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拓人の場合

 アキラは、黒猫に(そそのか)され、沙耶へプロポーズをすることにした。


 しかし今のところ、沙耶はアキラを恋愛対象として見ていない。

 そのため、アキラは大人として見てもらえるように、日々着々と身長を伸ばしていた。



「……なあアキラ、急に背ぇ伸びたな」


 紫星綾乃の屋敷跡で、新しい施設の工事を手伝っていた拓人は、同じく手伝いに来たアキラを見て驚いた。


 先月までは上から見下ろしていたアキラの身長。

 それが、今は俺とほとんど目線が変わらなかった。


「今、頑張って伸ばしてるんだ」


 にこやかに笑うアキラに、そういうもんかと納得する。

 アキラのやることだ、きっと何か深い意味があるんだろうと思った。


「……そういや、親の住所教えてくれてありがとな」


 俺は、顔も見たことのない実の親に手紙を書いた。

 この世に生を与えてくれた、そのことを感謝するために。

 

 こちらの住所などは書いていない。

 きっと知りたくもないだろうし、俺のことは捨てたのだから、知る権利もないと思ったからだ。


 ただ、ケジメとして伝えたかっただけ。


「役に立てたなら良かったよ」


 アキラは詳しいことも聞かずに、すぐ教えてくれた。

 今だって何も聞いてこない。

 

 それが俺には、何よりの優しさに思えた。


「そういえば、サイラス君はどうしたの?」


 アメリカから連れてきた能力者、サイラス・ヴェイン。

 アキラは空港で会って、一目で気に入ったらしい。


「……今はマリアとRodの本部で暮らしてる」


 俺に大した当てなんてない。

 結局マリアが助けてくれた。


「そっか、なら良かったね」


 ホンシアも名乗り出てくれたが、今彼女が住んでるのは紫星さんのマンションだ。

 勝手に入居者を増やすより、Rod本部の方が良いだろうと思った。


 何より、能力の制御をするため、マリアが手伝ってくれるらしい。

 魔力に関しては、ホンシアよりもマリアの方が詳しい。

 そこら辺も考慮した結果だ。


 それに、週に一度はマリアと一緒にこちらへ来る。

 その時にフォンリンと会っているようだ。


「……マリアには世話になりっぱなしで、申し訳ないくらいだ」


 俺だけじゃなく、仲間も世話になっている。

 それを考えると頭が上がらない。


「マリちゃんは、喜んで世話を焼いてるみたいだよ」

「僕の家に来ても、拓人の話ばかりしてるもの」


 そう言われると照れ臭い。


「……それならいいんだけどよ」


 今度お礼に、欲しがっていたアクセサリーでも買っていってやるか。

 

「で、拓人は誰と結婚してくれるの?」


 誰と?

 そう言われても、失恋したばかりで相手がいない。


「すまん……まだ無理そうだ」


 他の娘を紹介してくれるのだろうか?


「そうなんだ、みんな拓人への愛情が溢れてるんだけどな」


 よくわからないことを言われた。

 みんなって誰のことだろう?


「実は、僕も結婚しようと思っていてね」


 嬉しそうに目を細めるアキラを見て驚く。


「マジかよ!?おめでとう!……でも……誰と?」


 喜ばしい報告だった。

 だけど、アキラには哲夜を含め、たくさんの彼女がいる。

 しかも全員妊娠してるらしい。


 この前、久しぶりに哲夜と会ったら、もうお腹が膨らみ始めてた。


 哲夜に結婚願望は無いらしいが、彼女たちの中から選ぶってなると、相当な修羅場が起きるんじゃないかと心配した。


「沙耶さんだよ、会ったことあるよね」


 アキラの家のメイドさんか。

 何度か会ったが、優しい雰囲気の人だ。


 こんな俺にも、いつも丁寧に接してくれる。


 アキラはああいう人が好きなのか。

 でも、色々大丈夫なのだろうか。


「いつ頃結婚するんだ?卒業したらか?」


 結婚式をやるなら、是非とも出席したい。


 御祝儀ってやつが必要なんだよな。

 いまから出来る限り貯めておこう。


 あ、俺スーツ持ってない、買っとかないと。


「まだプロポーズもしてないから、それを受けてもらえたらかな」


 なるほど、まだ決まってはいないのか。

 だけど、アキラなら必ず受けてもらえるだろう。


「だから今悩んでるんだ、どうしたら受けてもらえるかって」


「え!?アキラって悩むの!?」


 反射的に思わず大声を出してしまった。

 そんなこと有り得ないと思っていたから。


 アキラは無敵で、悩みなんてひとつもないと勝手に思っていた。

 あまりの衝撃に、口を開けたまま固まってしまうくらい驚く。


「それはそうだよ、失敗したら人類が滅びかねないからね」


「え……なにそれ……無理」


 言ってることは意味わからなかったが、やはりアキラの悩みだ。

 スケールが違う。


 人類の命運を賭けたプロポーズか、ヤバイ……カッコ良過ぎる。


「だから、失敗出来ないんだ」


 アキラが、真剣な顔で瞳を燃やしていた。


「……俺に出来ることがあるなら、なんでも言ってくれ」


 命を張ってでも助けになりたい。

 俺は全力で覚悟を決める。


「ありがとね、拓人は頼りになるな」


 嬉しそうに笑うアキラが、以前よりカッコいい。

 背が伸びて、顔つきも大人びてきたせいだろう。

 

 芸能人なんて目じゃないイケメンっぷりだ。

 むしろ、この顔だけでプロポーズが成功しそう。


 もしかして、そのために背を伸ばしてるのか?

 

 沙耶さんは確かに年上の女性だ。

 外見もそれに合わせた方が良いだろう。


 様変わりしたアキラを眺めて、深く納得する。

 

 そして、求婚を成功させるために、自らの体も成長させるという、ひたむきな姿勢に感動していた。


 やっぱりアキラはスゴイ。

 彼に憧れた自分を誇れるくらいに。

 

 アキラの役に立つために、俺も気合を入れてなんでもしよう。


「じゃあ、プロポーズってどうすればいいか、わかる?」


「……わかんない」


 どうやら、俺では助けになれないらしい。

 自分の棒すら使ったことのない身では、プロポーズの仕方なんて雲の上の話だ。


 そうだ!帰ったらアマテに聞いてみよう。

 

 理想のプロポーズってやつを。

 

 普段あんまり意識しないけど、アイツも立派な女性だ。

 話を聞けば、きっと参考になるだろう。

 ホンシアやマリアにも聞いて、少しでもアキラの役に立つ努力をしよう。


「……今度会う時までに、調べておく」


 だから、待っててくれ。


 俺の本気の視線を受け取って、アキラが微笑みながら頷いた。


「楽しみに待ってるよ」


 白い歯を光らせて笑うアキラは、やっぱり物凄くカッコよかった。


 

 拓人はその後、家で、修行場で、Rod本部で彼女たちにそれぞれ聞いた。

 アキラの役に立とうと、真剣に、真摯な態度で。

 

 その結果、そこから生まれる騒動は、彼と彼女たちの関係を変えていくこととなる——。

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