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お花見

窓の外の桜を見ながら、思った。 


そういえば、今年はお花見もしていなかったな…と。


星村を誘ってみようかな。


廊下を歩いていた星村を見つけて、誘ってみた。


「星村。」


『あっ、橘さん。どうしました?』


「今週の日曜日って、空いてる?」


いきなりすぎたな…と後悔した。


『…あっ、空いてます。』


「俺と、花見に行ってくれないか?」


いきなり、会社の上司に花見なんて誘われて…嫌だよな。


『あっ、是非行きたいですっ!!』


星村の答えは、俺が想像していたものとは全く違った。


「あ…ありがとう。早速だけど、場所はどこにしようか?」


『橘さんのお任せで。』


そうか…。桜がきれいに見える場所。

あっ、あの丘はどうだろう…?


「星村、桜ヶ丘って知ってるか?」


『はい、知ってます。昔、友達とよく遊んでいた場所です。』


「そうなんだ。場所は、そこにしないか?」


『はい。橘さんも、桜ヶ丘を知ってるんですか?』


「ああ、知ってるよ。昔は、あそこの近くに住んでたからな。」


『へぇ、そうなんですか。私も、あの近くに住んでいたんですよ。』


今ので、思い出すきっかけになってくれたら…と思っていたが、駄目だったみたいだ。


「そうなんだ。時間とかは、どうする?」


『私は、何時でも大丈夫です。』


「うーん、どうしようかな。」


『一つ、お願いしても良いですか…?』


「ああ。」


お願いって、何だろう…?


『私、お昼の桜も好きなんですけど、夜の桜も好きなんです。』


「俺も、どっちも好き。」


『出来れば、両方見たいなーなんて…。』


「確かに、良いかもな。そしたら、時間は昼の15時からとかはどうだ?」


『あっ、良いですね。』


「あと、待ち合わせはどうする?」


『桜ヶ丘駅の前は、どうですか?』


「うん。飲み物とか、買っていくよ。」


『はいっ。楽しみにしておきますね♪』


「ああ。遅くなったから、送るよ。」


『大丈夫ですよ。お疲れ様でした。』


「お疲れ。」


星村と別れた後、俺は喜びと悲しみの間にいた。


お花見に一緒に行ってくれるのは、嬉しかった。


だけど、俺の事を完全に忘れている事は悲しかったな。


俺は、自分勝手だ。

お花見に行ってくれるだけで、良いじゃないか…そう自分に言い聞かせたのだった。



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