメンに見えるのか?イケメンしか騎士になれないのか?
男性に免疫もない、興味もなかった私でも目で追ってしまうキラキラ感。
目の保養が出来たし、帰ってからも頑張りましょう!
と家路を急ぐ。
街を出た辺りで、隠れるように座り込んでいる男の子を見つけてしまった。
世話焼きである日本人の私は放っておく事が出来なかった。