二章 転生したのはいいけど服は?
前回のあらすじ
魔王にまつわる話。
あれ?何でだろう。身体が軽い。こっちの世界に来てから、ずっと重かったはずの身体が軽い。·····何でだ?
ああ、そっか·····。俺、確か殺されたんだっけ·····。だから、身体が軽いのか?
嫌、違うな。体も動くし、目も開けれそうだ。けど、それなら俺もしかして死んでないの?
少しパニックになるがすぐに落ち着きを取り戻す。取り敢えず状況確認のため目を開ける。どうか、魔王城の牢屋とかに閉じ込められていませんように·····。
意を決して目を開ける。瞬間、
「ギャオオオオ!!!」
「うぉぉぉぉぉ!!!」
何か俺から距離二百メートル位の所で白虎らしき生物が人と戦っている。
まあ、それは見なかったことにして、自分の体を見る。そして、硬直した。
「·····何で俺真っ裸なの?」
そこには、立派な俺の息子と、前と変わらない俺の手足があった。うん、普通に手足は動く。俺は手をワキワキさせて確認をする。
「まず、俺なんでまだ生きてるんだ?」
完璧に頭を潰されたはずだ。俺は自分の頭をさする。そこには、本来無いはずの物があった。何と俺の頭にあったのは·····角でした。何か魔王についてそうな角?みたいな感じのヤツが付いてました。
なんだこれ!?
「落ち着け!俺は常にクールな男だ。」
俺は、深呼吸をして、自分の異世界で得た知識と現代のオタク知識をフル活用する。·····取り敢えずステータスを見てみるか。
俺は、自分が唯一使えたスキル鑑定を使うことにした。このスキルはものの価値だけではなく、自分より弱い人のスキルが見れたり、自分のステータスが見れたりする。
因みに、俺は自分のステータス以外見えなかった。ステータスが見えない俺は、ステータス的には赤子より弱いらしい。
まあ、何はともあれ鑑定だ!
九重 零
年齢 零歳
種族 魔族(魔王種)
性別 男
体力 SS
魔力 SSS
力 SSS
敏捷 SSS+
物理防御 AAA+
魔法防御 AAA
幸運 A-
称号 異世界の勇者 闇と幻影の元勇者 転生者
人間の魔王
スキル 鑑定 蘇生 強奪者 万能者
魔法 幻影魔法 闇魔法 時空魔法
俺はステータスウィンドウ?を見て思った。·····なんだこれ?まず、魔王って何だよ!勇者が魔王になってもいいのか!?しかも、ステータスめちゃくちゃ強いし!
多分俺がこんな状態になっているのは、称号にある転生者って奴のお陰で大体の予想はつく。
「やっぱり、俺死んだのか·····」
復活したのは、この蘇生って奴のおかげかな?しかし、それなら何で『転生者』って付くんだ?普通なら『蘇生者』的な奴が付くんじゃないか?
そこで、ふと俺は気づいた。
「あれ?スキル欄にあった、何かやたらと長いスキルが無くないか?」
五文字のスキルが無くなっているのだ。何でだ?
探して見るも無い。そのスキルは何処に行ったんだ?効果はなんなんだ?そこで俺は、前まで無かった項目が増えているのがわかった。
『再使用不可スキル』
何だ?俺は取り敢えずポチッてみた。ステータスウィンドウの表示が変わる。ステータスウィンドウって触れんの!?
再使用不可スキル
【願望成就三】
何だこれ?更にポチる。
【願望成就三】
使用者の死亡時に効果が発動する。死亡時に使用者の最も強いの願いを叶える。これを持った使用者のスキルは、このスキルが再使用不可になるまでの間、一部のステータスの能力は封印される。このスキルの使用可能回数は三回。
なるほど。俺の生きたいという願いを転生することによって叶えたと。あれ?蘇生で行けるんじゃね?
俺は【蘇生】の部分をポチッてみる。
【蘇生】
自分以外の人が死亡時に、五分以内であれば、死亡した人に触れた状態でこのスキルを使用すれば。対象者が復活する。
なるほど。つまり、俺は【蘇生】では復活出来ないということか。じゃあ、俺は転生時に偶然、魔王になっちゃったのか?
