29.二日酔いはキツイ
朝日が眩しい。
体が痛い。
頭が痛い。
胃が痛い。
ゆっくり目を開けると、見覚えのない天井がボンヤリ見える。
ここはどこ?私はだれ?状態。
私はアリサよ!でも頭が痛くて何にも考えられない。
もう一度、目を閉じようとすると抱き起こされた。
背中に腕を回され、優しく起こされて、口の中に何か入れられてから水を飲まされた。
ゴクリ
飲み込んだを確認して、また横にされた。
頭痛〜い。
今飲まされたのは何だろう?誰が飲ませたのだろう?と思い、重たい瞼を開ける。
そこにあったのは、めちゃくちゃ怒ってるアーノルド様の綺麗なお顔だった。怒ってても綺麗って反則よね!と思いながら、また瞼が閉じていく。
ガバッと飛び起きた!!
「イタタタタ…」
勢いよく起きたからか、こめかみを押さえる。
「アーノルド様!何故ここにいるんですか!?」
「アルがいると思ってたのか?」
「そう言う意味じゃなくて、私が何故アーノルド様といるのかと…」
余計に機嫌が悪くなるアーノルド様。
「私がいたらおかしいか?アルがいる方が良かったのか?
アリサ、君の恋人は誰だ⁇クリスマスを一緒に回れなかったのは悪いと思っている。だからと言って、他の男と楽しそうに回るのは良いのか?
その話を他の奴から聞き、慌てて迎えに行けば無防備に酔っ払い、沢山の男たちの欲を一心に集めて。
アリサ!!俺は…怒り狂っている。閉じ込めて、金輪際外へ出したくないぐらいにだ!!」
ごめんなさい。でも頭が痛いんです。
「アル…ですか?どうしてアル⁇
あっ!アルとクリスマス回ってたんだった。アルは大丈夫でしょうか?たくさんグリューワイン飲ませてしまったかも。」
痛い頭で記憶を辿っている間、どんどんアーノルド様の機嫌が悪くなっていっている事にすら気付かなかった。
ガタン
と言う音に顔を上げると、ギュッと抱きしめられた。
「アリサ、アルの方が良いのか。だが離してやれない程に溺れているんだ。頼む、俺を見てくれ!!」
「アーノルド様、何を仰っているのです?
私がす、す、好きなのはアーノルド様だけですー。
ごめんなさい。頭痛いから寝ます!」
シーツを被りベッドに潜り込む。
恥ずかしい…
どれぐらい眠ったのかは分からない。
頭の痛みも取れていた。
ベッドの上に起き上がり、改めて周りを見ると騎士団の詰所である事がなんとなく分かった。
「また迷惑掛けちゃったな…」
「本当にな!」
「アーノルド様!」
相変わらず不機嫌全開の顔をして、扉から入ってきた。
「薬を無理矢理飲ませてしまって申し訳ない。
気分は良くなったか?
さて昨日、何があったか全て話してもらおうか」
「お薬だったんですね。何から何までありがとうござしました。
頭が痛いのも治りましたし、大丈夫です。
昨日の事ですよね…」
私はポツポツ話し始めた。
1人でクリスマスを見て回ろうと思った事、アルに会って案内してもらった事、アーノルド様の姿を広場で見かけた所で言葉が詰まった。
「あの、それで…広場で見掛けたアーノルド様の周りに綺麗なご令嬢がたくさんいて、アーノルド様にベタベタしていて、アーノルド様もニコニコしてるし、お似合いだなぁと思ったら、自分の存在に自信がなくなるし、こんな私が嫉妬するなんて思い上がってるとか…
いろんな感情が出てきて、訳が分からなくなってしまったんです。
それでアルに付き合ってもらって、グリューワインをたくさん飲んで。もう何もかもどうでも良くなって。
アーノルド様はお仕事って言ってたけど、本当はお仕事が終わったらご令嬢方と約束してたのかな?とか、悪い方へ悪い方へ考えてしまうし…」
「で、あんなに色っぽくなるまで飲んでいたと?」
色っぽい?誰が?意味わからないけど
「ごめんなさい」
と謝った。
アーノルド様は頭を抱えている。
「アリサ、俺がどれだけアリサを愛してるのか、まだ分かっていないようだな。
昨日もアリサがアルとクリスマスを楽しんでいる様子を耳にして、気が狂いそうだった。
この先、騎士団長と言う立場でいる以上、イベントなどには警備に駆り出される。遠征に行けば王都をあける。
その度にこんな思いになるなら、いっそ騎士団を辞めてアリサの側にいるのも良いかもしれないな。」
「ダメーーー!!
私の為に騎士団を辞めるとか、絶対にダメです!
それに騎士様の制服も素敵だし…」
最後は声が小さくなったのは許して欲しい。
制服フェチではないんだけど、アーノルド様の制服姿は素敵すぎて、悶絶しそうなんです。
「アリサはこの制服が好きなのか!
でも俺は昨日の事は許せない!それに他の女と約束してたとか誤解までされて、余計に腹が立ってるんだ。」
「本当にごめんなさい」
「悪いと思ってるなら、次の俺の休みの日はデートしよう。一日中一緒にいよう。」
「はい。よろしくお願いします。」
許してもらえるのかな?
アーノルド様から頂いてる好意を信じきれてなかった自分が恥ずかしいです。




