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悪役令嬢筋肉編~ムキムキ☆プリンセス・マッスルHEART〜

作者: ノエ丸
掲載日:2026/06/13

頭空っぽにして読んで下さい。

 

 始めまして私の名前は益荒乙女(ますら おとめ)。どこにでもいる中小企業勤めのOL!

 人と変わった趣味があるといえば――乙女ゲームが好きってことくらいかな?

 あとは筋トレ。100㎏を超えるバーベルを上げ下げするのはとても気持ちいいよね!! 皆もそう思うよね!? 思わない? そう……

 身長は185センチで少し高めで体重はひ・み・つ。そんなどこにでもいる普通の女の子!


 そんな私だけれど――今日、人生最高の日を迎えていた。

 なんと同じ会社のイケメンなうえに仕事もできる同僚の男性から告白されてしまったのだ!

「実は貴女の様な体格の女性が好みだったんだ!」

 そんなドストレートな告白を受けた私は「コイツ正気か?」と思ったけれど、その場で即OK。

 ぶっちゃけこれを逃したら婚期はないと思うから。

 とはいえ、顔もよければ仕事もできる男性に好かれているのはとても気分が良い。

 初めてデッドリフトで200㎏を超えた時と同じ気持ちよさがあるよね!


 だからだろうか――私はあろうことか横断歩道の信号を見るのを忘れていた。


 けたたましく鳴り響くクラクション。

 目の前には一台の自動車が私に向かって来た――!!


 ガシャンッ!


 その音と共に私は中を舞い――アスファルトの上で華麗に受け身を取った。


 ――ペッと血の混じった唾を吐き捨てる。

 口の中を少し切れてしまったようね。危ない危ない。私が鍛えていたからこの程度ですんだものを……


 安堵した――その瞬間。


 パアアアアアアー!! とけたたましく鳴り響くクラクション。


 私の目の前には、大型トラックが迫っていた。



 大きな衝撃を受けた直後、私の意識は途切れてしまった。



 ――――――

 ――――

 ――


「うわあああああああああああっ!!」


 叫び声をあげながら飛び起きた。

 さすがに大型トラックは無理!! 直前に脳裏によぎったものはそれだった。

 心臓がバクバクと脈打つのを感じながら、意識があることに安堵した。


「い、生きてる? は、はぁぁぁぁ~よかった~。さすが私! トラックにひかれても無事とは――ん?」


 あれ? 何かがおかしい?

 声が自分の記憶の中にあるものと違う。やたらと高いし、幼い感じがする。

 それに視界に映る部屋。

 コレも今まで見た事のない造りをしているし、どう見ても病院ではない。

 というかベッドでっか! キングサイズはあるんじゃない!?


 そんな考えが頭の中を駆け巡るも、決定的な違和感を覚えた。


 あれ、視界が――低い? それに……え!? 腕ほっそ!! 私の筋肉たちは!? え、あ、すごい……肌スベスベ。手のひらも奇麗だな~。爪もすごく形がいい。


 そのまま全身をぺたぺたと触りまくり、確信した。

 これは私の体ではない。

 本来の私の体はもっと筋肉に包まれている。

 友人には「北斗の拳のキャラにいそうだよね。あ、モヒカンとかじゅなくて、ラオウとかだから安心してね」と言われる。何を安心しろと。

 そんな友人とのやり取りは今はどうでもいい。


 私は思考を加速させた。


 ……なーんもわからん。自分がやたら小さい女の子になっているということしかわからない。

 ……女の子だよね? よし、無い。女の子だ。


 謎の状況に、うんうん唸っていると――不意にドアが開く音が聞こえてきた。


「おはようございます。お嬢様」cv.千葉繁

「うわあ! ち、千葉さん!?」

「ど、どうなされましたお嬢様!? チバサン……とはなんでしょうか?」cv.千葉繁


 いきなりドアの向こうから現れた執事姿のイケオジの声がcv.千葉繁であることに驚愕した。

 そして同時に、記憶の波が頭の中に押し寄せてくる。


 私はこのイケオジ執事を知っている――!


「ムキムキ☆プリンセス~マッスルHEART~」


 通称ムキプリ。

 私が愛してやまない乙女ゲームに登場する人物だ。


 舞台となるのは、とある異世界。

 そこは筋肉の美しさや大きさが全ての世界。

 争い事や揉め事はボディビルよろしく、ポージング対決によって行われるという製作者の意図が何も読めない狂った世界。


 発売当初は――


「どうした? 運営は疲れてるのか?」

「意味が解らないよ……」

「ポージング対決で……え、なに? 何を競うの??」

「無駄に筋肉の部位とボディビルに詳しくなるのが何か、何かヤダ……」


 そんな感じで色々と言われていた。

 だがカルト的な人気が出ており、乙女ゲーで筋肉が見たいならこれをプレイしろとまで言われるようになったし、勧めると大抵嫌な顔をされる


 もちろん私もハマった。とてもハマった。何回も周回したし、当然CGは全部コンプリート済み。

 目の前にいるイケオジのはだけた執事服から見える腹筋と胸板のCGも当然何度も見た。正直たまらん。エッッッッ!!と思った。

 そんなイケオジが目の前で動いている。


 そして同時に気づく――私が一体誰なのか。


 ムキプリにはもちろん主人公がいる。

 それは光の筋肉繊維を持った少女で――光の筋肉繊維ってなんだよ……その少女が学園内で様々な攻略対象と恋愛をし、時には筋肉を披露するというストーリー。

 そしてこのイケオジ執事が仕えるのは主人公ではない。

 その相手とは――俗にいう悪役令嬢だ。


 悪役令嬢――それは主人公を邪魔する定番キャラ。

 元祖が誰なのかわからないが、とにかく主人公の恋敵としては便利な名称である。

 そして、昨今では悪役令嬢に転生し、破滅フラグを回避する作品が多く存在する。

 まさか私がソレになるとは思ってもいなかった……しかもよりによって、不憫令嬢とは……


 私が転生?したのは物語の悪役令嬢ポジションである。

 カトレア・フォン・ドーピングス。

 ドーピングス家の一人娘。

 美しくも燃える様な紅い髪を持った魅惑の令嬢。

 その美しさは作品でも屈指であり、ぶっちゃけ主人公よりも見た目なら圧倒的に美人な存在だ。

 けれどこの作品は筋肉がものをいう。

 カトレアは…………相手が悪かった。


 この物語の主人公である。

 マリア・ナイスバルク cv.早見沙織


 彼女が化け物すぎるだけなのだ。


 身長190cm。全身を筋肉という名の鎧で身を包んでおり世紀末覇者と見紛うその姿は、ファンの間からはラオウと呼ばれている。


 そんな相手にカトレア嬢の婚約者でもあり、攻略対象の一人である第三王子のレオンが一目惚れしてしまう。

 入学式が終わった次の日の午後、昼食後に中庭で片腕で垂直に倒立をし足を開いているマリア。

 そしてその体には鳥が何羽も留まり、羽を休めていた。

 その様子を見て惚れたのである。


 もうね。アホかと。バカかと。お前の目と脳みそは何で出来ているんだと。筋肉か? なら捨てちまえそんなもの。

 プレイヤーからも。

「おい、それで惚れるのか……もうちょっと、あるだろ。こう――あるだろ!」

「性別が逆なら……いやないな。ないわボケェ!!」

「こんなシーンに有名なイラストレーター様を使うな。あ、鳥は美しいです」

 など、散々な言われようだった。

 もっとも、他のキャラも似たような感じなので惚れたきっかけについては誰もツッコまなくなった。


 そんな感じの主人公なので、カトレア嬢があの手この手で妨害を試みるが――ダメ。ことごとく失敗する。

 階段から突き落とそうとしたシーンなんて、急にカトレア視点に切り替わり「それは巨大な……果てしなく巨大で不動の岩がカトレアの脳裏に映し出された」とか言い出す始末だ。