増えてるスキルと魔法はそれぞれ後ろについている二つだろう。
【万能者】と【時空魔法】が俺が願ったことによって得たスキルなのだろう。それぞれの能力がこちら!
【万能者】
手に入れたスキルを最初から自由自在に操れたり、他人に付与したり出来る。他には生産職の『職業』を得ることによってしか手に入れる事が出来ないスキルを生産職の『職業』を得なくても使用できるようになる。
【時空魔法】
自分の指定した空間の重力を操ったり、時間を短時間操れる。自分の指定した物の時間を操れる。
強くね?因みに他の魔法やスキルを要約するとこうだ!
【強奪者】
死んだ生物からスキルを奪ったり出来る。他には生物の持ち物を奪ったりも出来る。
【幻影魔法】
幻影を自由自在に作れる。幻影魔法を使える。
【闇魔法】
闇を自由自在に操れる。闇魔法を自由に使える。
まあ、こんな感じだ。普通に強い。ステータスも防御と運以外は御剣に勝ってるし、普通に強いと思う。まあ、見た目は角以外人間っぽいし、幻影魔法で何とかなるだろ。
「俺のやるべき事は、魔王に生きていることを知られずにもっと強くなることだな。」
俺も魔王だが。ステータスが強いからと言って油断してはいけない。魔王の強さも分からないのだ。しばらくは旅をして、魔王軍の情報を集めつつ、国に帰ることが優先しなければいけない事だろう。
嫌、そんなことよりも優先すべきことがある·····。
「服、どうしよう?」
真っ裸だったことを忘れてた。
結果から言うと服は手に入れられた。襲ってきた蜘蛛っぽい魔物を【時空魔法】で魔物のいる場所だけ重力を強くして倒し、そいつから手に入れた糸を使って【万能者】で服やローブを作った。
流石に角を出したまま、公道を歩くのはここがどこだか分からない以上危険だからという理由でローブを作ったのだ。まあ、こんな魔物が多いところで装備無しは目立つからというのも理由の一つだが。
そして、ローブ姿で歩くこと数分。今も白虎と戦っている人たちの所に行った。
「クッソ!ギルド長の野郎!話が違うじゃねぇか!」
リーダーっぽい戦士の男が悪態をついている。
「カーバルさん、逃げますか?」
盗賊風の男が戦士の男に問う。
「逃がしてくれるんなら、そうしてぇんだけどな·····」
カーバルと呼ばれた男が、白虎に向かって剣を構える。
「逃がしてくれると思うか?」
白虎っぽい奴が牙をむき出し、こういった。
『我のテリトリーに不躾に入った貴様らを逃がすと思うか?』
「私なら逃がさないわね」
白虎の問いに魔法使いっぽい女の人が答える。
『その通りだ。この場を離れたければ我を満足させろ!』
そう言ってカーバルさんとやらに襲いかかった!
