メドゥーサ
担当:書込監視保安委員長
だがその刃は、届かなかった。向けられた刃を、視線を、呼吸さえも、すべてを、一人の男はとめた。
すべての物が、者たちが凍り付いたように動かない。ただ静寂な世界で動けるのは、彼と、吸血鬼二人だけだった。
だが、二人は動けない。体は動くが動けないのだ。
彼は何をしたのか。味方なのか。敵なのか。そもそもだれなのか。そんな疑問は次々とうかんでくる。だが、声には出せない。
どうなってしまうのかわからないから。
あまりの恐怖に声を出せなくなってしまった。
あたりには沈黙が続く。十数分にも思える一瞬が過ぎていく。
その世界で、まず口を開いたのは周りの世界をとめた彼だった。
「はじめまして。吸血鬼の姫君とその母君、かな。」
彼の声は、凍り付いた空気を少しだけあたたかくした。
そして、母親は答える。
「ええ、私たちは吸血鬼ですが。あなたはいったい?」
「おっと自己紹介がまだでしたね。私は、メドゥーサの子供です。蛇を体に司る、亜人といえばわかるでしょうか?。」
さらに彼は語る。
「名前は、忘れました。ずっと牢獄に捕らえられていたもので。
でも、1096番とか呼ばれていましたね。通し番号のようなものですが。」
「私のことは、どうとでもお呼びください。もう会うこともないでしょうから。」
そういって去ろうとする。だが、
「イアクロ。それがあなたの名前。数字から考えたのだけど、どうかな。」
と娘が呟いた。 1がイ、9がク、6がロで、0は思いつかなかったのだろうか。 これまでしゃべっていなかったが、やっと緊張がとけたらしい。去ろうとする彼の背中に、話しかける。
ただ、彼に名前を与えた娘は、まだこれでおわらないらしい。
「一緒に、いよう。三人で。」
子供の口調じゃ無いってw