 一ミリも動かんのよあの女。無駄にアニメーションが差し込まれるので、カトレア嬢がいかに奮闘したのかもプレイヤーには伝わったくらいだ。

 その他にも、三階の窓から植木鉢を落とすも当然の様にキャッチし、平然と三階まで駆け上りカトレア嬢に向かって「落としましたよ」と言う始末。

 それ以外にも色々とイベントはあるのだけれど、どれも効果がなく。

 最終的な断罪イベントでは、周囲からの告発でカトレア嬢は失脚。学園を追われる身となってしまった。

 しかも当の本人のマリアは嫌がらせの告発を聞いてもピンときておらず。何故かカトレア嬢を、やむにやまれぬ事情で学園を去る学友として見送っていた。

「このダンベルを私だと思って下さい」と言って差し出したバーベル(100㎏)を片手で持ってたのは笑った。


 そのせいか本編クリア後の特典として、カトレア嬢が学園を去ったあとに素朴で誠実な青年(cv.花江夏樹)と出会い。かなり良い感じのラブストーリーが繰り広げられるシナリオが存在している。

 プレイヤーからも。

「何でこっちを本編にしない?」

「カトレア……うう、幸せになれてよかったね……」

「筋肉共のことは忘れて幸せにおなり」

「バーベルは捨てておけ」

「悪役令嬢とは…………」

 そんな感じの感想がネットに溢れた。


 ………………あれ? ということは私は断罪されるべきなのか?


 さっきまでマリアに一矢報いようと考えていたが、よくよく考えれば学園を去った後の方が幸せになれるのなら、別に一矢報いる必要はないよね?

 あの脳みそ筋肉共と結ばれるよりも、あの素朴で誠実な笑顔の素敵な青年(cv.花江夏樹)と結ばれるほうが何倍もマシなのでは?

 うおおおおおおおおお! そうと決まればマリアになんて構ってる暇はない!!


 私はベッドから飛び降りるとイケオジの執事に言った。


「じいや! 筋トレの道具を用意なさい!!」


 ◇


 私がこの世界に来てから八年の月日が経った。

 来たるべき断罪イベントに向けて体を鍛えに鍛えた。

 この世界は不思議なことに、女性は幾ら鍛えても体の筋肉が一定の大きさから膨張することがない。

 体が大きくなる事はない――だが、確実に筋肉はついているし、上げれる重量は増している。

 腹筋は見事なシックスパック。

 背中には鬼神を宿すことにも成功したし、大胸筋はプルンプルンのGに成長した。

 私の体は日々――進化し続けている。

 そして今も――


「フンんんんぐああああああああああああっ!!!!」

「いいよ姉さん! もう少しだ! 最後の一回だ! 一気に力を開放して!!」cv蒼井翔太

「があああああああああああっ!!!!」

「――んー! オッケー! ベンチプレス100㎏成功したよ姉さん!!」

「ハァ……ハァ……と、当然よ……私はカトレア。カトレア・フォン・ドーピングスですもの……」


 やった。やってやった!! 学園に入学前にベンチプレス100㎏を達成できた!!

 生前の私なら120はいけたけど、この世界ではこれが限界……そう、限界。今は――ね。


「さすがは姉さん! 僕も姉さんみたいに100㎏越えてみたいよ!」

「ふふ、貴方ならきっとすぐよ」


 突然現れた私を姉と慕うこの子は、攻略対象の一人で名をアルフォンスという。

 私――カトレアの父がある日突然「戦友の忘れ形見だ」とか言って養子に引き取った子だ。

 別にお父様は戦争に出ていた。という事実はない。

 だからこそお母様と一緒に何の戦友だとガン詰めした結果。

 お母様とは違う、別の女性を取り合った時にポージング対決をした幼馴染であると判明した。


 それを聞いたお母様はショックを受けた――なんてこともなく。

「ああ、あの二人の息子なのね。ならいいわ。受け入れます」と納得していた。

 私が知らない物語が繰り広げられていたのだろう。

 ゲームではその辺の話は何も語らていなかったので私も初めて知ることとなった。

 そう思うと、この世界は本当にゲームの中の世界なのかと疑わずにはいられなかった。

 もしかしたら、ゲームに似た別の世界なのではないかと……そう思う時がある。


 ……別に思うだけで、だから何だって感じ。

 だって今が! すごく! 楽しいから!!

 筋トレ楽しー!!!!!!!!

 働かずに四六時中全身の筋肉を傷めつけられる何て夢の様!!

 しかも料理も異世界なのか知らないけど、全ての食材が筋肉に良い栄養しかないとかいうぶっ壊れっぷり。

 甘いお菓子を食べてもなんか知らないけど全身の筋肉が喜ぶのを感じる。

 ホントこのゲームの制作陣は頭がイカレている(誉め言葉)


 そんなわけで私はカトレアとしての第二の人生をそれなりに謳歌していた。


 因みに、実はカトレアは各攻略キャラの幼少期にそれなりに接点があったりする。

 当然だよね。第三王子と婚約しているんだし、それなりの地位の人物たちとは接点が生まれる。


 まずは義理の弟であるアルフォンス。

 私は愛称でアルと呼んでいるので、今後はそう呼ぶことにする。

 アルは寂しがっていた。

 無理もない。両親を二人同時に失ってしまったのだから……本来なら親の愛情を一身に受ける年齢。

 だがその両親はもうこの世に存在せず、甘えるべき相手がいない。


 だから私はアルを甘やかした。

 もう自分の兄妹が生んだ甥っ子を愛でる様に甘やかしたが、同時に厳しくするところは厳しく接し、厳格なる姉としてアルと共に幼少期を過ごした。

 もちろんトレーニングの時は甘えた考えなど一切許さぬ。

 まだ限界は来ていないバーベルを持て。ほらほらラスト一回! 力を振り絞って!! 泣くな! 男だろ!!


