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前回のあらすじ:レニーたちと別れて船を降りることにしました。これから紳士のおじさんに護衛として雇われて、燃え盛る街に彼の家族を助けに行きます。

今回予告:紳士テルディーノの家族を探して回ります。

「どうしますか、待ち構えられていますが」

 波止場近くまでくると、そこに武装した十数人の集団が待ち構えていた。統一された装備を見るに、どこかの軍隊か騎士なのだろう。


「あれってどこの旗なのかな?」

 エリスが指差したのは、彼らの元にある、青い生地に冠を被った馬の横顔が刺繍された旗だった。


「なぜ……、今さら王家の旗が……」

 この港町を含むグラスランド共和国は、つい百年ほど前までは王国だったそうだ。それが革命により王家は倒され、生まれたばかりの双子の王子と王女以外は処刑された。その王家の家紋だという。


「どういう事態なのかはわからないが、おそらくこの状況は彼らが作り出したものだろう。王権復古のために立ち上がったか。……まだ彼らに捕まるわけにはいかん。時間をかけてでも回り込んで別の場所から上陸しよう」


「このまま上陸しても、あそこにいる者たちを倒して進むことは可能です。今は時間が惜しいので、正面突破を推奨しますよ」

 テルディーノさんが私を疑うような目つきで見る。


「私を守った上で、君たち二人はあそこを突破できると? 仮に君たちがあれらを蹴散らすなり翻弄して道を開けさせるなりできたとしても、必ず増援がやってくるぞ。それでも大丈夫だというのか? 確かに一刻も早く妻と子を探したいが、……雇っておいて悪いが信じられない」


「まっ、おじさんはそうだろうね。……あたしはともかく、こっちのエーナちゃんは一人で三十人以上の野盗を殲滅できるよ。しかも護衛してた商人を守りきった上で」

 エリスが話を盛って語る。まあ、彼に恩を売ろうと思えばできる限りご家族を助け出したい。それを思えばここを突破したほうがいいのは確かだから、いいか。


「ううむ……。信じるぞ?」

「お任せ下さい。あなたの道を遮る者は全て斬り捨てますので、ご自宅までの案内は頼みますよ?」

 信じられないまでも、家族を心配する気持ちが勝ったという感じだ。


 後ろでエリスが微笑んでいる、のだろうか。見た目だけなら微笑んでいると思う。しかし、ここへ来て私のエリスを見る目は完全に信じられなくなっている。が、ついてきてくれたことには心強さと喜びを感じてもいるのだ。むやみに疑うのはやめようと考え直した。




「なんて、ことだ……」


 波の音より炎の盛る音や建物が焼け落ちる轟音の方が大きくなってくると、否が応にもその惨劇が目に飛び込んでくる。波止場に上陸して道に目をやると血まみれの死体がいくつも転がっている。性別も年齢もなく、転がる死体にはどうやったところで拭えないほどの暴力の香りが漂う。


「まさか、テルディーノ・ランストリ氏か!? あなたのご家族はアルス様の命で我々が保護しております! こちらへ来てください!」

 トサカのような飾りのついた兜を身につける偉そうな人が、離れたこちらにも届くよう大声で呼びかけた。信じていいものだろうか?


「判断は任せますが、テルディーノさんの家族が保護されているのはおそらく確かでしょう。彼らにあなたを害する意思があるにしても、魔法使いであるあなたに人質として使えますので」

 一応私見を伝えてみる。


「もしあの人たちが本当に保護のつもりで奥さんと息子さんを確保してるなら、ここを無理矢理突破するのはやめた方がいいよね。だってこの人たちを殺しでもすれば報復されるかもよ?」

 エリスはにこやかにとんでもないことを言う。もう少し言葉を選んだほうがいいと思う。……まあ、私が他人の言動についてとやかく言えることはないけど。


「何をしておられますか! 我々はマナ神教の協力を得ています! あなたたちを害することはありえません!」


「……わかった! 今そちらへ行く!」

 テルディーノさんがこちらを見る。


「マナ神教が関わっているなら、この件を私が知らないはずがない。君たちが本当に正面突破もできるほどの実力があるのなら、あのトサカ付きを生け捕りにしてくれるか?」

 そういうことか。


「問題ありませんよ」

「あたしはおじさんに引っついて守っておくね」



「後ろの二人は私の弟子です。……それにしても、いつの間に王家はマナ神教と繋ぎを得ていたのですかね。共和国は確かにマナ神教の影響が薄いが、このように裏切られるほどではなかったろうに」

