吸血鬼の簡単な殺し方
担当:寝蛇
フェルが大人しく、よくわからない男二人についていって30分くらい経った時だった。
後ろに付いてきていた一人の男が、急に肉片に変化したのだった。その男が気づくよりも速く.....
「はぁ!?なんだよ.....」
思わず、そんなことを言ってしまう。この任務に就くときに、覚悟を決めていたはずなのに.....そして、もう死ぬのかと思っていたその男だったのだが、どういうわけか2度目の攻撃はなかった。
「本当っ、なんだなんっだよ.....」
そして、連れてきたフェルは、どういう神経をしているのかは分からないがスヤスヤと眠っていた。
それから、数十分が過ぎたころだった。
突然世界が赤く光った、ように感じた。その光が自分の真後ろだとしてもそう認識できるくらいに。
そして、その刹那。突然目の前に、淡い光を纏った“何か”が現れた。
「フェルを返して」
たったそれだけの言葉だった。それなのにどうしてか男は、震えが止まらなかった。
「あっ、お母さん」
そして、男はその言葉を聞いてこの“何か”が何者なのかを確信した。到底敵うはずのない、文字通り力に天と地の差がある吸血鬼だと。
だが、待てと。もちろん何の対策もなしにこんなところに来ているわけではない。そんなにバカではないと。
「それ以上動くな。それ以上動いたらこいつの首を斬る」
そう言いながら男は、フェルの首に特別な刃物を近づける。
すると、もちろん吸血鬼、ノインは、止まるしかない。まあ、相手に気づかれるよりも速く、今なら殺せるとは思うのだが、万が一があっては耐えられないためしょうがなかった。
「どうすればいい?」
ノインは、心を落ち着かせ、いつもの姿に戻りつつそう問う。
「死ね」
「.....なるほど」
それは、簡単な事だった。そして、この方法は多くの吸血鬼を殺してきた伝統的な方法だった。しかし、この方法を吸血鬼のほとんどは知らない。なぜなら、殺されるから。親が自分で死んだ後に、大勢の殺傷魔法で子は殺される。
今は亡きノインの母も同じように殺された。そして、殺されそうになっているところを、今は亡き夫が助け、共に逃げてきた。故に知っていると。自分が死んでも助からないことを.....
だから、知恵を絞る。絞って限界まで考える。そして、ノインが出した答えは.....
「お..母さん?」
と、自分の心臓を刺したノインを見て絶句するフェル。そして、その行動を見て、思わず刃物を降ろしていまう。すると、ノインは刃物を降ろしたのを確認して、その男を跡形もなく吹き飛ばした。
「フェル、良かった」
「お母さん」
泣きじゃくるフェルの頭をなでながら、自分の傷の深さを見て、十分に回復できることを確認する。時間にしては、数分で。
そう安心したとき、時が止まった。フェルと、イアクロ以外の.....
「へえ~、回復に力を使っているときは時を止めれるんですね」