 そのかいもあってかアルは好青年に育ったし、声も三瓶由布子から蒼井翔太に進化した。


 その頃には、他の攻略対象キャラ全員の悩みも軒並み解決できていた。


 婚約者である王子は、上の二人の王子との確執に悩んでいたが、グダグダうるさかったので筋トレさせた。

 この世界は筋肉がものをいう世界なのだから、鍛える分にはなんの問題もない。

 おらさっさとバーベルを上げ下げしなさい! まだまだいけるいける! 姿勢悪いよー、そんなんじゃ腰やっちゃうよー。


 結果。王子は吹っ切れたようで上の二人よりも更に鍛え上げて王座をとると言い出した。


「その時は――君に隣にいてほしい」cv.緑川光


 緑川光の声でそう言われたけど、お前片手で倒立してる女に一目惚れするからな? 王座についても隣にいるのはその女だ。

 さすがにそう返すことはせず、微笑みながら適当に頷いた。


 ――――――

 ――――

 ――


 そして月日は流れ――


 いよいよゲーム本編開始の瞬間が訪れた。


 入学式での新入生代表として、私とレオンの二人で挨拶をすることになった。

 入学の際に試験があったので、その試験の結果。上位二人が私とレオンだっただけのこと。

 別にコネとかではない。この学園はその辺はシビアであるので、完全に実力である。疑いの眼差しはやめてもらいたい。


 レオンが新入生代表として挨拶をしている傍ら。

 私はこの物語の主人公であるマリアを探していた。


 そう――探していたのだ。


 本来なら他の生徒たちよりも頭が二つほど飛び抜けている彼女が見つからない。

 内心かなり焦っている。

 まさか入学していない? そんな考えが浮かんだくらいだ。

 記憶を振り絞り、イベントCGの視点からマリアの位置を絞りだしていた。


 そう――恐らくあの位置。あの辺にマリアがいるはず。


 そう目星を付けた場所に世紀末覇者のような女はいない。

 レオンから数歩下がった位置に立っているので、上手く見えずにいた。

 そしてレオンの挨拶が終わり――私の番になった。


 レオンと場所を入れ替え、壇上に上がる。


 入学式を行っている体育館的なホールの全体がようやく見えた。


 適当に入学に際してのあれやこれやを喋っている間に、マリアを探す。


 そして見つけた。


 そうだ。


 イベントCGではあの位置にマリアが居た。


 そのマリアが居た場所。


 そこには一人の〝可憐な少女〟が座っていた。


 輝くようなストレートの金髪に陶器のような白い肌。

 痩せているわけではないが、健康的なその体は少し力を入れれば折れてしまいそうなほど華奢だ。

 誰もが思うだろう。

「ああ、この子を守ってあげねば」――と。


 そんなマリアの姿を見た私は心の中で叫んだ。



 エクストラハードトレーニングモードだこれええええええええええええええええええ!!!!!!



 説明しよう――エクストラハードトレーニングとは。

 この作品は攻略難易度でいえばベリーイージーな部類の乙女ゲームである。

 ゲームのシステムとして、物語を進めるには攻略対象と仲良くなるための選択肢を選ぶ必要がある。


 好感度が上がる正解の選択肢。

 好感度が下がる外れの選択肢。

 好感度が変動しない選択肢。


 基本はこの三つの選択肢がある。

 だがこの作品には「ポージングをする」という第四の選択肢が存在する。

 その選択肢を選ぶと、攻略対象同士がかなり険悪な雰囲気であろうとも。


「……チッ。お前がそこまでするなら許してやるよ」

「全く。貴女と言う人は、僕の想像を超えますね」


 と言った感じで何故か好感度も上がり場が丸く収まる。なんで?

 なので攻略するだけならポージングをしてれば問題ない。

 ようは主人公がポージングするだけで攻略対象(アイツら)は満足するのだから。


 その結果プレイヤーたちから難易度に対するブーイングが公式へ相次いだ。

 それを踏まえて公式はある日突然、告知なしのアップデートを行った。

 それがこの「エクストラハードトレーニングモード」である。


 内容はいたってシンプル。

 主人公であるマリアをプレイヤーが操作して鍛えるというもの。

 そしてこのモードでのみ、カトレアは真の意味で悪役令嬢と化す……

 それは何故か。

 先で述べた様にカトレアのマリアへの妨害は健在で、この可愛らしいマリアを階段から突き落とすし、花瓶を頭の上に落としてしまう。

 そうなるとどうなるか。


 マリアが死ぬ。


 いやいや、冗談抜きでマリアが死んで即ゲームオーバーとなってしまう。

 階段から突き落とすと全身の骨が折れて死んだとログが流れ。

 花瓶を頭に落とすとそのまま全身の骨が粉々に砕け散ったとログが流れる。

 基本何かしらの妨害を行われると全身の骨が砕け散って死ぬ。

 なので妨害を回避するためには、イベントが起きるまでに一定水準以上に体を鍛えておかなければいけない。


 そのせいで攻略WIKIには本編の攻略よりも、効率的なトレーニングメニューと食事内容が大半を占めている。

 攻略WIKIを見た時は「私は一体何を調べているんだろう」と思ってしまうほどに現実でも使えるメニューが記載されていた。

 正直滅茶苦茶参考になりました。

 そんなわけで、今この瞬間に、この世界の難易度が跳ね上がった。

 壇上で入学の挨拶を述べながらも、頭の中では叫び続けていた。


 ど、どうする? 悪役令嬢に徹するにしてもマリアが育っていなくては私が文字通り断罪されてしまう。

 さすがに学友を一人殺してしまっては、例のハッピー断罪エンドを気持ちよく迎えることはできない。


 ……………………よくよく考えれば、無理に悪役令嬢ムーブをする必要性ないよね? だって私がマリアの妨害をしなければいいだけなんだし。

 そうと決まれば今後の方針は決まった。


 私は――彼女を影から見守り、断罪エンドを迎える!!


 ◇


 入学式も無事に終わり。

 各々のクラスに行き、自己紹介が始まった。

 当然のように主人公であるマリアと同じクラスになり、婚約者であるレオンハルトと他の攻略対象キャラも同じクラスとなった。


「え……と、あの……マ、マリア・ナイスバルク……です」(cv.早見沙織)


