第一話 変わったこと
201X年 7月
俺はこの時、俺の中学時代は物凄いものになると確信したんだ。
ジリリリリッ━━━
朝、目覚ましの音に起こされる。
この時間まで起きていられることは実に快適なことだと、毎朝実感させられる。
この時間、と言ってもまだ朝の6時前。
でも、これが南野 隼人の日常。
朝から洗濯をして、朝飯をつくる。その後に妹の麻奈美を起こし、朝飯を食わせて学校へ送り出す。それから、脱水まで終わった洗濯物をベランダに干して俺も学校へ向かう。
という、ハードスケジュールを時間の無い朝に行っているのだから、専業主婦もたまげたものであることは確実だ。
ちなみに去年までは登校班の班長をやっていた為起きるのは5時半前。
だから、30分でも多く寝ていられる今のほうが全然楽であることは確実。
中学に入学して変わったのはすごく嬉しかった。
でも中学に入って変わったのはそれくらいだった。
俺は小説や漫画の読み過ぎか、中学という場所に過度な期待を寄せていたらしい。
でも、実際はあまり小学校と変わらなかった。
変わってないところを例としていくつか上げてみる。
制服を着て学校に行く、これは見た目の問題というか、慣れてくると普段着とあまり変わらなくなってくる。それどころか普段着よりも着る回数が多い。学校に慣れた服で行くのは小学校時代と変わらないと言ってもいいと俺は思っている為、これは変わったことにならない。
毎授業事に先生が変わる、これも小学校時代にもあったことだ。交換授業やら実技科目の授業やら、先生が変わる授業というのは珍しくもなんともない、というのが俺の見解だ。その為、変わったことにはならない。
部活がある、これだって俺の場合は帰宅部。変化など皆無と言っていいだろう。
クラスメイトが変わる、これだってほとんど無いに等しい。俺の中学は小学校と隣接していて、ほとんどそこから持ち上がってくる。むしろ中学に入って初めてみる顔なんてクラスに一人いればいいほうだ。実際、俺のクラスには一人しか小学校の違う奴がいない。学年で顔と名前が一致しない奴なんて小学校の違う2、3人と小学校時代から登校拒否という奴ぐらいだろう。これでは変わったとは言わない。
俺は小学生から中学生になるだけで俺の存在が大人になるものだと、思い込んでいたらしい。
電車やバスなどの移動料金が大人に分類されるだけで、大人とは何もかもが違う。
出来る事はたくさんあるのにも関わらず、それを禁止される。それが中学生なんだと、わかった瞬間から俺の世界は色褪せてしまったような錯覚に陥るのだ。
だから俺は世界がどうしたらもっとマシなものになるかを考えて毎日を過ごすしか、俺には残された道はない。