 トサカ付きのもとへ小走りに近づいた。護衛と言わなかったのはあまり警戒させないためかな。こういう細かい機転が利くならば、荒事に向いてないということはないと思う。


「それはそうでしょうな。何しろ我が主が極秘で、……何をする!」

 するっとテルディーノさんの脇を抜け、トサカ付きの偉そうなおじさんの首元に短剣を押しあてた。テルディーノさんが充分すぎるほど彼に寄っていてくれたから、ほとんど反応もされなかった。


「動けば掻っ切るぞ!!」

 こんなに声を張り上げて喋るなんて滅多にしないことだ。


「なんだこの女!」

「た、隊長!」

「くそっ! 隊長をお助けしろ!」


「やめろお前ら!」

 斬らないように短剣を肌に食い込ませる。するとトサカ付きが、色めき立ち剣の柄に手を伸ばす部下たちを叱りつけた。


「私の妻と子はどこですか? あなたたちがマナ神教の援助を受けているわけがないんです。もしそうなら、私があなたたちの決起を知らないわけがないので」


「何を言っておられるのです。我々は確かに……」

「無駄よ。膝蹴りは見抜いているから」

 トサカ付きが膝蹴りを繰り出そうと足に力を溜めている。攻撃をしようとするにしても、魔法であれば気配なんてわからないものを。……まあ、私なら事前に勘で気づくとは思うけど。


「……何のことやら」

「テルディーノさん、彼は喋る気がないようです。先程の彼らの反応を見ても、彼らが黒なのにはかわりないので殺してしまいましょう。そして一刻も早く探しに行くべきです」

 この隊長さんは、これを指揮する人間に人質として通用するだろうか。わからない以上連れて行きたくはないし、殺してしまうべきだ。


「うおっ!」

「だめだめー」

 テルディーノさんの驚いたような悲鳴、そして場にそぐわないエリスの抜けた声に、剣戟が響いたことを考えると、きっとテルディーノさんに手を出そうとした奴がいて、エリスに邪魔されたのだろう。今後のためにも、ここはもうやってしまうしかない。


「がっ」

「作戦変更です! 彼らの指揮官を探しますよ!」

 ついに彼の首をかっさばき、残った兵士を……、殺すことにした。どれほどの兵隊がここにいるのかわからないが、街中うじゃうじゃとはいないみたいなので、消せるときに消しておこう。


「隊長!」

「逃がすな!」


「エリス! 頼んだ!」

「がってーん!」


 一応、いつでも手助けできるようにテルディーノさんとエリスからそう離れないように兵士たちを一人一人仕留めていった。隊長がいなくても、相手を囲んで圧するくらいはできるようだが、一人一人の兵士の質はさほどでもなかった。没落王家に従う兵士だというなら、元はただの紛れた一般市民か何かなのだろう。高い防具で着飾ったところで、大したことはないようだった。


「大丈夫ですか」

「怪我なーし問題なーし」

「私はなんともないよ。……思わぬ拾い物だった、……っと、失礼な言い方をしてしまったね」


「どこか、指揮をするのに便利そうな場所は思い当たりますか? 彼らの本陣に押し入って指揮官を捕らえましょう」

 増援を呼びに行くような行動は見られなかったが、あれだけ騒げばじきに敵も駆けつけるだろう。急がなければ。……また全滅させてしまった。一人でも生かしておけば聞き出せたかもしれないのに。


「図書館だろうな。あそこには時計塔が隣接しているし、火事にならないような建物の工夫がされている」

 時計塔……。あった。遠いな。


「急ぎましょう」

 私たちが殺した死体から目を離せていないテルディーノさんを促す。もう遅いかもしれないが、家族の無事を信じるなら急がなければならない。




「カイル……」

 図書館へ向かう途中、遭遇した兵士を蹴散らしたところで、テルディーノさんが道の脇の死体の一つに呼びかけた。知り合いだったのだろう。……そういえば、また一人残し忘れた。