 なんて素敵な声。

 か細くも可憐で、まるで早見沙織の様なその声に、私は心の中でニッコリと微笑んだ。

 ディ・モールト・ベネ(非常に良い)。Excellent。この世に舞い降りた天使。私が守護(しゅご)らねば。

 心の中で数多の賛辞を贈る。


 実際、エクストラハードトレーニングモードのマリアはめちゃくちゃ可愛い。

 ムキプリの唯一の癒しと言っても過言ではないし、人気投票はブッチギリのダブルスコアで一位に君臨する。因みに二位はカトレア。

 こんな可憐な少女を階段から突き落としたり、頭に花瓶を落とすなんて非道を働く輩がいるらしい。私のことだけども。

 まだ起こってもいない先の未来の出来事を気にしていては仕方がない。


「カトレア・フォン・ドーピングスと申します。もうご存じの方もいらっしゃるとは存じますが、以後お見知りおきを」


 華麗に自己紹介を終え、チラリとマリアを見ると彼女は俯いていた。

 マリアは引っ込み思案で人と話すのが苦手という設定なので、この行動も想定内。

 本来のシナリオでは腕を組んで目を瞑っている。

 私は陰ながら彼女を見守るとしましょう。


 ◇


 さっそく次の日に例のイベントが発生する中庭へと足を向ける。

 一緒に昼食を食べたいと喚く攻略対象たちを撒き、一足先に中庭の茂みの中に身を伏して隠れる。

 しばらくすると、マリアがフラフラ~っとやって来ると、中庭にある大きな木の根元へ腰を下ろした。


 ランチバックからサンドイッチを取り出し食べるその姿は、まるで小動物のように愛くるしく守護りたくなるものだった。

 小さいお口で二つのサンドイッチを時間を掛けて食べ終わると、彼女の周りに鳥やリスといった小さな動物たちが集まり始めた。

 マリアはパンの耳を小さく千切ると掌にのせ、動物たちへ食べさせていた。


 その光景はまるでどこぞの宗教画のように美しいものだった。


「――え、天使?」


 思わずそう口にしてしまうほどの光景。

 そんな私の声が聞こえたのか、マリアは辺りをキョロキョロと見回す。

 やべっ。とすぐさま地面へより這いつくばるように伏せ、息を殺す。

 マリアもすぐに首を傾げ気のせいか、と言いたげに視線を動物たちへと戻した。


 そのまましばし時間が流れ、お目当てのレオンハルトが中庭の向こう側に姿を現した。

 レオンハルトがジッとマリアを見る。

 よしよし、そのまま恋に落ちるんだ……


 レオンハルトはプイッと顔を反らすと、そのまま歩き去ってしまった。


 ……あれ? 本来はこの後マリアに声をかけるはずなのに。

 このイベントはどの攻略対象であっても一番最初に発生する強制イベントで、マリアとレオンハルトが知り合う大事なシーンだ。

 なのに当のレオンハルトはそのままどこかへ行ってしまった。

 地面に這いつくばったまま頭に?マークを浮かべる。

 NaNaNaNa なぜ?なぜ?WHY? 頭の中で点と点を結んでも、はなまる解決するような答えは思い浮かばなかった。


 必死にレオンハルトがマリアに一目惚れしなかった原因を考えている間に、いつの間にかマリアもいなくなっていた。

 誰もいなくなった中庭を出て、とりあえずレオンハルトに事の真相を確かめに行く。


「え、マリアさん? あー、たしかにさっき中庭で見かけたけど……別に何も、ただ動物に好かれる子なんだなとは思ったけど」


 思ったよりも印象に残っていない? あんな可憐な女の子を前にしてときめきすらしないのかコイツ。正気か?

「夕食でも一緒にどうかな」と言っているレオンハルトを無視して、私は走り出した。

 こうしちゃいられない。もしかしたら私が気付いていない謎のフラグが発生しているのかもしれない。

 そうと決まればマリアを観察しながら断罪エンドへの新たなチャートを組むしかない!

 まっててね! 私の素朴で誠実な笑顔の素敵な青年(cv.花江夏樹)!!


 ◇


 ……アカン。


 あれから一週間ほどマリアを観察した結果、一向に筋トレを始める気配がない。

 エクストラハードトレーニングモードでは、最初の強制イベント等の関係で二日目の夕方から筋トレと適切な食事を開始しなくてはいけない。

 だがもう七日もマリアは攻略対象を無視して動物たちと戯れている。

 正直その姿は可愛いので問題ないが、筋肉をつけるという意味では問題しかない。

 七日の遅れを取り戻すにはここから先は一切の遊びが許されないほどのギチギチにスケジュールを組む必要性がある。


 クソッ! どうする……どうするよ私!? 影から見守ると誓った以上過度な接触はあまりしたくない。

 したくないのだが、このままではマリアが死んでしまう可能性がある。

 ならばどうするか……仕方がない。仕方がないのだ。


 私は教室の隅にちょこんと座るマリアに声をかけた。


「マリア・ナイスバルクさん」

「――っ! は、はい」

「貴女、筋肉に興味はおありかしら?」

「筋肉……ですか?」


 我ながら「何言ってんだコイツ」と言いそうな言葉を口走ってしまった。

 とはいえ、今は少しでも時間が惜しい。

 一週間も無駄な時間を過ごしてしまったのだ、最短距離を最高速で駆け抜ける必要がある。

 これから私がマリアにするのはノーマルトレーニングではなく全てパーフェクトトレーニングなのだから!


「えと……興味は、あり、ます。でも、その……」


 目を伏せモジモジする姿も可愛い。

 えっ……凄い可愛い。


 いやいやいやいや。

 いくら可愛くとも、今はその態度を肯定するわけにはいかない。

 なので私はマリアに手を差し出し、こう告げた。


「もしも、自分の意思で筋肉を鍛えたいというのなら――私についてきなさい。私が貴女を一人前のマッスルに鍛えあげると約束するわ」


 一人前のマッスルってなに? 自分でも何を言っているのか分からなくなってしまっている。

 それでも私はマリアを真っ直ぐ見つめた。

 なぜそうしたのか、それは彼女の瞳からあふれ出る光のような炎を見たからだ。

 彼女ならやれる、と――そう確信できた。


 マリアは私が差し出した手を力強く握り、こう言った。


「私を……私を、一人前のマッスルにして下さい!!」

「――ええ、よろしくてよ!!」



 ◇


 そして月日は流れ――一年度の学期末にある、一年間お疲れ様的なパーティーが開催された。


 私は自室でメイドたちの手によって着飾られた黒いマーメイドドレスを身に纏い、一人物思いにふけていた。

 この一年間は、がむしゃらにマリアと共に筋トレに励んだ。


 入学当初は可憐で華奢な彼女だったが、今ではベンチプレスが40㎏も上がるようになっていた。因みに私は110㎏まで進化した。

 腹筋だって薄っすらと割れてきている。私はキレイなシックスパッドだけれど。

 彼女は私が指示したメニューを完遂した。もっとも私はその倍のメニューをこなしていたのだけど……


 さっきから、ちょいちょいマウントをとるような考えが頭に浮かんでしまう。

 仕方ないじゃない、私もトレーニーですもの。

 成果を誰かに自慢したっていいじゃない。

 ……今は自分自身のことよりも、マリアのことを考えなくてはいけない。


 この一年間――私はマリアを鍛えるのに夢中だった。

 どれくらい夢中かというと、マリアへの妨害イベントが軒並み発生しなかった。

 階段で突き落とされるイベントも、頭に花瓶が落下してくるイベントも起きなかった。

 他の攻略対象との出会いのイベントも、心なしか全員凄いあっさりしていた気がする。

 マリア自身も誰かと恋愛――という感じがしないし、攻略対象たちが私とマリアとでは、接する態度があからさまに違うのだ。


 ……まあ過ぎてしまったことはどうでもいいわね。

 そんなことよりもパーティーの前日、私はある事実に気づいたのでかなり落ち込んでいる。


 それは――マリアの妨害をしていないので、断罪イベントが起きない可能性があるということ!!


 そうなるとまずい。

 私の素朴で誠実な笑顔の素敵な青年(cv.花江夏樹)とのイチャラブ後日談が消えてしまう。

 どうにかして断罪イベントを発生させなくては……


 アレコレと悩んだ結果――何も答えは出なかった。

 正直お手上げ。なーんも思い浮かばない。

 なのでパーティーが終わるまで様子を見ることにした。

 もしかしたら……! という淡い可能性に賭けるしかないのだ。


 ◇


 パーティーは何の問題もなく進み、そろそろお開きに差し掛かっていた。


 まずいまずいまずいまず全然断罪される気配がない……早く何か手を打たなければと思っていた矢先に、パーティー会場の一角が騒めき立つのを感じた。


 そして、何やら三人のモブ令嬢が喚き始めた。


「私たちは――この場でカトレア様の罪を告発いたします!」


 しゃあっ! ktkr!!


