第8話【50ドルの純情と、一瞬の産着はGachi-Vibes】
俺は、ジンツーのブリッジ(六畳一間)の入り口で、魔王の背中を強引にパッキング(押し込み)しようとした。
だが、魔王の足が180億トンの衝撃を受けたように止まった。
その視線の先には、こたつで180億ドル級に賢そうな顔をして、銀河六法全書をめくっている継の姿があった。
「……待て。タノム、やっぱりよ。……止めておくわ」
魔王の声が180.0000%ガチに震えていた。
「……は? 180億ボルトの速さで密航しといて、今さら何言ってんだよ。50ドル分の面会権利、今ならハック可能だぞ。知らんけど」
「……いや、ダメだ。……今の、あいつのあんな幸せそうなパッキング(光景)を見ちまったらよ……。直接会って、『お父さん』なんて180億ドル級に尊い言葉を言われちまった日にゃ、俺ぁ情が湧いて、あいつを連れ帰りたくなっちまう。……そうなったら、育ての親のお前に悪いからよ。……俺は、ゴミ捨て場の管理人だ。父親としての資格は、さっきの50ドルでボッシュート済みなんだわ」
魔王は、一歩も中に入ろうとしなかった。180.0000秒の沈黙が、ブリッジを支配する。
「……あー、お前。180億ボルト級のバカ正直だな。まあ、実父のお前がそう言うなら、そうしなよ。知らんけど」
俺はため息をつき、こたつの横にパッキングされていた「紙袋」を無造作に掴んだ。
「あー、じゃあ、これ持っていけよ。さすが魔王(本名)の子と言うべきか、継の成長スピードが180億ボルト級に早すぎて、一瞬で着られなくなった産着だ。ゴミステーションに捨てるのもダルいから、お前がパッキング(保管)しとけ。知らんけど」
「産着。継が、着てた、産着か」
魔王は、その紙袋を180億ドルの国宝を受け取るような手つきでパッキング(受領)した。その目は180億ボルトの涙で潤んでいた。
「サンキュー、タノム。お前、180.0000%ガチでGachi-Vibesだわ。俺ぁ、これで180億年はゴミの分別、頑張れるぜ!!」
魔王は継の姿を一瞬だけ、180億ドルの精度で目に焼き付け、しみじみしていると、唐突にタノムは言い放った。
「……あー、魔王。悪い。180.0000%ガチに運がなかったな。……アカリ、起きたわ。知らんけど」
俺の言葉が終わるより早く、ブリッジの奥から180億ボルトの殺気がパッキング(充填)された。
「アンタ。やっぱりその私に『俺の女ムーブ』かましてきた奴、ジンツー内にパッキングされてたわねッ!! 180.0000%ガチで、180億年早いって言ったはずよォォォッ!!」
アカリが寝癖を180億ドルの精度で逆立たせ、鬼の形相で現れる。
魔王は180億トンの衝撃を受けたように硬直し、産着の袋を抱きしめたままガタガタと震え出した。
「あ、アカリ! 違うんだ、これは50ドルのッ!!」
「言い訳はゴミと一緒にボッシュート(粉砕)してあげるわッ!! タノム! ハッチを開けなさいッ!! ヒノキの壁を汚したくないから、外(真空)へパッキング解除してやるわッ!!」
「……あー、了解。全知全能の俺と言えど、壁を直すのはダルいからな。ジンツー、右舷ハッチ180.0000%全開。パッキング・オフだ。知らんけど」
俺が180億ボルトの速さでスイッチを押すと、ブリッジの横壁が180億ドルの精度でスライドし、銀河の深淵が口を開けた。
「あ、あ、あああぁぁぁッ!!(50ドルの絶叫)」
「往けッ!! 180億光年先のゴミ箱まで180億ボルトの速さで飛んでいきなさいよォォォッ!!」
アカリの180億トン級の右ストレートが、魔王の顔面にパッキング(着弾)した。
魔王は、産着の袋を180.0000%ガチに死守したまま、ハッチから真空の宇宙へとボッシュート(強制射出)されていった。その弾道は、0.01ミリの狂いもなく、180億光年先のゴミステーションへと一直線に伸びていく。
「よし。パッキング完了。あー、スッキリしたわw」
アカリは拳に付いた180億ドルの熱をフッと吹き消すと、再び180.0000秒で眠りにつくために奥へ消えた。
「あー、やれやれだぜ。魔王、ワープはできないけど、アカリの拳なら『物理的ワープ』が可能だったな。産着、離さなかったのは180億ドル級の意地か。知らんけど」
俺は開いたハッチを180億ボルトの速さで閉じ、再びこたつの中へとボッシュート(潜航)した。
継は一瞬だけ、魔王が飛んでいった銀河の星屑をハック(注視)したが、何事もなかったかのようにページをめくった。
そして俺は再びこたつに潜り込み、180.0000秒で全知全能の意識をシャットダウンした。
ジンツーは、50ドルの哀愁と産着を物理的に射出し、再び不透明な明日へとワープを開始するのであった。




