一章 死亡
前回のあらすじ
色々あったけど寝ました。
「九重様。起きてください!」
「ふぁ?」
俺はゆさゆさと体を揺さぶられ目が覚めた。どうやら、朝が来たようだ。·····昨日の異世界転移は、どうやら夢じゃ無かったみたいだ。だって隣にメイド服のお姉さんがいるんだもん。
「初めまして、九重様。私九重様の専属メイドのメアリーでございます」
俺の横でメイド服のお姉さんはメアリーと名乗った。胸は大きく、メイド服によってその胸元は強調されていてすごくエロい。
「えと、メアリーさん。今は何時ですか?」
「火の月の十六日目でございます。」
火の月?なんだそれ。俺がキョトンとしているとメアリーさんがこの世界の時間感覚などを教えてくれた。
火の月、水の月、光の月、闇の月があり、それぞれが六十日らしい。つまり、二百四十日で一年らしい。ふむ、分かりにくい。
「それにしても大和は何処に行ったんですか?」
「昨日から寝れないから、部屋を変えてくれと申し出があったので部屋をお変えしました」
まさか、俺のイビキがうるさかったとか?
「九重様はイビキなどをかいていたわけではありませんよ?」
心を読まれた·····。じゃあ、何だ?昨日色々な事があり過ぎてストレスで寝れなかったとか?
「九重様以外は、ステータスの効果によって精神力が強化されておりますのであの程度のことで眠れなくなったりはしませんよ?」
さっきから心を読まれてるんですけど!それもスキルなのかな?
「まあ、スキルと言うよりは加護ですね。私は『加護』持ちですから」
加護って言うと生まれつき持ってる能力のことか?ってことは、さっきの胸のくだり全部読まれてたってことか?
「まあ、私は私はそんな目で見られるのを慣れていますけど、あんまり人の胸をまじまじと見つめたりするのは良くないとおもいますよ?」
「誠に申し訳ございません」
俺は誠心誠意土下座した。
「あ、すいません。全然気にしてないので大丈夫ですよ。貴族にはもっとエロい目で見てくる人もいますから」
やっぱりいるのかエロ貴族·····。異世界と行ったらモンスター、盗賊と並ぶ位の確率で見るエロ貴族。やはりいるのか。
「まあ、そんなことより早く朝食に行きましょう」
俺達は朝食を食べ、午前は授業、午後は訓練という形でしばらく過ごした。そして、いつの間にか俺の旅立ちの日になった。
「おはようございます、メアリーさん」
「おはようございます。九重様」
俺は、部屋に起こしに来てくれたメアリーさんと朝の挨拶を交わす。メアリーさんは俺がさっきまで寝ていた布団をたたみ始めた。
「こうして、畳んであげるのも今日が最後かも知れませんね·····」
「はは、本当に今日までありがとうございました」
感慨深く言うメアリーさんに俺は苦笑いしながら、お礼を言う。
「まあ、メアリーさんが入れてくれる美味しい紅茶を飲みに帰って来ますよ」
俺の言葉にメアリーさんは微笑み、
「では、珍しい茶葉を用意して待っています」
といった。メアリーさんは布団を畳むと、部屋を出ていこうとして、最後に一例しこう言った。
「どうか、九重様の旅路に女神の加護のあらんことを」
「ありがとうございます」
何やら仕事があるとかで、送迎には来れないそうだ。
俺は、街の外の草原で竜車に荷物を積んでいる。
「九重」
「どうした?」
俺が荷物を積み終わると大和が声をかけてきた。
「なるべく、早く帰って来いよ!」
「ああ」
次は、アリスが前に出てきた。
「あの、九重様これを·····」
何やら腕輪を差し出してきた。
「何これ!格好いい!」
金の装飾に何やら文字が書かれている。なんて書いてるんだこれ?
「王家の倉庫に何故か保管されていたものです。なんの効果があるかは分かりませんが、お守り替わりに持って行って下さい!」
「こんないいもの貰っていいのか?」
見ただけでも金貨五十枚は下らないだろう。
「大丈夫ですよ。その腕輪も倉庫に埋もれているよりかは使ってもらった方が嬉しいに決まっていますから」
「そうか。なら、有難く貰うとするよ。お礼はまた今度だけど、楽しみにしていてくれ」
「ええ、楽しみにしてます」
そんなアリスとのやり取りが終わった後、クラスメイトの皆やユリウスからさよならの挨拶を受けた。あれ、御剣は?
