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10.なぜ伝わらない!(アーノルド)

なぜだ!なぜ伝わないのだ!


アリサと初めて会った日、美しいと思った。

その感情がなんなのかわからないまま、それを探りたい気持ちもあって、誘われるままカフェへ着いて行った。


小さな落ち着いたカフェだった。

何より回復魔法をかけたコーヒーとシフォンケーキは絶品だった。

不覚にも、座り心地の良い椅子に座り、美味しいもので身も心も癒され、眠りについてしまった。

そんなに長い時間眠ったわけではないのに、目覚めは良かった。なによりあんなにぐっすりと眠りに落ちたのは久しぶりだった。

気が抜けたのだろうか⁇


帰りにはシフォンケーキをお土産だと渡してくれる心遣いにまた胸を掴まれた。


アリサと別れ、馬で王城へ向かう間も頭の中にはアリサの事しかなかった。


その日はエバンズ殿下にお会いすることもできず、アリサからのシフォンケーキを公爵家へ持ち帰り、家族に食してもらった。

「そう言えば子供がどうとか言ってたな」と思い出したものの、そのまま忘れていた。


シフォンケーキは家族に大好評だった。

特に義母のカーラは

「これは今、街で有名なクッキーを作る方と同じ方が作ったものよ!!

知り合いなの⁇」

と大興奮だった。

今度、機会があればアリサに確認してみるか。


それからは政務に追われてカフェへ行く時間もなかった。

しかし少しでも時間があればアリサの事を考えている自分がいる。

早くアリサを王立図書館へ案内したい気持ちだけで、必死で仕事を片付けていった。


やっと時間を見つけ、休みをもぎ取り、カフェへ向かう。


扉を開けると、アリサが男と仲良さ気に話している。

「アリサは俺のものだ!」

嫉妬心が沸き起こった事に驚いた。

この醜い嫉妬心を隠す為に用件だけ伝えた。

迎えにくると言う私に向かって、アリサが「そこまでしていただく理由がない」と言い放った時は心底悲しかった。

アリサが誰かのものになる前に、自分のものにしなければ!


デートの日は朝からソワソワしていた。

待ち合わせ場所にも早く着いた。

しかし女が寄ってくる。私にはアリサしか必要ないのだ!!

私の瞳の色のワンピースを纏ったアリサが現れた時は、天にも昇る気持ちだったのに、自分ではなく、他の女とデートをしろと言う。


不機嫌になったのは許して欲しい。


しかし私の為にサンドイッチを作って来てくれた時は、また天にも昇る気持ちだった。


アリサの一挙手一投足でこんなにも気持ちがかき回されるものなのか!


アリサが図書館にいる間、私は宝石店に寄っていた。

私の瞳の色を纏ったアリサにドキドキさせられる反面、独占欲、支配欲にも似た感情が湧き出た事も確かだ。

私の色を肌身離さず身につけて欲しい。

本当なら指輪を送って逃げられないようにしたいが、今はまだダメだ!と自制しながら、私の瞳と同じ色の宝石のペンダントを購入した。


図書館へ迎えに行き、ペンダントを渡すシチュエーションを考えている間にまた女たちに囲まれた。鬱陶しい。

アリサを探すと目が合い、その後、アルの親父の店に入って行った。

本は私の手元にある。アリサは本を置いて帰らないだろうと思っていたのに、なぜアルが本を奪いにくるんだ!


居てもたってもいられず、取り巻きの女に対しての態度を変える。どう思われても構わない。とにかくアリサを手に入れるのが先決だ。


私の「悪いが用がある!」と言う、冷たい一言に「そうでしたの。失礼しました」と潮が引く様に去っていく。

道が開き、ズカズカとアルの店に入ると楽しそうにしているアルとアリサが目に入る。


「アリサちゃんは俺のね!」

何を言ってるんだ!アリサは誰にも渡さない。


アルとは同じ歳で、騎士団にも所属し、一緒に訓練をしていた事もあり知った仲だ。明るく気の良い奴で、誰からも好かれていた。

家の商売が繁盛し始め、本格的に後継の勉強をする事にしたと訓練所にはあまりこなくなった。

だから焦りがある。アルに惹かれてしまうのではないかと。


もう自制が効かなかった。

本を取り上げ歩き出す。こうすればアリサがついて来ることは分かっていたから。


王都を出た所で気持ちが昂ってしまった。

アリサにはやはりハッキリと気持ちを伝えられずにいると、思った通り伝わらなかった。


「愛していると言えば良いのか?」


しかし今、それを言ってしまえばどこかへ逃げてしまう気がする。

それは1人で消えるのか、先日カフェで会った男とか?それともアルか?

どれも許せない。


私は今までこんな気持ちを人に持った事がなかった。

全てを投げ出しても手に入れたいと思った事はない。

これから先ももうこんな感情を持てる女性は現れないだろう。


なんとかペンダントを渡し帰路を歩く。


アリサ…アリサ…アリサ…

絶対におとす。


私の頭を整理させる為、アーノルド側の話を挟みました。

かなり拗れたアーノルドになってしまいましたが、初めて恋を知った男性だと思って、ゆる〜く読んで下さい。

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