「供養はあとで。今は生きている人間を優先させましょう」

「……ああ」

 疑うのはやめたが、エリスが私に笑顔を向けていたのが気になる。




 図書館の警備が厳重だった。これは正解のようだ。


「なんだ? お前たちは」

「ごめん、死んで」

 なんでもないように歩いて近づき、一人目を仕留める。油断大敵。


「うおっ」

「あんたたち、案外数が少ないよね。あれだけ騒いで、結局まだ二十人くらいしかやってないって、もしかして本隊はもう移動しちゃった?」


 多分この街に彼ら兵士は百人もいないのではないか。もし本当に某家が王権復古を狙っているなら、いずれ治める街をこうまで破壊しないだろう。しかし現実にはこうして焼き討ちにしている。生きている住民は見ていないし、そこら中から血の匂いがする。血の匂いしかしいない。これは仕方がなくやったんだろう。時間を惜しんで、後災を断つための暴力だ。


「まあ、関係ないよね。私たちはただ、テルディーノさんの家族を返してもらうだけだし」

「エーナちゃんクールだね」

 おかしな子だと思っていたけど、今はなんだかエリスといると楽しいな。


 今見えているのが残り七人。ここを拠点としているならば、中にも警備はいるだろう。貴重な本が汚れてしまう。庶民は紙媒体など使えず、魔晶石を再利用しながら情報伝達しているというのに。図書館なんて贅沢な施設がせっかくあるのに街を焼き払うなんてもったいない。まあ、テルディーノさんの言ってる火災耐性が万全なら大丈夫なのかもしれないけど。でも、これからおそらく血で汚してしまう。


「がふっ」

 最後の一人を仕留めた。一人は建物の中に増援を予備に行ったので、もうすぐ追加が来るだろう。


「エーナちゃんがいると、あたしは何にもすることがないね」

 テルディーノさんが今さらながら私たちに引いている。


「テルディーノさん。……いえ、なんでもないです」

 今さら覚悟はできているか、なんて聞いてしまうところだった。家族はすでに死んでいるかもしれないなんて、彼も考えているだろうしここまで避けてきたのに言う意味がない。


 それにしても、四方八方火に包まれているため、熱い。図書館の中も蒸し焼きだろうな。まだ増援も来ないみたいだし、こちらから入っていくしかない。




 外からの見た目の割に大きな建物だ。入ってすぐ広いカウンターがあり、すでに事切れた女性が一人倒れている。飛び散った血が、カウンター正面の本棚と書物にいくらかこびりついていて、この惨劇がわりと早い段階で行われていたのだろうと思わせる。この女性はなぜ逃げようとしなかったんだろう。ここで死んでいるということは、おそらく逃げなかったということだ。ここに押し入られる前に騒ぎにはなっていたはずで、それでもここに残っていた。そういうことではないか。なにかドラマのようなものを感じる。


「会議室が二階にあります。行きましょう」

 テルディーノさんが奥を指差す。見えてはいないが、あちらに階段があるのだろう。


「エリスは後ろを守ってね」

 本棚が横に四列、縦にはたくさん並んでいる。両脇を本棚に挟まれた通路を通るのは危ないので、端の通路を使う。死角が多いのでここは走れない。気配こそ感じないものの、熱気と、まだ少し船酔いが残っているせいでわからないだけかもしれない。用心はしなければ。


「おじさんさ、この建物は火事にならないって言ってたけど、焼け崩れた周りの建物がのしかかってきても大丈夫なの? ここ」

 そういえばそうだ。周りにはそれほど高い建物こそないものの、火に強いだけなら危ないのでは? 本当にここが本陣になっているだろうか?


