一章 少女の魔王と少年の魔王
前回のあらすじ
王都に九重の死が知らされる。
暗い部屋の中で少女が泣いている。一人ぼっちで、誰もいない部屋で・・・。そう、彼女は孤独だった。不死身という呪いによって。彼女の元には人が立ち寄っては去っていく。それによって彼女はまた一人になる。
泣き疲れて、感情を失った彼女の目は虚ろな目になった。そして、そんな彼女に一人の少年が寄っていった。そして、手を差し伸べてこういった。
『君も一人なの?』
『そうじゃ・・・。わしはずっと一人じゃ。皆がわしを置いていくのじゃ・・・。きっと、お前もいつかわしを置いていくのじゃろう?』
その言葉に少年は、
『大丈夫。僕はずっと君と一緒にいるよ!』
はにかみながらそう言った。少年は本当に彼女を置いていくことは無かった。それによって、ようやく彼女は幸せな毎日を手に入れた。
そう、あの日が来るまでは・・・。
少女達は国を作り、そこで平和に暮らしていた。しかし、平和は長くは続かなかった。ある日の事だ。彼女達の国は、隣国からの宣戦布告を受けた。攻め入ってきた理由はその国の物資の為だった。
技術大国だった彼らの力は凄まじく、魔道具を持った大国の兵士達はそれはそれは強かった。しかし、責められた国は魔族の身体能力を生かして負けじとこれに応戦した。
そして、大国にある一戦で大打撃を与えた。焦った大国は、ある作戦を決行した。
それは、やってはいけない禁忌だった。人間の身体を大幅に強化し魔物に近い存在にするという禁忌。結果としてそれは、失敗し、多くの兵士が魔物となり暴走した。
その結果大国は滅んだ。しかし、その禁忌のせいで、殆どの魔族や魔物が凶悪化した。そう、その禁忌の呪いは魔物や魔族が発症すれば、凶悪化するというものだった。
そして、魔国は二つに分かれた。そして、魔王も二人になった。
元少年が率いる、凶悪化しなかった魔族たちの国。
元少女が率いる、凶悪化した魔族達の国。
その争いは何百年もの間続いた。
そして、凶悪化しなかった少年は、何百年もの年月をかけ、魔物達の凶悪化を解くことに成功した。
しかし、その代わりに彼は凶悪化してしまった。他の魔族達の呪いを全て一身に受けてしまったのだ。しかし、彼はその中でも理性を保った。
それでも、彼らに起こる悲劇はまだ序章だった。
なんと、彼の身体に封印されていたはずの邪神が乗り移った。
普段ならば跳ね除けるのは、用意だったのだろう。しかし、その時の彼は正気では無かった。故に邪神に心を奪われそうになった。
しかし、彼は自分の全てが邪神に奪われる前に自分の体ごと封印をかけた。だが、その過程で引き受けていた呪いを邪神が解放してしまった。
再び、狂う彼女達。彼女は邪神を解放し、その身に宿らせた。狂った彼女の体はすぐに邪神のものとなった。そして、邪神は呪いを受けていない魔族たちにこう言ったのだ。
『魔王を殺されたくなければ、我の下につくがいい』
彼は、同じ魔族たちに好かれていた。彼のお陰で人間の魔族への態度は軟化したからだ。その魔王を人質に取られれば従う以外彼らに選択肢は無かった。
そして、人間対魔族の闘いは再び始まった。
そして、邪神の乗り移った少女の魔王は、占いに出た通り少年を殺しす事にした。殺すことだけは優秀なアスマディに頼み。
しかし、それが失敗だったのだろう。念には念を入れて、死体に封印でもしておくべきだったのだ。
『いつか、邪神はこの事を後悔することになる』
そんなことを封印されし少年の魔王は一人、呟いた。
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次回から、主人公視点に戻ります。