お隣さん。
放課後、涙くんが家まで送ってってくれた。
「望琉、また明日な!」
「うん!」
わかれのキスをして、家の中に入った。
「ただいま。」
この家には普段誰もいない。
何しろここはマンションだから。
両親は別居してる。私が薬依存症になったばかりの時、親に薬を没収されて家で暴れたら別居させられた。
1人の方が楽なんだけどね。
月に1度電話がかかってくるけど、私は出ない。
声を聞きたくない。
『貴方なんて、死ねばいいのよ……!!』
薬が無くて暴れたあと母親に言われた言葉。
「そうだね、死ねばよかったね。」
未だに根に持ってる。
……でも、今は涙くんが居るから、大丈夫な気がする。
今まで直せなかった物が直せそう。
《ピーンポーン》
インターホンが鳴ったので玄関を開けた。
「望琉ちゃん、今日の晩御飯、どうぞ。」
隣に住む斉藤さん。私が一人暮らしをしてるのを知っていて、毎日晩御飯を作ってくれる。
「斉藤さん……毎日すいません……。」
「いいのよ。学校で疲れているでしょう?だからせめて晩御飯だけでも作って上げたくて。」
斉藤さんは私の家の事情を知ってる。 私が薬依存症なことも、別居してることも。
「ありがとうございます。」
「ふふ、今日はあたしの得意料理だから、暖かいうちに食べてね?」
そう言って斉藤さんは戻っていった。
斉藤さんの得意料理は親子丼。
「いただきます。」
斉藤さんのご飯、いつ食べても美味しい。
暖かくて、涙くんみたい。
食べてるうちにいつも泣いてる。
ここに来て、良かったな。