 ……いつの間にか私は罪を犯してしまっていたようだった。

 正直、心当たりはすごくある。

 筋トレ用の機械を壊してしまったのを黙っていたことだろうか?

 それとも、国家転覆を企む集団をたまたま見つけて全員半殺しにしたことだろうか?

 直近だとこれくらいだけれど、それ以外だと……あ、待って……たしか偽プロテインを売っていた商人を潰した気もする。

 うーん…………だめだ、心当たりが多すぎてどれか一つに絞り切れない。


 なのでモブ令嬢たちの言い分を黙って聞くことにした。

 やぶ蛇を突いて変な誤解を生む必要もないもの。


「私たちは見ました! カトレア様が階段の上からマリアさんを押している姿を!」

 少なくとも私の記憶ではそんなことはしていない。

「花瓶を三階から落とすのも見ました!」

 花瓶も出来るだけ触らないようにしていたんだよね。

「マリアさんが泣いているのに筋トレを強要していたことも!」

 それは本当。いや本当にごめんね?


「「「以上をもって、私たちはカトレア・フォン・ドーピングスを学園から追放することを願います!!」」」


 …………おいおいおいおい。何だこの娘たちは。何て完璧なアシスト。これはもう私の断罪からの追放待ったなしですわ!


 内心テンション爆上がりしている私を尻目に、攻略対象たちが声をあげる。


「ちょっと待て。カトレアがマリアを階段から突き落とす? ありえないね。泣かせてたのは事実だが」

「ああそうだ。手塩にかけて育てたんだ。自分の手で台無しにするような女じゃねえよ。泣かせてたけども」

「貴女方が見たというカトレアは本当に本人だったのですか? 泣いていたのは本当ですけど」

「……マリアさんが泣きながら筋トレをしていたのは事実だが、カトレアがマリアさんを傷つけるようなことはしない!」

「そもそも貴女たちの告発は事実か? もしも、虚偽ならばしかるべき処置が必要となる。泣かせてたこと以外は」


 なんか攻略対象たちからの評価高くない? なんで? この一年間ほとんどマリアとしか喋ってないよ? 泣かせてたのは事実だけれども。

 攻略対象たちの謎の信頼感を疑問に思う私の目の前に、一人の人物――マリア本人が躍り出る。


「お待ちください! 確かに筋トレで泣かされましたが……私はカトレア様に感謝することはあれど、恨みに思ったことはありません! 泣いたのも私が弱かったからなんです!!」

「…………泣かせてごめんなさいね?」

「いえ! お気になさらず!」


 うーん、もしかして厳しくしすぎた? 反省はするけれども、筋トレをする以上は甘い考えは捨ててもらいたい。

 とはいえ、モブな人たちが私を断罪してくれるのなら乗るしかない。このビッグウェーブに。

 それにしても……これが物語の強制力というやつなのだろうか。

 全く身に覚えがないのに、なぜ彼女たちはこんなに自信満々なのだろうか……

 細かいことは後回しにするとして、形だけでも観念した風を装おい、マリアをやんわりと押し退ける。


「いいのよマリア。あの者たちの言っていることは多分真実よ。身に覚えはないけれど」

「な、なにを言っているんですか! 不当な扱いを受けているというのに、黙って受け入れるんですか!?」


 なんて優しくて良い子なのだろうか。

 でも今はその優しさを私に向けないでほしい。


「ホント。いいのよ? 無理しなくて。私は甘んじて罰を受け入れるつもりよ?」


 ここを逃せば私――カトレアとしてのTrue Endは一生迎えることができなくなる。


「……カトレア様。いえ、カトレアお姉様!! 私は貴女に感謝しているのです。生まれつき病弱で、華奢な体だった私をここまで鍛え上げて下さった。私は貴女と出逢えたからここまでこれた。貴女がいたからこそ今の私がいるのです! もし――もしも、貴女がいわれのない罪を背負うというのなら、私はそれを全力で止めてみせる!」


 そう言ってマリアは身に着けたドレスを脱ぎ捨てた。


 あまりにも突拍子もない行動に度肝を抜かれた私の目に映った物は――


 白いビキニだった。


 突然あらわになったその肉体に、私は驚いた。


 その肉体は見事に仕上がっていたからだ。

 私の記憶の中のマリアの筋肉よりもハッキリとその体に浮き出ていた。


 ここ数日は学期末のパーティーの準備等で忙しく、マリアに対して付きっきりでトレーニングを行えていなかった。

 指示は出していたが、ここまで見事な仕上がりになるとは思ってもいなかった。

 だからこそ私は今のマリアを見て、素直に賞賛した。


「マリア……見事にキレてるわね。今の貴女ならウィールマリアをぶっ壊せるわ」

「ウォール……え? なんで私を??」

「今のは気にしなくていいわ」


 マリアがドレスを脱ぎ捨て、ビキニを晒した。

 その事実に私は心を決めた。


 そうね。そうよね……貴女も一人の女ですもの。

 己の我儘を押し通すならば、それ以外の方法はないわよね。


 私は自身のドレスを脱ぎ捨て――


 黒色の勝負ビキニを晒した。


 いつぞや説明したように、この世界の争い事はボディービルのような形式をとって争う。

 互いの筋肉を見せ合い、その美しさ、力強さによって勝敗を決める。

 もうほんと頭がおかしくなりそうな世界だけど、逆にシンプルでいい気もしてきた。


 マリアが言った。


「お姉様。私が勝ったら、私の側にずっといてください!!」

「……………………よろしくてよ!」


 私は承諾するしかなかった。


 なぜかって? そんなもの決まっている。


 正面切ってケンカを売られたのだ。


 逃 げ る わ け が な い 。


 もちろん煙に巻いてうやむやにする気もない。

 あるのは完全無欠の勝利のみ。

 向かって来るのなら打ち砕く。

 それが我がドーピングス家の家訓でもある。


 舐めやがって……今まで手塩にかけて育ててきたというのに噛みつくなんて。


 ディ・モールト・ベネ(非常に良い)。Excellent。非常によろしい。この私に面と向かって挑むまでに強くなったのね。

 よろしい――私という名の敗北をその身に刻んであげましょう。


 勝負ビキニを着た二人の女が向かい合う。


 あれだけの啖呵を切ったのだ。

 どう出るのか様子を見る為に無言でマリアの出方を伺った。

 そんな私の態度を汲み取ったのか、マリアが動く――


「……ふー。はぁぁぁぁ……! ハアッ!!!!」


 マリアは身体をやや前傾にし、腕で円を描き、抱え込むようにしたポージングをした。


 ――モスト・マスキュラー


 それは首の横の僧帽筋や肩の大きさ、腕の太さを強調し、最も力強さを表すポーズ。


 そのポージングを見た私は、疑問に思った。

 なぜ力強さを表すポージングを?  

