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昔の記憶
夏音side
私は、何かを忘れている気がする。
そう思ったのは、橘さんとお花見の話をした時から…。
何故、そう思ったのかは分からないけど。
だけど、一つだけ思い出せる事がある。
幼い頃、私は友達と桜ヶ丘で遊んでいた。
そこで、一人の男の子が私に微笑んでくれる。
そこまでは思い出せるのに、その男の子の顔は分からない。
その話を橘さんにしたら、こう言ってくれた。
“無理して思い出す必要はないと思う。
きっと、思い出せる日が来るよ。”と。
いつか思い出せる日が来るまで、この記憶は大切にしておこうと思った私だった。
翔side
久し振りに桜ヶ丘に来た俺は、こう思っていた。
昔の記憶と変わっていないな…と。
今でも、たくさんの桜は咲いているのに人は少ない。
こんなにきれいなんだから、多そうなものなんだが…。
ここまで来る人は少ないのかもしれない。
桜ヶ丘は、普通の人達には分からない場所。
俺と友達と星村とその友達の秘密の場所だもんな。
それが今でも、変わっていない事は嬉しかった。
星村を見ると、あの頃のように桜を見て微笑んでいた。