幕間
実乃里の部屋を出てきた律は、欠伸をすると、体をほぐすように腕や肩を軽く回した。
「実乃里は、眠った?」
実乃里の叔母ーー都の問いに。
「ああ、まあな。あれ、自覚はないけど、相当弱ってるね」
「……そう」都は、深々と溜め息をつく。
「しばらくは安静にしてもらわないとな。医者にも言われてるし。んで、俺もしばらくここで寝泊まりするんで」
「……はぁ?」
話の飛躍に、都は眉をひそめる。
「やっぱ心配なんでね。実乃里の『カレシ』としては」
「だってあなた、『カレシ』って言ったって……」
「設定上、だって言いたいんだろ? それじゃダメだな。ホンモノとして扱ってもらわないと。ま、じきにホンモノになるんだけどな」
「……私は、プランB一押しなんだけど」
「そうかぁ? 俺はプランAしか頭にないけどな」
あくまで口調は軽く言われた、その言葉の響きに何を感じたのか、都は律の目を見詰め。律は、都の目をじっと見返す。
「……信じて……任せていいのかしら?」
「ああ」
「……子どもの、ことも?」
「もちろん。もともと、実乃里は俺のだ。ーーっていうか、俺のになるべきだった。ということは、子供だって俺のになるのが当然だろ?」ニヤッと笑う律に。
「ーー理解に苦しむわ」呆れたように返しながら。
でも。もしかしたら、その方がいいのかもしれない……。都は口のなかで、小さく呟いた。