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14.魔力の不思議

私は執事さんに、神様と一緒に1つの部屋の前に案内された。


「こちらでございます」


ガチャリと扉を開いてもらい、中へ足を入れてみる。

大きなベッドに寝かされたアーノルド様の姿が目に入る。

思わず走り寄った私に、アーノルド様に付いていた侍女らしき人がギョッと顔を上げる。


「こちらの方がアーノルド様に付いてくださるから下がりなさい」


執事さんは静かに侍女に語りかけ、私たちに向かって


「よろしくお願いします」


と頭を下げると部屋を後にした。

ベッドに横たわっているアーノルド様は息をしていない様に見えた。


「私は何をすれば良いのかしら?」


「アリサはアーノルドを助けたいんだよね?

アリサの気持ちのままにしてごらん。きっと良い方向に向かうよ。

僕がここにいても出来る事はない。

アリサ、1人で大丈夫だね?」


「はい。

大丈夫かどうかは分かりませんが、アーノルド様に目を開けてもらいたいです。


神様、1つお願いしたいのですが。

しばらくお菓子は作れないと、アポロおじさんに伝えてもらえませんか?」


「はいはい、なんとかするよ。気遣いの元日本人だね」


と笑いながら消えてしまった。


私はアーノルド様に近付く。

息はしているの?顔も真っ青だ。

口元に掌を持って行っても、息をしているか分からない。失礼かと思ったけれど、布団をめくり心臓の辺りを触ってみる。ドクドクと音がして安心した時、手が急に温かくなり、ペンダントが光っているのが服越しに分かる。

慌ててペンダントを取り出すと、ブルーの優しい光に包まれていた。

これは悪い事ではないのだと勘で分かった。

布団をアーノルド様にかけ直し、私はアーノルド様の片手を両手で包み込む「目を開けて!」と願いながら。


どれぐらいそうしていただろう、ノックと共に3人の人物が部屋へ入ってきた。

先程の部屋にいた方々だと思い、立ち上がろうとすると「そのままで」と言われた。


私はアーノルド様の手を握り直すとまたペンダントが淡く光る。

「まぁ」と女性が発し、「そんな事があるのか」と男性が発する。

男の子はニコニコしている。


3人が自己紹介をしてくれた。

ウィルソン公爵様に奥方様のカーラ様、そしてアーノルド様の弟君のジフリート様。

私も失礼を承知で、アーノルド様の手を握ったまま自己紹介をする。


「あなた!アーノルドの顔色が少しよくなったようですわ。ああ…アリサさんのおかげだわ。あなたがこの子に魔力を送って治してくださっているのだわ」


と涙を流す。

魔力を送るとか、私には正直分からない。なんせ素人だから。でも私が手を握る事でアーノルド様が元気になって下さるなら、私は手を握り続けようと思う。


公爵様が私に尋ねた。


「アリサ殿、お家の方は大丈夫なのだろうか?

貴方さえ良ければ、息子の側にいて欲しいのだが。」


「はい、私もそのつもりで来ました。

アーノルド様にはお世話になりましたし、ご迷惑でなければアーノルド様が回復するまで側に仕えさせて下さい。もちろんお元気になられましたら、失礼いたしますので」


とニコリと答えた。

部屋を後にした公爵夫妻は、「あんなに慎ましいご令嬢がいるのか」とお互い話していた。


★★★


アーノルド様が目を覚ます事はなく、数日経った。

分かった事は、私が湯浴みなどで長時間アーノルド様に触れる事をやめていると、血の気が引いたようになる事だ。

私も出来る事ならずっと手を握っていたい。

でも生理的に無理な時もある。

「ペンダント!」と思い付き、私が離れる時はペンダントをアーノルドさまの手に巻き付け、掌に握らせてみた。効果があったようなので、私が側にいる時は私の首元に、離れる時はアーノルド様の側にペンダントはあるようになった。


どれぐらい経っただろうか?

アーノルド様の瞼がピクピクと動いた。

慌てて控えている侍女に声を掛け、人を呼んでもらう。

公爵と奥方様、ジフリート様が慌てて部屋へ駆け込んできたと同時に、アーノルド様の目が開き、綺麗な空色の瞳が現れた。

「良かった。もう大丈夫だ」と私はそっと側を離れた。


「アーノルド、分かるか?」

「アーノルド、気分はどう?」

「お兄様!」

口々に声を発する姿を私は眺めていた。

まだアーノルド様が口を開いてはいないけれど、瞳はしっかり3人をとらえていた。


さて、私の出来る事はここまでだし、そろそろカフェに戻ろう!その前にアポロおじさんに挨拶をしなきゃいけないなと思いを馳せる。

アーノルド様を囲んで家族で喜びあっている。もう大丈夫だ!

私はお邪魔になるし、気になる事もあるし、扉付近に立っている、すでに気心のしれた執事さんへ向かって歩いて行った。


「大変失礼だと思うのですが、アーノルド様も目を開けられましたし、私はこれにてこの場を辞させて頂きます。こちらで色々とお世話になった事など、日を改めましてお礼に伺いますので、公爵様にはその様にお伝え願えますでしょうか?」


「かしこまりました。本当に本当にアリサ様…ありがとうございました。」


と涙を流して手を握ってくれた。

あっ!と思い、執事さんにペンダントを託す。


「仕組みはよく分からないのですが、私の魔力がこのペンダントには入っているみたいです。今まで私が身に付けておりましたので、アーノルド様に触れる場所にこれを置いていただければ、病状が悪化する事はないかと思います。」

と言っておいた。


公爵家を後にしようとすると、仲良くなった侍女の方々が口々にお別れやら、引き留めやらの声を掛けてくれた。


素敵な人ばっかりだった公爵家。

名残惜しいけれど、もう皆さんに会う事はないわね!としんみりしていたのだ。この時は…

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