「問題ないはずです。本は重たいので、それを支えるために一層丈夫になるよう特殊な粉末を壁材に混ぜています。その働きで熱を通さず、欠けたりしません。支柱だって同じ粉末でコーティングされていて、ちょっとやそっとじゃ崩れないはずです。……ここ、外と比べて涼しいでしょう?」

 確かに、出入口付近は熱かったが、少し奥へ入れば秋口らしい温度になった。それにしても本当に贅沢な施設だ。ところどころ転がる死体がなければ住み込んでしまいたい。


「待ち伏せでもされているんですかね、静かすぎるので」

 例えば一番奥の少し広まったスペース、そして一個手前の列。ようやく生きた人間の気配を感じ取った。


 奥から一つ手前の列を通り過ぎるとき、唐突に振り下ろされた剣を躱し、短剣を逆手に持ち替えて思いっきり叩きつけるように振るった。それは兜を貫き、相手の眉間に深々と突き刺さる。やはり防具は高いだけであまり役に立たない。最高級品となれば話は変わってくるのだろうが、そういうのはそこそこの城が立つほど高いのだ。

 剣を振るった兵士の奥にももう一人いて、抜身で構えている。突き立てた短剣をそのまま手放し、今しがた殺した彼を蹴り飛ばして、もう一人に抱えさせた。その隙にその首元を浚う。


「奥にも何人かいる! 囲まれないよう気をつけて!」

「やれ! 回り込んで囲め!」

 エリスに注意を促したのと同時、同じことを指示する号令が飛ぶ。自分は兵士の隠れていた列から隣の通路まで行き、奥の広まったスペースで叫ぶ兵士の群れに突っ込んだ。五人。少ないな。すぐ終わる。

 魔法で先程まで使っていたのと同じ形の短剣を両手に作り出し、五人の間をすり抜けるように舞い、首を刈っていく。なんだか調子が良い。先程まで酔っていたのが嘘のように体が動く。しかし一人仕留めそこねたようだ。血走った瞳で睨みつけながら大上段に剣を振り上げる。その振り上げられた剣の柄にこちらの短剣の柄をぶつけ、振り下ろそうとする勢いを殺し、余った一本で肺と心臓を周りの骨ごと一手で引き裂く。こういう力技で仕留めると気分がいい。首を裂いていても口からゴバっと血が溢れ出し、大量に浴びる。


「片付きました。先へ進みましょう」

「うおっ。……大丈夫なのか?」

 拭いはしたが、頭から血を被ってしまって顔の半分に血を擦りとった跡ができているはずだ。


「ちょっと疲れてきましたが、問題ありません」

「……頼むよ?」




「あの扉の奥が会議室だ」

 テルディーノさんが指した扉の向こうから怒鳴り声が聞こえる。


「誰かいるね」

 エリスも、彼女自身はほとんど敵と打ち合っていないとはいえ、ここまで平静を保てている。動じてなさすぎて少し怖いくらいだ。


「二人はここで待っていてください。事が済めば呼びますので」


 そっと扉に近づく。怒鳴り声の内容は、どうして今さら反抗勢力が出てくる!? なぜさっさと殺せない! などと、おそらく私たちのことに文句を言っているようだ。


「まいりました。……降参ではないですよ」

 どういうことだろう。今の私はちょっとおかしい。なぜこんな冗句を言っているんだろうか。


 扉をほとんど警戒せず開けて、すっと入っていく。三人。一人は波止場にいた隊長さんと同じ、偉そうなトサカを付けた兜を被っている。あとの二人は雰囲気だけは偉そうだが、そこいらの兵士と格好は変わらない。


「なんだお前は! いや、お前か!」

 トサカ付きの隣にいてお叱りを受けていた兵士が叫んだ。


「下にいた人たちは皆殺しにしました。……悲鳴とか聞こえませんでしたか?」

 基本的に首から潰していってるので、そんなに声は上げられていない。それでも騒がしくはあったはずだけど。


「お前たちはなんなんだ? 今さらのこのこと、街が救えるとでも思っているのか?」

 先程まで部屋の外に怒鳴り声が漏れるほど激昂していた人間の声とは思えないほど落ち着いた声色だ。


「テルディーノ氏をご存知ですね? 彼のご家族があなたたちに捕らえられていると聞いたので、取り返しにきました。……ただの傭兵ですよ」


「捕らえられているとは心外な。奥方とご子息は丁重にもてなしておりますとも。テルディーノ氏に伝えたまえ。彼らはアルス様たち本隊に護送されていますとね。だから安心して我々に付いてきていただきたい」