 たしかにマリアの筋肉は仕上がっている。

 仕上がってはいるが、それは普段のマリアを見た上での感想だ。

 普段のマリアは、腕と肩の筋肉が特別強調しているわけではない。



 だけれど――


 そのポージングを見た私は、怖気づいてしまった。


 な、何このポージングは? ただのモスト・マスキュラーではない。

 本能で、いや、魂でそう感じてしまう。


 ありえない。


 心が屈服してしまいそうになっている。


 ……まさか、これが光の筋肉の力だというの?

 たしかにマリアの体がほのかに輝いてる。

 …………なんで輝いてんの? オイルが塗られているわけではないのに。


 思わず足が後ずさってしまった。


 負ける――


 そう心で思ってしまった瞬間――


 私の大胸筋が動いた。

 (何をしているのカトレア)


「へ、大胸筋(ヘレナ)……」


 ビクンと大胸筋(ヘレナ)が躍動し、そう告げる。


 ヒラメ筋(リリアナ)前脛骨筋(ミネルヴァ)が踏ん張り告げる。

(臆したかカトレア)

(私たちがいるじゃない)


 そして全身の筋肉が私に呼びかける。

(光の筋肉に負けるな!)

(君の力は仮初かい?)

(くじけそうな時はたよってね?)


 ああ、私の胸鎖乳突筋(アリシア)僧帽筋(ベアトリス)三角筋(セレナ)棘上筋(ディアナ)棘下筋(エレノア)小円筋(フェリシア)肩甲下筋(グレイス)大胸筋(ヘレナ)小胸筋(イザベラ)広背筋(ジュリア)脊柱起立筋(カタリナ)菱形筋(ルシア)大円筋(マーリン)腹直筋(ナタリア)外腹斜筋(オリヴィア)内腹斜筋(パトリシア)腹横筋(クレア)上腕二頭筋(ローザ)上腕三頭筋(ソフィア)上腕筋(テレサ)腕橈骨筋(ウルスラ)前腕屈筋群(ヴァレリー)前腕伸筋群(ウェンディ)大臀筋(クセニア)中臀筋(ユリア)小臀筋(ゾーイ)大腿四頭筋(アメリア)大腿直筋(ブリジット)外側広筋(セシリア)内側広筋(ドロシー)中間広筋(エヴリン)ハムストリングス(フローラ)大腿二頭筋(ジゼル)半腱様筋(ハンナ)半膜様筋(アイリス)内転筋群(ジョセフィーヌ)腓腹筋(カレン)ヒラメ筋(リリアナ)前脛骨筋(ミネルヴァ)


 私の筋肉たち……ともに苦楽を共にし、鍛え合った仲間たち(かぞく)よ。


 光の筋肉が何だ。


 私には、私の筋肉たちがいる。


 なめるなよ。


 一歩踏み出し――吠える。


「私はカトレア。カトレア・フォン・ドーピングス! 小娘風情の力に屈するほどやわじゃない!!」


 腰を捻り、上体を後ろへ向ける。

 ギリギリとまるで弓矢の弦を引くように引き絞り――解き放つ。


「はい! サイドチェストォォォオオオオオオオオ!!!!」


 その一撃(ポージング)はまるで大砲のようにパーティー会場を撃ち抜いた。

 私がポーズを決めた瞬間。

 マリアの周囲にいる人間は吹き飛び、壁や床に叩き付けられた。

 だがそんな中でも、マリアだけはその場に留まった。


 モスト・マスキュラーは弱弱しいほどに縮こまっているものの辛うじてその形を保っている。


 その姿に、私は少なからずの落胆を覚えた。


 貴女も……私と対等に渡り合えないのね。


 そんな思いが心を過った。

 私は力を付け過ぎたのだ。

 たとえ相手が男であろうとも、今の私には敵わない。

 それほどまでに強くなってしまったのだから。


 目を伏せ――次で終わらせてあげよう。

 そんなことを思いながら、腕を持ち上げ、力拳を作り、ポージングする。


 フロント・ダブルバイセップス。


 全身の筋肉を余すことなく見せつけるポーズ。

 それは広範囲への無差別攻撃に等しいポージング。

 私の後ろに控えていた攻略対象たちですらその身を大きく仰け反らし、その場に倒れる程の威力。

 周囲にいたモブたちは余すことなく壁へ叩き付けられた。


 ああ、やっぱりそうだ。

 私に敵う者などいない。


 落胆と後悔が入り混じる中、全身の筋肉の力を抜き。

 正面を見据えた。


 そこには――

 握る両の拳や、唇の端から血を垂らしたマリアが立っていた。


「お……ねえ、さま」


 マリアが絞り出すように声を出した。


「この、程……度です……か?」


 今にも倒れそうなマリアは続けた。


「私が……! 目指した貴女はこんなものじゃない! もっと! もっと気高く美しい! 慈悲などない。完全無欠の貴女でなければいけない! 私との……私との勝負に手を抜くんじゃあない! こい! カトレア!!」


 マリアは自身の胸を叩き言った。


「私はまだ生きている!! 生ぬるいポージングをするな!!!!」





 ああ――そうね。

 私は何て事をしてしまったのだろう。

 手塩にかけたマリアに何を言わせているのだろうか。

 最低限の礼儀もなさぬまま、何を落胆していたのだろうか。

 戦うと決めたのなら最初から最後まで全力で。

 今までそうしてきたというのに……情に絆されてしまったのだろうか?

 いや違う。


 私の覚悟が足りなかった。


 やるのなら誰であろうと、一切の情け容赦無く、一木一草討ち滅ぼす。

 私は悪役令嬢――カトレア・フォン・ドーピングスなのだから。


 満身創痍のマリアに、トドメを指すべく構える。


 その時――


「待ってくれ姉さん!!」


 アルがパーティー会場へと現れた。


 突然の義弟の登場に、私は混乱した。

 アルは一つ下の学年なので、私たちのパーティーには参加できない。

 参加できないのだが、マリアとの勝負に水を差したのはいただけない。


「アル。邪魔をしないで」

「な、なんでマリアさんと争ってんのさ!? 姉さん、とりあえず僕の話を聞いてくれ!」

「嫌よ。私とマリアの邪魔をするのなら――アル、弟である貴方とて容赦しないわよ?」

「違う違う! 僕の話を聞いてよ! 姉さんに冤罪をかけようとしている奴の正体がわかったんだ!」


 …………冤罪? 冤罪、えんざい……つまり私に無実の罪を着せようとしているということ? え、誰が? いや、それは例の三人のモブ令嬢か。

 ……わからん。ちょっと考えたけどそれ以外の人物が思い浮かばない。

 ここは素直に聞いてみよう。


「ちなみにそれは誰なの?」

「あの女だよ。姉さん!」


 そう言ってアルは一人の女を指差した。


「ステロイド伯爵が娘。コートリア・フォン・ステロイド!」


 アルが凶弾した女はテーブルの下から姿を現し、こう言った。


「あーあ、折角カトレアを始末できると思ったのにな~。君のせいで台無しじゃん」


 ……


 …………


 ……………………だ、だれ? あ、ヤッベマシで覚えてない。

 え? ステロイド伯爵? 名前のゴロは滅茶苦茶いいのに覚えがない。

 ステロイド……ステロイド……くっそ、喉まで出かかっているのに出て来ない!

