第三話:意外な事実
「おめでとうございます! 今回の依頼でDランクへ昇格です」
受付の女性が微笑んで言ったーーミミに。
「やりました! ついにユーリさんを抜かしてやりましたよ、良い気味です!」
ミミは新しくなった冒険者タグを俺に見せつけるように突きだす。
「お前を見出だしてやったのはこの俺だぞ? 忘れるな」
俺が睨みながら言うと、ミミはまるでゴミでも見るように半目になった。
「欠片ほどあった感謝の気持ちも全て消え失せましたよ、屑野郎」
「ユーリさん、嫉妬はいけません!」
この二週間ほどで、ずいぶん態度が気安くなった受付の女性が、指を立てて俺を咎めた。
「でも本当だもん、俺が導いてやったんだもん。 俺悪くないもん」
「はいはい、そうですね。 ユーリさんは良い子出来る子」
受付の女性平坦な口調で言って、俺に冷ややかな視線を向け、俺は視線を反らした。
「ところで、ミミさんはずいぶん見違えましたね」
受付の女性はため息を吐いて俺から冷ややかな視線を崩すと、ミミを見て言った。
「そうでしょう? そもそもミーは元がいいのだから当たり前ですよ」
ミミは偉そうに言って、モデル立ちをした。
実際ミミは可愛くなったと思う。
貧民街で会った時のような折れそうなくらいに細い体も、肉が付き初めて女性らしい膨らみも出てきている。
髪も汚いウ○コ色から、濃い紫になっていて艶々だ。
纏っていた布のような何かは、今や魔法使いらしい黒のローブを纏っている。
正直モデル立ちも様になっていて、俺はなんかムカついた。
「マセガキ」
俺がぼそっと呟くと、ミミは間抜けな顔で呆けた。
「ミーは18才ですよ?」
「は?」
ミミが年上という事実に、俺は固まる。 するとミミは、いたずらっ子のような目つきで微笑んだ。
「そういえばユーリさんって何才なんです?」
「30才」
嘘だ。 しかし本当でもある。
俺に前世の記憶があるなど知らないミミは、呆れた表情でため息を吐いた。
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俺が声をかけてから、ミミはすぐに冒険者になって自分でバリバリ稼ぐようになった。
今では宿暮らしで、ご飯もゴミ漁りする必要はなくなり貧民だったころが嘘のような生活となっている。
俺はといえば、勇者になると息巻いておいて安宿に安飯屋それとしょぼい依頼をこなすばかりで、仲間も貧民魔法使いしかいない。
これでどうやってメイリンを取り戻せるのか。
そろそろ異世界らしくテンプレを踏んで無双したいところである。
「というわけで、明日は奴隷を見に行く」
「何が、というわけですか?」
飯を食べる手を止めて、ミミはこちらを怪訝そうに見つめた。
「いや、俺って勇者目指してるじゃん? そろそろ前衛も欲しいなって思ってさ」
ミミは口をあんぐり開けて固まった。
「あれ? 言ってなかったっけ?」
「知りませんよ!!」
だんっとテーブルを叩いてミミが声を上げた。
「勇者なんて人外の化け物みたいなもんです! ユーリさんみたいな他力本願なスキルしかない雑魚には無理無理無理です!」
「いやいやそれはこう、ご都合な感じで……ね?」
ミミは「意味不明です」と言ってため息を吐いた。
「でも明日はミーは依頼があるので付き合えませんよ?」
「聞いてないよ!」
俺はテーブルを叩いて抗議した。
しかしミミは「はい?」と言って半目になる。
「どうしてユーリさんにいちいち予定を告げなきゃならないんです? 彼氏面とかキモいです」
「こっちだってそんなん願い下げだ!」
俺はそう言ってため息を吐いた。
こうして俺は一人で奴隷を見に行くことが決定したのだった。
正直心細い。
しかしこうなったら全力でエロエロしてやろうと、心に誓う。
奴隷ってそういうもんでしょう?
次回、奴隷回です!