北の王子と南の姫様
今回は前回の最後にちょろっとだけ出てきた、謎の金髪イケメンについて書かれています。
主人公くんの事について書くのはちょっとだけ後になりそうです。
それでも読んでいただけると嬉しいです。
「貴方は誰ですか?」
そう問いかけるユーリ。
「いやはや、これはこれは。俺の『飼い猫』がどうもどうも」
笑顔でそう言う金髪の少年。
「っ..................」
それに対して何故か表情が曇るリーシャ。
「僕の名前はロイ・ムーンアイズ。ノーザンボルクの王子だよ。僕の躾がなっていなくて悪いね、銀髪君」
ノーザンボルク。サウザンブルクと真逆の北にある国だ。ノーザンボルクは男尊女卑の国で、女尊男卑のサウザンブルクとはまさに真逆だ。そのことから昔から両国の争いは絶えなかった。現在、争いは無くなったものの、両国の対立はまだ続いている。
そんな両国の王子と姫が何故.....?俺が聞いた話はもうとっくの昔の話なのか?両国は現在において友好関係を築いているのか?
そんな疑問がユーリの頭を駆け巡った。
「僕はもうすぐ彼女と結婚する。まあ、君には関係ないことだろうけどね」
理解が追いつかない。ユーリの頭の中には無数のクエスチョンマークで埋め尽くされていた。
「じゃあ僕たちはこれで。ほら行くぞ」
ロイはそう言ってリーシャに肩を寄せる。
「あ、ちょっと待って!ルナフレアさん!勝負はどうするんですか?まだ勝敗は決まってませんよ!」
ユーリは慌ててそう言う。
「貴様の勝ちでいい。貴様は強い。色々と悪かったな、また今度お詫びでもさせてもらうよ......」
どこかさっきまでのような元気や威厳がないリーシャ。
「あ、ちょっと待って!!!」
すぐさま聞き返そうとしたユーリだったが、リーシャとロイは去っていった。
「一体どういうことなんだろう......。でも、あのロイって人の前だとルナフレアさん、なんか様子が変だったなぁ......。それに『飼い猫』って......。次に会った時は必ず聞き出そう」
(あ、やっべ。もうこんな時間じゃん。早く教室に向かわないと先生に怒られてしまうな。っていうか、テレシアはどこなんだ?すまないけど、先に教室に行かせてもらおう。)
テレシアに心の中で謝りつつ教室に向かうユーリ。そして教室に着き入ってみると、テレシアが席に座っていた。
ユーリは安堵した。そして、周りを見ているとそこにはさっきまで闘技場にいたリーシャも同じクラスだった。
でも、やっぱり元気がなさそうでユーリは声を掛けるのを躊躇った。
そして軽いホームルームを終え、下校時間となった。テレシアとは正門で別れてユーリは自分の家に向かった。
「ただいまー」
するとリビングの方から、
「おかえりーお兄ちゃん!」
と返事が返ってきた。
ユーリには妹が一人いる。シェイン・フォルナーク。ユーリとは2歳差で15歳。シェインも今日は魔術師育成学園中等部の入学式へ行っていた。
「シェイン、友達できたかー?先生はどんな人だった?」
「友達できたよ!先生は優しそうな人でこれから楽しくなりそう!」
「それは良かった。これで一安心だ」
「お兄ちゃんの方はー?どうせまた何かやらかしてたんでしょ?」
「あはは......。まあちょっとね......」
なんでわかるんだよ。超能力者か、コイツは。
そう心の中でツッコミを入れるユーリ。
「今日は疲れたし自分の部屋でゆっくりするからご飯の時になったら呼んでくれー」
「わかった!」
ユーリとシェインはこの家に二人で暮らしている。ユーリの両親は仕事で忙しく、手が離せないため一緒に暮らしていない。よくある話だ。
だから妹のシェインが家事全般をこなしてくれる。優秀な妹がいると、本当に助かるとユーリは心の底から感謝していた。
陽も落ちて晩御飯を食べ終えたユーリはお風呂に入る。入浴中も、ずっとリーシャのことが気になって仕方がなかった。お風呂から上がってきてからも、自分の部屋でベッドに寝転び、考えていた。
なんで仲悪い国同士の姫様と王子様が結婚するの?
なぜリーシャはロイに『飼い猫』と呼ばれているの?
どうしてリーシャは元気がなかったの?
次の話で明らかになります。
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