桜が散っても…
「星村、早く行くぞ。」
『はい、橘さん。』
あの日から付き合う事になった俺達だが、会社では今まで通りにしている。
だって、人に色々言われたくないし。
今日は、二人で外回りに行く予定。
二人で外を歩いていると、桜が散っていた。
『桜…散っちゃった。』
「桜が散るのは、切ないな。」
『うん、そういえばあの時もだったなぁ…。』
「あの時って…?」
『翔くんが転校して行った後の話なんだけど…。』
「うん。」
『翔くんがいなくなった後、すぐ散ってしまったの。』
「えっ、そうだったのか。」
『私は、それを見て思ったの。桜にとって、翔くんは大切な人だって…。』
「俺は、何もしていないけど…。」
『きっと、翔くんの桜に対する想いがある所にはきれいに咲くの。』
「そういえば、俺が引っ越した時に見に行った桜もそうだったかもな。」
『うん。だから、大切な人なの。』
「俺は、夏音を想って桜を見ていたんだよ。」
『えっ、そうなの?』
キョトンとした顔をして、見てきた夏音。
「この間、言っただろ。“桜を好きになるきっかけをつくってくれたのは、ある一人の女の子”って。」
『あっ、そうだった。』
「桜を見ていた夏音が、笑顔なのが好きだったんだよ。」
『あ…ありがとう。』
「だから、桜…というより夏音に対する想いがある所だな。」
『翔くん…。』
そんな事を話しながら、俺達は外回りに向かった。
桜が散ってしまっても、“想い”がある限り、きっとまた咲くだろう。