「くっ!」
迫り来る爪を何とか防ぐカーバルさん。そこに魔法使いの女の人が
「『火炎槍』!」
『甘いわ!』
白虎は炎の槍を叩き落とす。
「本命は俺ですからね!」
盗賊風の男がナイフを突き立てる。しかし、ガンッ
「硬い!?」
『その程度か?なら死ぬがいい!』
白虎が盗賊風の男に爪を振り下ろそうとする。
「モルガ!」
カーバルさんが叫ぶ。俺はとっさに時空魔法を発動する。
「『重力操作』!」
『ぐお!何だこれは!』
白虎が地面にめり込む。
「なんだ!?」
カーバルさんとやらが驚く。
「ちょっと、大人しくしといてくれ」
白虎に向かって俺はそう言った。
「あの、ちょっとお聞きしたいんですけど〜」
「あ、ああ。別にいいがこっちからも一ついいか?」
「何ですか?」
「あいつが動きを止めてるのはアンタのお陰なのか?」
「そうです。僕の魔法を使ってます」
俺は、普通に答える。
「そ、そうなのか·····。因みに使っている魔法を聞いてもいいか?」
「それは、教えられません。大事な戦闘手段ですから」
俺は、苦笑いしながらそう答える。
「そうだよな。すまん、失礼なことを聞いた」
カーバルさんとやらが申し訳なさそうに問う。
「自己紹介が遅れたな。俺のことはカーバルって呼んでくれ。」
やっぱり、カーバルで合ってたんだな。
「俺の名前は零と言います。よろしく」
俺はにこやかにそう言った。
「ところで俺に聞きたいことって何だ?」
「ここから一番近い街って何処ですか?」
「ここからだと、ラール帝国の街が一番近いが、そこから来たんじゃ無いのか?」
そんなことを不思議そうにいう、カーバルに
「実は何でここにいるのか分からないんですよ。気付いたらここにいまして」
その言葉を聞いたカーバルさんが、
「なるほど。魔力暴走の事故にでも巻き込まれたのか?」
魔力暴走?何だそれ?まあ、転生者ってことは言わない方が良いだろうから、ここは乗っておこう。
「はい。恐らくは」
その言葉を聞いたカーバルさんが、
「そうか。それは災難だったな·····。街にはここを真っ直ぐ行くと着くんだが、とんでもなく遠いぞ?」
「そうなんですか?」
驚く俺に、
「ああ、ここは魔大陸だからな。帝国まで行こうにも人の足じゃ何ヶ月もかかる。」
衝撃の一言だ。流石にそんなに歩く気は無いんだよな。
「それより、あいつほっといて良いのか?」
そう言って、白虎を指すカーバルさん。忘れてた!
「ごめん。今から魔法解くよ」
俺が魔法を解くと、
『我を貴方様の従魔にしては貰えませんか?』
などと言ってくる白虎。
『我は八柱の一人ですので、そこそこ役に立つとは思うのです!何卒、我を強大な力をもつ貴方様の従魔にしては貰えませんか!』
頼み込んで来る、白虎。モフモフしてそうだし、別にいいんだけど、
「流石に街をその姿で連れ歩くのは·····、小さくなったり出来る?」
『出来ます!』
その言葉のあとポンと音がしたかと思うと、
『これでいいでしょうか?』
可愛い白猫になっていた。
「採用!!!」
『ありがとうございます!では、従魔の契約を!』
従魔の契約?なんだそれ?
『貴方様の血を我が飲み、その後貴方様が我に名前を付ければ完了です。』
なるほど。俺はカーバルさんに剣を借り指を少し切る。
「はい」
『有難く』
俺の指から滴り落ちる血を白虎が飲む。名前はに何にしよう。ここは頭に浮かんだ、
「お前の名前は《白夜》。これから、お前は俺の従魔だ」
ちょっと、かっこよく言ってみた。
『はは!これから、永遠に貴方様に従います!』
その言葉の後、胸の中に何かが結ばれたような感覚がした。
「かの《白帝》が従魔になる瞬間を見ることになるとはな·····」
「まさか、人間に従うなんて思いませんでしたね·····」
それぞれが感嘆の声をだす。
『主様は街に行きたいとの事でしたね?』
「そうなんだけど、いくら何でも何ヶ月も歩くのはな·····」
しんどすぎる。そんなに歩くのはなかなか骨が折れる。
『我に乗れば数日もあれば着きますよ?』
何ヶ月かかるのが数日で行けるのか?
「どういう事だ?」
『我であれば大体の魔物は出てきませんし、最短ルートも知っていますから』
すげえ!それなら楽勝じゃん!
「じゃあ、早く行こう!あ、カーバルさん達さようなら!」
「お、おう。じゃあな」
俺は白夜に跨り、
「行くぞ、白夜!」
元気よく言うと、
『はい!主様!』
元気良く返事をし、走り出した!
少しでも面白いと思ったら高評価とブックマーク貰えると作者の励みになります!
次回、帝国の街に着きます!
※誤字脱字あったら教えてください!