第6話【宇宙タクシー開業と、180億秒(約200時間)の迷走】
「……よし、投稿完了。あー、指がダルい。180.0000秒分の労働をした気分だわ。知らんけど」
俺はソラスタのストーリーに、『宇宙タクシー・ジンツー開業。
就労実績作りにつき、180時間以上の長距離客求む』とパッキング(投稿)した。
すると、画面をスワイプする暇もなく、スマホが180億ボルトのバイブ音で震え出した。
「……は? 0.1秒だぞ。全銀河のネット回線をハックして待機してたのかよ」
DMの主は、やはりあの金ピカアイコン、ジャスティン(宇宙版)だ。
『Oh... Tanomu!! ついにGachi-Vibesなビジネスを始めたのか! ちょうど180時間くらい、銀河を当てもなくクルーズして新曲のインスピレーションを得たいと思ってたんだ! 今すぐ迎えに来てくれ! 特製チーズあられ(トリュフ味)をパッキングして待ってる!』
「……あー、釣れた。……っていうか、こいつ暇なのか? 180時間もタクシーに乗るスターとか、180億%頭がパッキング(錯乱)してんだろ。知らんけど」
俺はため息をつき、ジンツーのアクセルを180億ドルの速さで踏み込んだ。
ブリッジでは、アカリが「日報」と書かれた昭和の香り漂う帳面を俺に投げつけてきた。
「ほらタノム! ジャスティンを乗せている間、1分1秒たりともサボらずに業務内容をパッキング(記録)しなさいよ! 役所のあのカチコチ役人を180億ボルトで黙らせるには、完璧な『実労働の証拠』が必要なんだからッ!!」
「……わかってるよ。全知全能の俺が、まさか『書類を偽造すればいい』なんていう180億ドル級のショートカットに気づかないはずがないだろ? ……いや、待てよ。……あー、忘れてた。俺、そういう『ズル』を思いつくのが一番ダルいんだったわ。知らんけど」
傍らでスヤスヤ眠っていた継が、ふと目を開けて俺を憐れむような目で見た。
(……タノムお父さん、全知全能なら役所のデータベースをハックして『就労済み』にパッキングし直せば180.0000秒で終わるのでは……? いえ、気付いていないのなら。。ひとまずお疲れ様です)
継の180億ドル級に冷めた視線に気づかないフリをして、俺はジャスティンの待つ180億光年先のプライベート惑星へとジンツーを走らせた。
ジンツーのブリッジに乗り込んできたジャスティンは、全身を180億ドル相当のダイヤでパッキング(装飾)していた。
「Tanomu!! このブリッジ、渋くて最高じゃん! でもちょっと照明が昭和すぎるな。俺の最新アルバムのジャケット撮影用に、この壁全部金ピカに変えてくれないか?!もちろん改装費用は俺持ちさ!!」
「……あー、やめてくれ。このヒノキの壁は、俺が180億秒かけてパッキング(改装)した特注品だ。ジャスティン、お前は恩人だが、このジンツーと俺の美学までパッキング(破壊)する権利はないぞ。知らんけど」
「Oh... 厳しいな! でも、そういう真面目なところ、Gachi-Vibesだぜ! じゃあ俺はそこにあるチーズあられをサンプリング……あ、おい、そのラバーカップは!」
「……あー、それ、トイレ掃除用のパッキング・ツールだ。変なインスピレーションを得るなよ。知らんけど」
こうして180時間の地獄のクルーズが始まった。
ジャスティンはノンストップで喋り続け、ブリッジは180億ドルの狂気に包まれた。
アカリは怒りでジンツーのブリッジをぶち破りそうな勢いだったが、俺が「……あー、恩人だ。耐えろ。パッキング解除(物理破壊)は後回しだ」と制し続けた。
ついに180時間後、ジャスティンクリエイトなインスピレーションを得たらしく、ご満悦で下船した。
ブリッジに残されたのは、180億ドルの金ピカなゴミの山と、タノムが180億秒かけて書いた、チーズあられの脂でベタベタの業務日報帳だ。
「……よし、日報完成、と。『180時間、客(金ピカ)のウザ絡みをパッキングし続けた。……180億ボルト級にダルかった』。パッキング完了だな。知らんけど」
俺はそう言って、日報をアカリに投げた。
「……あー、これで就労証明が手に入るなら安いもんだな。次は180年くらい寝たいわ。知らんけど」
こうして、宇宙一やる気のない「180時間の就労実績作り」を成し遂げたのである。




