表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/7

夜桜

だんだんと日が暮れてきた。


俺達は、昼と夜の桜を見に来たので、まだ桜ヶ丘にいる。


『夜の桜も、きれいですね。』


「ああ、俺も夜の桜は好きだ。」


俺は、学校を転校した後、よく夜桜を見に行った。


もちろん、親にバレないように。


月明かりが桜を照らしてくれていたのが、好きだった。


それに、星村も見てくれていたらな…と思っていた。


星村は、昔こう言った。


『お昼の桜も好きだけど、夜の桜も好きなの。』


「どうして?」


『何だか、落ち着くの。』


「そうなんだ。」


とやり取りをしたのを覚えている。


そんな事を思い出していると、星村が話しかけてきた。


『橘さんって、桜好きなんですね。』


「大好きだよ。」


『男の人が、桜を好きなんて言うの初めてで

、びっくりしました。』


「俺は、桜が大好きなんだ。だけど、好きになるきっかけをつくってくれたのは、ある一人の女の子だ。」


『女の子…?』


「うん。俺が幼い頃、よく一緒にいた子なんだが、桜が好きで…。」


あっ、つい言ってしまった。


どうしよ…と思いながら星村を見ると、びっくりした顔をしていた。


『も…もしかして…、』


「そうだよ。俺は、橘 翔。転校する前にいた、星村の幼なじみだよ。」


『えっ…、そんな。』


「ごめんな、星村。」


『謝るのは、私の方です。ごめんなさい、気付けなくて…。名前で分かるはずなのに。』


「星村は、悪くないよ。俺が、あの頃急いで転校だったからな。」


『挨拶もなくて、急にいなくなってしまって、どうしたのかな…って思ってた。』


「親の転勤が急に決まって、急いでたんだ。ごめんな。だけど、向こうに行っても星村の事をずっと思い出していた。

桜の季節になると、特に思い出していたよ。」


『私も、途中まで覚えていたんだけど、急に翔くんの事を忘れていた気がする。』


「いいんだよ。思い出してくれて、ありがとう。

久し振りに会った時は、びっくりしたよ。

大人っぽくなっていたから…。」


『私は、優しい人だなって思ってた。』


「ありがとう。星村、あのさ…、」


俺がそう言っていたら、星村が遮った。


『昔みたいに、夏音って呼んで…。』


「分かった。か…夏音、あのさ…俺ずっと好きだったよ。それは、今でも変わっていない。夏音がよかったら、俺と付き合って下さい。」


『…翔くん。私も、好きだった。

昔の翔くんも今の翔くんの事も…。』


「夏音、ありがとう。」


『きっと、幼なじみじゃなくても好きになっていたと思うの。』


「夏音…。」


そう言って、俺は抱きしめた。


『翔くん、好き。』


そんな二人を月明かりは優しく照らしていた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