亜人は進化する!
担当:書込監視保安委員長
「回復に力を使っているときは、時を止めれるんですね。」
そうイアクロは言った。ただ、イアクロは下位の亜人である。
吸血鬼が太陽だとすると、メドゥーサはせいぜい地球の大きさといった程度であろう。
ましてや、祖母がメドゥーサで、他は混血の亜人など月のような大きさと言ってもいい。近づくだけで飲み込まれてしまうのを、ただ見ているだけの存在。そういう立ち位置がごくごく自然である。
では、なぜ時の止まった世界で動けるのか。
答えは、ノインが加減したからである。
否、力を使えなかったからである。
亜人には、吸血鬼のように上位で強い亜人から、メドゥーサのように、弱い亜人までいるが、「人間」ではないという部分は共通する。
そして、亜人は人間に長い間虐げられ、奴隷のように扱われてきた。
その結果、亜人は人間を殺すために進化した。
親の代ではなすすべなく殺された。
子の代では傷をつけたが殺された。
孫の代では腕を失わせたが殺された。
ひ孫の代では、瀕死まで追い詰めたが、殺された。
そして、ついに1対1では殺されなくなった。
だが、人間は数が多い。だから、物量で殺される。
また、人間は知恵をつけた。先の男のように。亜人をだまし、殺したり、奴隷にしたりしてきた。
さらに負けないように、亜人は対人間の力をつけた。
その結果、亜人は人間に効果的な魔法を生み出し、人間は亜人に対抗する手段を生み出した。
だから、亜人同士での魔法はあまり効果がない。ノインが時を止めても、一介のクオーターであるイアクロが動けるくらいに。
傷があったというのも関係があるが、これぐらいなら治るらしい。さすが吸血鬼だ。
数分もしたら、ノインの傷が癒えた。
そこで、ノインが言う。
「ここを離れましょう。どこか、安全なところへ。」