「なあ、御剣は?」
「ああ、アイツか。もうすぐ来ると思うぞ?」
大和がそう答えてくれた。
「お、来たみたいだな」
御剣がこっちに向かって走ってきた。
「ごめん、遅れた!」
結構な距離を走ってきたのか、すこし汗ばんでいる。
「あの、九重君。これ!」
そう言って何かの入った包を差し出してきた。
「これまで、クエストに行って貯めたお金で買ったんだ。·····受け取って貰えるかな?」
「開けていい?」
御剣が顔を縦に降った。開けてみてみるとそれは綺麗な銀の指輪だった。
「先生にこの国の人は旅立つ人に指輪を上げるって聞いた、から、さ?」
御剣の頬が赤く染まり、段々言葉が掻き消えていく。
「ありがとう御剣。帰ってきたらお礼をするよ」
「うん、約束、だよ?」
不安そうに上目遣いで行ってくる御剣。
「ああ、約束だ」
俺は必ず帰って来ると約束する。
「挨拶は終わりやしたか?」
竜車の御者が聞いてくる。俺は竜車にに乗り込む。
「ああ、もう大丈夫だ」
「じゃあ行きやすよ!」
竜車が動き出した。取り敢えずの俺の目的地は、カタルゴ王国と言うところだ。どうやら、そこに魔王軍が攻めて来そうなのでその忠告をしに行って欲しいとアリスに言われた。
後は、封印を解除するのが得意な高名な魔術師がいるそうなので、ステータスの封印解いてもらうためにカタルゴ王国に行く。
「じゃあ、皆。行ってきます!」
俺は竜車の窓から手を振る。
「「「行ってらっしゃい!」」」
皆が笑顔で送ってくれた。
「行ったな」
「言っちゃいましたね·····」
大和と王女様がそう呟く。
「まあ、あいつなら大丈夫だろ」
大和がそういい、城に向かって歩き出した。それにみんなも続いて城に帰っていく。でもなんだろう?凄く胸の辺りがざわざわする。
「本当に大丈夫かな·····」
皆が城に帰る中私は一人、彼が出発した方向を見つめていた。
「雫〜。早く帰ろ〜!」
「あ、分かった〜」
胸騒ぎは気のせいだと信じ、茜の呼ぶ城の方に私も帰っていった。
「暇だな〜」
俺は御者のラスに声を掛けた。
「そうでやすか?」
俺は出発して、数時間ほどで暇を持て余していた。
「後どれ位で着くんだ?」
「後、三日ぐらいでやすかね」
長っ!俺は諦めて景色を眺めながら暇を潰していた。あ〜、空が青いな〜。
「ん?あれ何だ?」
俺はが空を見上げていると人の形をした何かが空を飛んでいるのが見えた。
「どれでやすか?」
「あの人の形をした、ほら、あれ!」
俺は指を指してどこにいるかを伝えた。
「なんでやすかね?あれは」
「おい!あれ、こっちに向かって来てないか?」
その人の形の何かはこちらに向かって来ている。そして、ズドン!俺達の目の前に、竜のような男は降りてきた。翼が生えていて、目は爬虫類の様な目をしていて、尻尾もある。
間違いない!こいつは竜人だ!
「黄色い目に顔に炎の刺青!?旦那!こいつは、暴虐龍 アスマディでやす!」
何だその物騒な名前!
「どんな奴なんだ?」
「気に入らないやつはすべて殺します。昔、子供があいつの領域に入っただけで街の住人を全て皆殺しにしたという、噂があります。因みに魔王軍の幹部です!」
「ちょっと待てよ。俺は別に無差別に殺したわけじゃねえぜ?」
俺達の前にいる男は口を開いた。
「俺のテリトリーに入ったガキが悪いんだよ。ちゃんと教育してなかった街の奴らも同罪だ」
いや違う。テリトリーとかは多分関係ない。多分こいつはただ殺したかったから殺しただけだ。こいつと対峙した感じそう言ってる。自分の機嫌によって全てを決める身勝手な感じが溢れ出ている。
「まあ、今日の目的はお前だよ。」
そう言って俺を指してくる
「俺は、今日機嫌が良い!だからお前は逃がしてやるよ」
そう言ってラスを指した。
「ラス、逃げろ!逃げて、このことを国に報告してくれ」
俺はラスにそう言った。その言葉を聞いたラスは、
「しかし、ココノエの旦那·····」
逃げるべきか考えているラスに向けて俺は、
「そんなヤバイやつが近くに来てることを知らせないと皆が危ない。だから、頼む·····」
「っ!分かりやした旦那。絶対生きて帰ってきてくださいね!」
そういい、ラスは竜車を捨て竜に跨る。
「ああ、ちゃんと約束は果たすから安心しろ」
「では、旦那ご無事で!」
ラスは龍に乗り凄まじいスピードで来た道を戻っていった。これで、みんなは大丈夫だろう。さて·····
「アスマディとか言ったか?俺に一体何のようだ?」
俺は腰の剣を抜き構える。目の前のこいつは俺を殺しに来たのだろう。·····何故殺しに来たのかは分からないが。
「お前を殺すように魔王様に命令されたんだよ!」
やっぱりか·····。しかし、何で俺なんだ?ステータスも見えない雑魚なんだが?