 誰なの!? ちょっと攻略WIKI見てくる!!


「いったいどこで計画が漏れたの?」

「君が思っている以上にドーピングス家は優秀なのさ。君の家に紛れ込ませた諜報員が全てを報告してくれたよ」


 諜報員? え、何それ私知らない。


 混乱している私を他所に何か勝手に話を進めるアルフォンス。


「君たちステロイド家は、帝国と手を組みこの国を乗っ取ろうとしているね?」

「証拠もないのにそんなこと言われてもねぇ」

「白を切っても無駄だよ。もうすでに陛下へ報告は済んでいるからね。それに衛兵がこの会場を包囲しているから、君に逃げ場はないよ」


 私の知らない所でそんな騒動が起きていたなんて……なぜアルとお父様は教えてくれなかったんだろうか。お姉ちゃん悲しい!


「アル。何でそんな大事な事を黙っていたの? 教えてくれたなら直接乗り込んで締め上げたというのに」

「そういうところだよ姉さん……」


 どういうところ?


 首を傾げる私に対して、アルはヤレヤレと肩を落とす。

 そんな私たちのやり取りを見ていたコートリアが声をあげる。


「——チッ! ああそうですか! ならコチラも最終手段を取らせてもらうわね!」


 そう言って懐からペン型の注射器を取り出す。


「これは我がステロイド家に伝わる一時的に筋肉を増幅する薬よ。これを使えばいくらカトレアであろうとひとたまりもないわ!」


 コートリアは自身の首筋にペン型の注射器を押し当て、中身を注入した。

 すると、全身の血管が浮き出ると共に、筋肉が肥大化し始めた。

 おおよそ人体が出してはいけないような音を立てながら、コートリアの体は一回りも二回りも大きくなっていく。

 身に着けたドレスは引き千切られ、その内側に着た趣味の悪い金色のビキニが姿を現した。


「う、ううううあああああ! はぁぁぁぁああ、素晴らしいですわ。未だかつてないほどの力が溢れてくる。これが、アナボリックステロイドの力……」


 なるほど。アカン薬であることはわかった。


 アナボリックステロイド(anabolic steroid)(anabolic androgenic steroid, AAS)

 構造的にテストステロン(主要な男性性ホルモン)に関連する薬物の一種であり、アンドロゲン受容体(AR)に結合することで効果を発揮する。アナボリックステロイドには多くの医学的用途があるが、アスリートが筋肉のサイズ、強さ、パフォーマンスを向上させるためにも使用されている。byWikipedia参照


 薬に頼り、鍛えることを忘れた愚かな女よ。

 一人高笑いを浮かべる女に対して、私の心が急速に冷めていくのがわかる。

 この世のトレーニー全てに対する侮辱。


 愚かね。本当に愚かな女。


 全長4メートルにまで肥大化した女に向かって一歩踏み出す。


「一応聞いておくわね。貴女、その力が本当に自分の物であると思っているの?」

「ええもちろん。例え薬の力に頼ろうとも、今、この瞬間、貴様を超えられるのなら問題ない! 死になさい! カトレア・フォン・ドーピングス!!」

「——ッ! 危ない! 姉さん!!」

「カトレアお姉様!」


 コートリアはその巨体から繰り出される拳をカトレア目掛けて振り下ろした。

 肥大化した筋肉から繰り出されるその一撃は、岩をも砕くことができる。

 人体に直撃しようものならば、一瞬のうちにミンチとなってしまうだろう。

 カトレアの哀れな末路を妄想したコートリアは悦に入っていた。


 同じ伯爵家という身分でありながら、見た目も良く、人望にも溢れ、この国の王子と婚約までしている。

 まさに絵にかいた様な理想の女。

 なぜ自分ではなく、カトレア(この女)なのか。

 腹が立ってしょうがない。

 でっち上げの罪を擦り付けようとした時も、なぜかこの女は受け入れようとした。

 無様に言い訳をするでもなく、凛としたその佇まいに美しいとさえ思えた。

 だからこそ腹立たしい、嫉妬の炎でこの身が焼け焦げてしまいそうになる。


 帝国との件が露呈したのなら、もうどなってもいい。

 この力を使えば逃げることなど容易にできる。

 できるが……この女だけは何としても潰しておきたい。

 そうしなければならない。


 それはただの嫉妬。

 されど、何よりも優先して解決する必要がある。

 たとえこの身が外道に落ちようとも——


「死ねええええええええ! カトレアァァァァアアアアアアアア!」


 ドゴンッ!


 拳はカトレアへと直撃した。


 コートリアには確かな手ごたえがあった。

 心の中で「やった!」と歓喜の声が漏れ出た。

 だがすぐに違和感に気づく。


 拳が地面に触れていない。


 そして何よりも——


 カトレアが膝を折ってすらいない。


「な……ば、バカな!!」

「——フゥ。ありがとうコートリア」


 その場でコートリアの拳を受け止め、仁王立ちするカトレアが静かに礼を言った。


「安易に暴力に走ってくれたこと、そして私を標的にしたこと」

「な、なにを言って——」


 トンッとコートリアの拳は押し返され——

 ブンッという音と共にカトレアの姿が消えると。


「少し——寝てなさい」


 その声と共にコートリアの胸にカトレアの拳が突き刺さった。

 何の変哲もないただの右ストレート。

 だがその一撃は、4メートルもあるコートリアの肉体を十数メートルも吹き飛ばした。


「ぐ、があぁぁぁぁぁぁ」


 自身の胸を抑え膝をつくコートリア。

 口からは血を吐き、その体は小刻みに震えていた。


「なん、なにを……何をしたあああ!」

「……? 何って、ただ殴っただけよ? 力を込めて——ね」


 カトレアの言葉通り、彼女はただ力を込めて殴ったにすぎない。

 ただその威力は、秘薬をもちいてまで強化したコートリアの肉体の許容量を簡単に凌駕した。

 その様子を見たカトレアは一言。


「最後にひとつだけお願いしても——」


 おっとっとっとっと、危ない危ない。

 何てこと口走ろうとしたんだ私は。


「………………素直に投降しなさい。今なら私が多少口利きしてあげるわ」

「——断る! 貴様に慈悲をこうなど! ならばこの場で死んだ方がましよ!!」

「わかった。なら死なない程度に痛めつけるわね」


 何でこんな恨まれてるのか皆目見当もつかないけれど、とりあえず戦闘不能にしておく必要はある。

 これだけ頑丈なら多少本気で殴っても死なないでしょ……多分。



 のちにアルフォンス・フォン・ドーピングスはこう語る。 

「あの時の様子を聞きたい? うーん、いやーなんて言うのかな。一言で表すのなら圧倒的な暴力——かな? 見てた僕も目を疑うような光景だったからね。姉さんは何故かコートリアの攻撃を一切避けずに受けていたんだよ。何でそんなことをしたかって? さあ? 相手が姉さんだもの、多分その方が気分良いとかそんな理由だと思うよ? でだ、姉さんはコートリアの攻撃を一撃受ける毎に自分も殴り返していたんだ。そうそう、お互い交互にね。殴ったら殴り返す。それの繰り返しさ。それでもすぐに決着は着いたよ。たしか4発目かな? コートリアが連続で殴り付けている中、姉さんはたった一発顔面を殴ったんだ。それでおしまいさ。それ以降、コートリアが動くことはなかったよ」



