二章 慢心しない勇者は珍しい
前回のあらすじ
勇者を倒せるように生徒達を育てて欲しいと頼まれた。
友香・凛side
私達はある日異世界召喚された。何故か三年生の一つのクラスと共にだ。しかも、いきなり魔王を倒せとか言われても意味わかんないし!
私は文句を言おうとした。しかし、それは異世界召喚をされて喜んでいる男連中に邪魔された。そして、結局魔王を倒さないと帰れないと言われ、仕方なく私も魔王退治に参加することにした。
最初の内は皆よかった。みんな真面目に訓練をして、強くなろうとしていた。しかし、そんなある日、私たちは王国の魔術学院への編入を強制された。特別生として。
そこからだ、皆が暴走し始めたのは·····。自分の能力がこの世界の人たちより圧倒的に強いと知り、大半の生徒は周りに傲慢な態度をとるようになった。
私と九条先輩で何とか問題が起きないように頑張っているが、それももはや限界に近い。
しかし、もうすぐ他の学園との対抗戦が始まる。そこで皆が倒されてくれることを願う。まあ、そんなこと無いだろう。しかし、極小の確率に賭けなければ、もう私たちに手は無い。
「あーあ。こんな時、先輩がいてくれたらな~」
私は思わずそんな言葉を漏らす。いつも私が困っていると助けてくれる、私の大好きな人。しかし、この世界に彼はいない。ならば、私が彼のようにやるしかない。
あー!本当に先輩に会いたい。スキルにはいつか会えるって出たけど、それより今は会って思いっきり抱きつきたい。そして、顔を胸元に埋めたい。そんなことを考えていると、扉が開いた。入ってきたのは、ルームメイトである九条先輩だ。
「どうしたんだ?」
私の顔を見て九条先輩が聞いてくる。
「いやー、先輩に会いたいなって思いまして」
「本当にお前は九重が好きだな」
苦笑いをしてくる九条先輩。笑う度ポニーテールの後ろが揺れている。
「いや、先輩も大好きじゃないですか」
「べべ別に、大好きではないぞ!?」
明らかに動揺し、ワタワタし始める。ホント、イジリ甲斐のある人だ、と改めて思う。しかし、しばらくすると自分を取戻し、コホンとわざとらしく咳をする。
「九重が向こうにいるのなら、私たちがいない間に御剣が抜け駆けしてるかもしれないな」
「大丈夫ですよ。九重先輩、御剣さんの性別にまだ気づいてませんし」
よっぽどの事が無い限り彼女は本当の性別を打ち明けられない。と思う・・・。
「まあ、何にせよ」
ソファーに座る九条先輩。
「魔王を倒さないと帰れないんだぞ?」
「そのためには色々課題がありますけどね・・・」
例えば、一年生と三年生の不仲を解消するとか、慢心を止めるとか、もう、色々な問題がある。思い出すだけで憂鬱になってくる。
「す、すまない。落ち込ませるつもりは無かったんだ・・・」
「いや、寧ろ落ち込ませようとして言ってたのなら、ぶん殴ってましたよ」
その言葉に顔を引き攣らせる、九条先輩。
「対抗戦か・・・」
「私たちはあえて辞退したが、あの馬鹿共に勝てる奴が本当に出てくると思うか?」
私たちは仮にも勇者にそう簡単に勝てる奴らが現れるとは思えない。でも、それでも信じないと始まらない。
「私を助けてくれた時に先輩が言ってましたからね」
私の中にずっと残っている、大事な言葉。
「最後まで何かの可能性を信じない奴の願いは叶わない。叶えれるのは最後まで諦めずにその可能性を信じ続けた奴の願いだけだ」
私がその言葉を口にすると、九条先輩は微笑み、たった一言
「そうだな」
と言うと、部屋を出ていった。
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