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1.異世界転移と言われても困ります

「お断りします!!」


「どうしてかなぁ⁇他の世界で、新しい自分になれるんだよ。もう一度、今の記憶を持って、新しい人生を送るとか夢じゃない?」


「いえいえ、ご親切にありがとうございます。

でも他の世界に飛ばされた所で、その世界で生活できるとは限りませんし、ハッキリ、キッパリお断りします!」


目の前にいる線の細い男性は座り込んでしまった。

「僕なんて…僕なんて…」

とブツブツ呟いている。


どうしてこうなったんだっけ⁇記憶を整理してみよう。


仕事帰り、疲れ切った体を引きずるように帰宅していた時に倒れたんだ!そう倒れたのよ。

スーッと意識が遠のいて、ガツンとした衝撃が頭にきて、うっすら目を開けたら、空には星がたくさん輝いていて、綺麗だなぁと思って、それからそれから、「生まれ変わったら幸せになりたいなぁ」と星に向かってボンヤリ呟いたんだわ。


「思い出してきた?そうだよ!だから僕が来てあげたのに」

と、目の前で座り込んでいる人が言う。


「僕はね、後悔したまま人生を終えようとしてる人を別の世界に飛ばして、もう一度人生を送ってもらう為にいる神様なの」


この人は神様だったのね。でも例え神様だったとしても、今言われてる事は困るんだよなー。

どうせならパッと天国に行かせてくれたら良かったのに。神様ならできるでしょ!


たしかに神様の言う通り、私の人生は幸せとは言えなかった。


両親は友人の連帯保証人になり、借金を背負って生活している。だから私は早い段階で家を出ることを選んだ。


それからは私1人で生きていかなければならないと必死で頑張った。少しでも両親が楽になればと、薄給の中から仕送りもしていた。


男の人と付き合ったこともないし、付き合いたいと思った事もない。必死に生きてきたから。生きる事に精一杯だったから。

両親の事もあったし、ブラック企業と分かる会社で働く事も我慢できた。不満がなかったと言えば嘘になるけれど。


そうあの倒れた日も終電ギリギリまで働いていた。

3日連続の終電帰りになった日だった。終電を逃したらタクシーに乗っても、ホテルに泊まっても痛い出費になる。だから駅まで走った。走っている途中で急にめまいがして、足がもつれてしまい倒れたのだ。

そのまま倒れて…頭を打った衝撃に「痛いっ」て思ったような記憶は確かにある。


「疲れたなぁ」と最近思うようになってた。ずーっとこんな生活が続くのかなーとも。

だから頭を打って空の星を見た時、もうここで人生が終わるのもありかなと受け入れようとしてるのに!なんなのこの展開。


「だからさー、もう一回聞くけど転移しない?」


「しません!」


「ふーん、そっかー。転移しないならさ、しばらくは寝たきりで入院になっちゃうけど良い?すぐに天国へ送ってあげられないんだよね。僕も忙しくてさ」


えっ?何を言っているのだ?それは困る!と思い口を開く。

「それってどれぐらいの期間になります?」


「そうだねー、人間の時間だと3年ぐらい?いやー、5年になるかな?5年以内にはなんとかするよ!」


うんうん、とまだ座り込んだまま1人で納得しつつ、すがるような目線で私を見上げてくる。


なんだか脅されてるような気がしないでもないが、5年もの間、私は寝たきりの入院生活で、その間は両親に迷惑を掛ける事になる可能性があるのか。

それなら私のわずかばかりの貯金とわずかばかりの保険金で、足しになるかは分からないけど、少しでも両親が楽になった方が良い気がする。


本当に私の人生ってなんだったのかなー?


「あのー、次の転移先では幸せになれるんですかね?

いえいえ、別にお姫様になりたいとか、お金持ちになりたいとか、そんな幸せはいらないんです。

ただ借金もなくて、ごくごく一般的な生活をしたいなーとか思いまして…」


神様はガバッと顔を上げて立ち上がる。


「あっちの世界に行ってくれるの?本当に?

僕さ、神様の落ちこぼれって言われるんだよね。

君みたいに転移させようと思った子がワガママでさー。言われるがまま転移させるから使い物にならないんだって。

魔力がない子を送るな!って。

僕の見る目がないって散々言われ続けててさ。

今回は断られるのかーって落ち込んだよ」


と話してくる。

神様も苦労してるんだね。と同情はするけど、私には関係ないことだ。


いやいやこの人が神様なら、神様に対して「落ちこぼれ」って言う人なんているの?と疑問に思ってしまう。

つい関係ないのに聞いてしまうと


「神の世界にも上下関係があるんだよね〜。

なかなかブラックな世界だよ」


なんてヘラヘラ笑って教えてくれる。

同じブラック企業、神様は会社勤めじゃないけど、同じように苦労して働いてる者同士だし、協力しても良いかな?なんて優しさが出てきている。なんか違う気がするけど…まぁいいか。

一旦は終わった人生だ!深く考えるのはやめて、成り行きに任せるのもありだよね。


納得した私に対して神様が言った。

「じゃあちょっと説明するね」

転移についての説明を受ける。


私は異世界転移する。

今のままの名前、年齢での転移。

その世界での生活基盤は、私が思い描くものにしてくれるうえに、最低限の準備は神様がしてくれるとの事。

そして私が転移する世界は、魔法が使える世界なんだとか。魔力はその人によって変わるから、今の時点でどれぐらいの魔力があって、どれぐらいの魔法が使えるのかは分からないとの事だ。


そして神様が私に希望を聞いてくれた。


「急に言われても困るんですが、生活しなきゃいけないし…お店をしたいかな?

小さいお店で良いんです。落ち着いた、こじんまりしたカフェをしてみたいです」


自分で言って良い考えだと思う。

サンドイッチみたいな軽食と飲み物を出すカフェ、スイーツを提供するのも良いかもしれない。

のんびりしたい。今まではお金の事ばかり考えていたから、これからはゆっくり過ごしたい。

なんだか楽しくなってきた。ワクワクしている自分がいる。


「りょーかい。君の願いは叶えるね。

お金の心配はしなくてよいよ。毎月、最低限の生活は保証されるから。

それに君の魔法がどれぐらいのものか分からないけど、内装とかは魔法で何とかなると思うよ。

あとあった方が良いだろうと思う物はこちらで準備するけど良いかな?」


と説明をしてくれる。

でも神様が「あっ!これを言っておかないとね」

と最後に言った言葉が気になる…


「えっ?それってどう言う事ですか?」


「だからね、その世界から是非、条件に合う女性を転移させて欲しいって依頼がきたの。

選ばれたのが君。君が生まれ変わったら…って望んだ事も選ばれた理由の1つだったと思うよ。多分ね。

それでね、僕たちにも何が起こるか分からないけど、向こうの世界が危なくなった時は助けて欲しいんだ。そんな事が起こるかも分からないし、起こったとしてもどんな事か分からない。なーんにも分からないんだ。

起こらなければラッキーって事で」


「いやいやいやいや…それって最初に言うべき事じゃないですか?

すごく騙された気がするんですけど」


脅しが若干入ってたといえども、了承してしまった自分に後悔している。

ウキウキしていた自分を呪っている。

後悔してももう遅いと思った時には、

今までで1番の笑顔を見せた神様が

「じゃあ行ってらっしゃーい。僕も一緒に着いて行くからー」

と言って、パチンと指を鳴らすと見えている世界が真っ白になった。


読んでいただきありがとうございました。

異世界転移物を書いてみたくて書き始めました。

今後もお付き合いいただけると嬉しいです。

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