「——ふう」


 何度も殴られるのでイラっとして、思わず本気で殴ってしまった。

 拳の形に陥没しているけれど……ま、まあ大丈夫でしょう。

 最悪死んでも正当防衛ってことでここは一つ……


「お姉様!!」


 一息ついている私にマリアが駆け寄り、ギュッと抱き着いてきた。


 おっふ。互いにビキニなので、肌が密着する範囲が多いので不覚にもドキッとしてしまう。

 マリアのスベスベな肌が、少し汗ばんだ私の肌と触れ合って……(^q^)おほー


「姉さん! ケガはない!?」

「あるわけないでしょこの程度で」

「正直この程度で済ませていい相手じゃないからね?」

「鍛え方が違うのよ、鍛え方が」


 自分の上腕三頭筋(ソフィア)を叩きアピールする。

 私は一人で戦っていたわけじゃない。

 私の筋肉たちと共に戦っていたのだ。

 言うなれば39対1。圧倒的数の暴力。


 自分の筋肉たちとの対話を放棄し、薬という安易な手段に逃げたコートリアに負ける道理はない。

 もしも、彼女が筋肉の声に耳を傾けていたのなら、こうはならなかったでしょうね。


「分かり合えたかもしれないのに……残念ね」

「お姉様……」


 それから今まで何していたんだ、と言いたくなるタイミングで衛兵たちが会場へ雪崩れ込んで来た。


 その頃には薬の効果が切れたのか、通常サイズに戻ったコートリアを衛兵が連行していった。


 ◇


 それからのことを語りたいと思う。

 当然のようにパーティーはお開きになり、私の断罪イベントはうやむやになった。

 つまり私が追放される可能性が無くなってしまったのだ。

 さようなら……私の素朴で誠実な青年(cv.花江夏樹)。


 そして、ステロイド家は王家の指導のもとガサ入れが行われ、事前に入手していた以上の悪事の証拠がわんさか出てきた。

 当然ステロイド家は取り潰しになり、その一族郎党処される事となった。


 その決定に不満はない。

 国を滅ぼそうとしていたんだもの、それ相応の報いは受けるべきだ。

 ただ心残りがあるとするなら——


 コートリアはなぜ私にあそこまでの憎悪を向けていたのだろうか。

 その答えを知る術はもうない。


 後日、罪人を埋葬する墓の前で私は一輪の花を供えた。


 ◇


「姉さん! 準備は出来てる?」

「あー、もうちょっと待ちなさい」


 あの騒動から一カ月経過し、新たな年度を迎えていた。

 今日から新たな学年が始まる。

 アルも進級して一緒の学校へ通うことができるようになった。


 鏡の前で前髪を整えながら身だしなみの最終チェックを行う。


「……よし。こんなものかしらね」


 燃える様な紅い髪が動きに合わせて軽やかに踊る。

 引き締まった全身の筋肉は制服に隠れているが、それでも最高の仕上がりにしてある。


 さあ、行きましょうか。


 断罪エンドを迎えることはできなかったけれど、新たな始まりを前にして、私の胸は高鳴っていた。


 今日はどんな一日になるのかしら。


 そんな思いを抱きながら、部屋の扉を開け放った——




 ——————

 ————

 ——


 ピッピッピッピ——と一定のリズムで音が鳴り響く。


 あ、れ……ここは…………?


 部屋の扉を開けたはずなのに、次の瞬間には知らない天井を見上げていた。


 体が思うように動かない。

 辛うじて首だけ動かすと、白く清潔な部屋が目に飛び込んできた。

 その光景は、見覚えがある。


 かつて私が生きていた世界のとある一室。

 そう——よくある病院の一室そのものだ。


「失礼します——」


 誰かが入って来た。

 その顔を見た瞬間に思い出す。

 カトレアになる前、私に告白しきた同僚の男性だった。

 数年ぶりだというのに、昨日のことのように思い出す。


「あ、うぁ……」

「……え、益荒、さん? ——はっ、だ、誰か! 誰か来てください!!」


 同僚はすぐに部屋の外へ向かった。


 部屋にはまた私一人。


 ああそうか。


 私は戻ってきたのだ。


 今までのことは夢だったのだろうか……


 その答えを得る間もなく、私の周囲はあわただしくなった。


 ◇


 病院で目覚める前のことを同僚の男性に聞いたところ。

 どうやら私は1年間も意識がなかったらしい。

 でも私の中にはカトレアとしての数年の記憶がある。

 意識不明の間に脳が見せた幻覚なのだろうか?

 だとしてもあまりにもリアルすぎる。


 そのことを誰かに話したわけではないけれど、きっと自分が望んだ答えは帰って来ないと思う。

 あの出来事は私だけのものだ。

 マリアと筋トレをした日々に、攻略対象と過ごした日々。

 その全てが、かけがえのない思い出なのだから。


 病院では色々な検査のあと、無事に退院し、少しの休養の後に会社へ復帰。

 快く迎えてくれた会社の人たちには感謝しかない。


 それに1年間寝たきりだったので、私の筋肉たちは見るも無残に痩せ細っていた。


 だけど問題ない。


 それは何故か――



「乙女さん! ラスト一回! 力を出し切って!!」

「ふ、ぐううああああああああああああ!!!!」

「オッケー! 記録更新できたよ!」

「ぜえ……ぜえ……あ、ありがとう……」


 退院してから、同僚の男性と正式にお付き合いすることになった。

 彼は私が寝たきりになったというのに、休みの日には欠かさず見舞いに来てくれていたという。

 そこまでされて無下にするなんて私にはできない。


 今だって衰えた筋肉を元に戻すための筋トレを一緒にしている。

 正直な話、私自身彼に惚れてしまっている。

 カトレアとしての人生も悪くなかったけれど、やはり自分の人生を生きることができて良かったと思っている。


 それに——


 私はスマホの画面に映し出された、ある記事を見ていた。


 そこには、こう書かれていた。


「ムキムキプリンセス2~マッチョネスHEARTダブルバイセップス~ 〇月〇日発売!」


 マリアとカトレア。


 二人が手をとり合いながら、笑いあう表紙が飾られていた。






 ◇


 とあるジムの男子更衣室。

 そこで着替えを行っている一人の男がポツリと零した。



「もう少しで、元の姿に戻りますね——」



「お姉様」


ここまでお読み頂きありがとうございます。

元々長編用として書こうとしていたものを読み切り短編にしたのが今作になります。


なんで最後ホラーにした? なぜそうしたのか、作者もわかりません。

あと別に作者は筋肉に対して険しくはないので、ここ違くね?という指摘もお待ちしております。



宣伝。

同作者による「異世界転移は草原スタート!?」アルファポリス様にて第二巻発売中!!!!


「異世界転生ヤニカス道酒」も連載しているのでよかったら見に来てください!!

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