「占いに殺すように出たらしいけどな?お前には魔力もスキルも色んな力が全て篭ってねぇ!正直どうしたらそうなるのか聞きたいくらいだぜ·····。本当期待外れだぜ」
アスマディがため息をついた。そして、次の瞬間。
「おらぁ!!!」
「くっ!!!」
アスマディが殴りかかってきた。ギリギリ防御が間に合い、直接殴られることは無かったがそのとてつもない威力の攻撃に吹っ飛び、木に体を打ち付ける。
「ぐぁっ!」
「へぇ?なんの力もねぇのに頑張るじゃねえかっ!!!」
近づいてきたアスマディが倒れている俺に蹴りを放ってくる。速い!今度は防御が間に合わず、バキボキボキ!!!自分の肋骨が折れる音がする。
「ぐぁぁぁぁ!!!」
俺が痛みで叫び声を上げると、
「次は足ぃぃぃ!」
俺の足を掴み、引きちぎった。
「あぁぁぁぁ!!!」
俺がまたもや叫び声を上げると、
「いい声だぁ。本当に弱いヤツを苛めんのは楽しいな!アハハハハハ!クアハハハハハ!」
高笑いを上げているアスマディ。千切られた足からは血が溢れ出ている。血が足りなくなっているのか、もう頭が回らない。何も考えられない。
突如、頭の中に色々な映像が流れてきた。これが、走馬灯か·····。楽しかったこと、嬉しかったこと、悲しかったこと。
そして、最後に流れてきたのは約束だった。
『絶対生きて帰ってきてくださいね!』
『早く帰って来いよ!』
『楽しみにしています』
さっき逃がしたラスに、大和にアリス。それにクラスメイトの皆。そうだ、俺は約束したんだ。
最後に、
『約束、だよ?』
御剣との約束が頭に流れてきた。約束は守れって父さんにも母さんにも言われたっけな?数時間前の約束も守らないなんて絶対駄目だよな?
『負けそうになったら、汚くてもいい。最後に一撃だけ食らわせたいと思ったのならこの技を使え。何、普通の猫だましでも普通に効くんだ。ならこいつも効くさ』
師匠の言葉が思い浮かんだ。
約束を果たすためには、まずこいつを殺さなきゃいけない。
そうだ。殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!
倒れている俺に向かって歩いてくるアスマディを見る。
「終わりだな!じゃあ、死ね!」
「っ!!!」
俺は、砂を掴みアスマディの顔に向かって投げつけた。
「ぐあっ!な、なんだ!」
油断してるやつには、いけいと聞くんだよな。この手。しかし、こんなことをしても少ししかこいつは止めれない。だから、勝負はこの一撃!
「うぉぉぉぉぉ!!!」
俺は、木を掴み片足で立ち上がる。次に一閃。首を狙った一撃だ。不可避の一撃。
しかし、カンっ。剣が弾かれる。
「残念だったな!俺の首はそんななまくらじゃ切れねぇよ!」
·····そんなことは分かっていた。だから俺の狙いは最初から、
「おらぁ!」
俺は砂をかけられて開けたばかりの右眼にナイフを突き立てた。グシャ!と音がなりアスマディの目に、俺のナイフが深く突き立てられた。
「ギャオオオオ!」
何か、ドラゴンっぽく呻いている。
「テメェ!!!死に損ないがあ!」
俺は怒り狂うアスマディに
「ザマァみろクソ野郎!」
中指を立てて言ってやった。
「テメェェェ!!!」
アスマディが拳を振り上げる。多分俺の頭はこいつの怪力によってもうすぐ潰されるのだろう。
ごめん、皆約束守れないや·····。
グチャ!!!
俺の意識はそこで途絶えた。
『本体の死亡を確認。スキル【願望成就三】を発動』
『【願望成就三】の効果によって封印されていたスキルを解放します。完了しました。』
『本体の一つ目の願いを確認。スキル【万能者】を獲得』
『本体の二つ目の願いを確認。本体の復活を、失敗しました。失敗しました。失敗しました。·····』
『·····失敗しました。代行案、転生を施行します』
『魔大陸にて器の創成を行います。完了しました。魂の定着、完了しました。ッ!!?想定外の自体発生!!!転生によって魂が最上位の存在にランクアップしました。器もランクアップを開始します』
『種族が【人族】から【魔王種】に進化しました』
『本体の最後の願いを確認。魔法【時空間魔法】を獲得しました。』
『本体全ての願いを叶えました。【願望成就三】は消去されました。』
『本体の意識の覚醒まで残り一時間·····』
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やっと、主人公が死んだ・・・。明日も投稿しようかな?
※誤字脱字あったら教えて下さい!