「お咎めなしですか? 本当にあなたたちがテルディーノさんに害意を持っていないなら、私たちは勘違いであなたの同胞を殺して回ったことになる。それなのにそんなに平静を保っていられるなんて、上司としてどうなんでしょう? いたずらに兵を失ったことをアルス某様に咎められたりはしませんか? 私に殺された部下たちはかわいくありませんでしたか? 先程までの怒りようはどこへいきましたか?」

 今までにないほど饒舌だ。レニーと別れて以降、私はおかしくなっている。さっさとトサカ付き以外を殺して、痛めつけてからテルディーノさんの家族の居場所を聞き出せばいいのに。


「貴様!」

 トサカ付きの脇に控える一人が剣の柄に手を伸ばす。苦手ではあるが、テーブルを挟んだ向こうにいるので、短剣というよりナイフのような刃物を作り出し、彼の額にめがけて投擲する。兜で隠れていないぎりぎりのところに突き刺さり、彼はビクッと震えてからその場に倒れた。一瞬の出来事に、残った二人は驚愕している。


「言い忘れてたけど、反抗しないでね」

 二人は完全に萎縮したようだ。


「じゃあ聞くけど、テルディーノさんのご家族は生きている?」

「……ああ」

「ご家族はアルス某様が連れている?」

「ああ。アルス様はこの国の正当な……」

 先程のようにナイフを投げて、もう一人も殺した。どこにいるか、詳しく話そうとするならともかく、関係なさそうなことを言い出したので黙らせたかったのだ。

「関係ないことは喋らないで」

「……わかった」


「アルス様はどこへ向かっている?」

「共和国の現在の首都、オーべスだ」

「……あなた、死にたくない?」

「……死にたくない」

「じゃあ、縛るから縛られて。……入ってきて!!」

 外で待っている二人を呼んだ。


「……もう大丈夫なのかね」

「あれ、殺したの二人だけ? それにしては時間かかってたよね」

 二人だけ。……そういえば、ここへきてからは自虐的な気持ちになっていない。むしろ、どこか晴れ晴れとしている。今までは人を殺すとき、クズな自分を上から見つめているような、不思議な心持ちになったものだけど、今回は等身大で殺しているような気がする。そしてなんだか、……楽しいのだ。

 レニーと別れたことで、どうでもよくなっちゃったのかな。そういえば喪失感がいつの間にかなくなっている。これって自分をごまかしているんだろうか。なんというか、自分が自分じゃないような、あの人形のことを思い出す時もこんな感じだったような。


「どうしたんだい?」

「えっ、なんですか?」

 ぼうっとしていた。いつの間にか、テルディーノさんも話が終わっていたようで、これからどうするか、相談された。


「……とりあえず彼を縛りましょう」

「縛っただけで大丈夫か? 一応彼も軍人だ。自分を傷つけずに縄を切るような魔法が使えるかもしれない」

 そういえば、野盗なんかを相手にするときは気にしないけど、中には私のように刃物の類をパッと作り出せるような輩もいる。滅多にはいないが、いる。自分ができることなのに、すっかり考えから抜け落ちていた。


「……気絶させてくれても構わない。死にたくないからな」

 トサカ付きの発言。


「気絶慣れしてると回復も早いよね」

 すかさずエリスが答えた。指揮官なんだから、そういう訓練を受けていてもおかしくない。


「なら私が魔法で眠らせよう。起こされなければ丸一日は寝ているはずだ」

「そういったこともできるんですか」

 やっぱり詠唱ができる人はいろいろ幅が利くんだな。私みたいに物体の作成に特化して訓練したりするようじゃないと、炎と水を扱う魔法以外は全くできないということがほとんどなのに。


「ちょっと時間はかかるがね」

 こうしてトサカ付きの彼は一命を取りとめた。


念の為に書いておくと、ガールズラブのタグはつけません。そういう話ではないはずです。

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