表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

217/261

初夜に流血は付き物だ

すみません、昨日は216話を間違えて再びアップしてました。

217話はこちらになります。

よろしくお願いいたします。

 遅い晩飯を食べて新しい住処へ帰ると、アキラが部屋で待っていた。


「お帰り、二人とも今日はありがとね」


 美籐を連れて空へ飛んで行ってから、そのまま戻って来たんだろう。

 まだ赤いマントを羽織っていた。


「……美籐はどうした?結局、手伝ってくれるのか?」


 あの後、二人の間でどんな話し合いが行われたのかが気になった。

 

「ケンちゃんは、やる気に満ち溢れてたよ」


「……ケンちゃん?」


「うん、そう呼んでくれって」


 よくわからないが、上手くいったならそれでいい。

 

 それを聞いた哲也が、ソワソワしながら口を開く。

 

「それで、研究所はいつから可動させるんだ?オレもそこで働くぞ!」


 人の進化を研究する施設だ、こいつの希望にぴったりなんだろう。


「とりあえず、来年から工事を始める予定だよ」

「僕も手伝うから、すぐに出来るんじゃないかな」


 そういえば、アキラは崩れかけたバチカンを一瞬で修繕していた。

 あの力があれば、あっという間に完成させそうだ。


「そうか、待ちきれないな!最新施設で研究出来るなら色々と捗りそうだ!」


 哲也が嬉しそうに目を輝かせる。


「なら、研究所で働く前に哲也の戸籍を変えようと思うんだけど、どうかな?」

「もう男に戻る気ないんでしょ?」


 哲也が本格的に女性となる。

 その言葉に、なぜか胸がざわついた。


「そうだな、戻れと言われても再現出来そうにない」

「何より戻る気は全く無いな、戸籍も作ってくれるならありがたい」


 哲也の話を聞いた限りだと、一度体を全部溶かしたらしい。

 それは命を懸けた変身だったのだろう。

 二度目が成功するとは限らない。

 

「何か戸籍に希望はある?」


 そういえば、俺の戸籍も簡単に作ってくれていた。

 どこかに伝手でもあるのだろう。


「そうだな、名前をあんまり変えられると反応しずらいから、似たのをアキラが付けてくれ」

「元の名前にも未練は無いし、母親と完全に縁が切れるならむしろ望ましいからな」

 

 名付け親はアキラが良い。

 その気持ちはよくわかった。


「んー、なら『大出 哲夜(おおで てつよ)』というのはどう?」

「テツヤとテツヨなら、言い間違えても気にならないし」


「うむ……いいな!それで頼む」


 腕を組んで頷いた哲夜(てつよ)

 

 これで名実ともに女性となることが決まった。

 となると、気になることがある。


「……それって結婚とか出来たりするのか?」


 心の声が漏れてしまった。


「ハァ?何言ってんだオマエ?」


 呆れたように眉を上げる哲夜を見て、焦ってしまった。


「いや、ほら、もしもの話だ!別に俺とするとかしないとかの話じゃなくて……」


 駄目だ、どうにも墓穴を掘ってしまう。

 結婚なんて気が早すぎる。


 というか、なんか色々とすっ飛ばしてる。

 

「もちろん出来るよ、二人がしたいなら十八歳に年齢変えようか?」


 ニコニコしながら、今すぐ出来ると告げるアキラ。


「ふん、結婚なんぞに興味は無い!ウエディングドレス姿には興味あるがな」


 哲夜が鼻を鳴らして言い切る。

 でも、どうやらコスプレはしたいらしい。


「そういえば、拓人はどうだったの?マリちゃんとのお見合い」


 これ以上墓穴を掘る前に話が逸れてくれた。

 

 だが、聞かれたのはマリアとのことだった。

 報告するのに少し気が重い話題だ。


「……すまないが、向こうに断られた……自分とは釣り合わないと言っていたぞ」


 会ってすぐに拒否られていた。

 脈は完全に無いだろう。


「そうなんだ、残念だね。結構お似合いだと思ったのに」


 本心で思ってくれている。

 だからこそ余計、期待に答えられなくて申し訳なさを覚えてしまった。


「でも安心して、まだ娘はいるからね」


 どうやらお見合いは続くらしい。


「近い内にまた紹介するから待っててね」


「……わかった」


 アキラが望む事だ、やれるだけやってみようと思う。

 たとえ上手くいかなくても、全力で当たるのが彼に対する礼儀だ。


「哲夜と子供を作ることで、約束を果たしてくれてもいいからね」


 え?

 いいんだ?


「なんでだよ、長ネギ突っ込まれて処女無くすなんて嫌だぞ」


 え……?

 嫌なんだ……?


「そっか、ならそのへんは二人に任せるよ、僕はそろそろ帰るね」


 哲夜に拒否られたことで、胸がズキッと痛んだ。

 アキラの時は受け入れようとしてたのに、俺の棒は嫌らしい。

 

 なんでだろう——泣きそうだ。


「そういや、借りてたクレジットカードなんだけど、結構使っちまった」

 

 哲夜が、ポケットから取り出したカードをアキラに見せる。

 どうやらちゃんと返す気はちゃんとあったらしい。


「それはそのまま好きに使っていいよ、これから研究所のことも手伝ってもらうからね」


「マジか!じゃあ給料の前借と思って、遠慮なく使わせてもらうぞ!」


 ホクホクした顔でカードをしまう哲夜。

 俺は慌てて自分のカードを差し出した。


「……俺は研究所の手伝いなんて出来ないからよ、返すわ」


「いや、拓人にも他のお見合いとかあるし、好きに使ってくれるかな?」


「……いいのか?」


「うん、それに今後マリちゃんと会うなら、たぶん色々使うことになると思うよ」


 日本に来たマリアのもとに、修行しに行くことが決まっていた。

 その時になにかと必要になるらしい。

 

「……そうか、なら甘えさせてもらう」


 特に金には困ってはいなかったが、それはチームのみんながくれるものだ。

 自分が働いて稼いだことはない。


 俺もいつか働いて金を稼いでみたい。

 社会の一員として生きていくのも必要だと思った。


 哲夜は、知り合いの仕事を手伝って生活していたらしい。

 だから、あんなにもしっかりとしているし、お金の大切さを知っているのだろう。


 まだまだ足りないものだらけだ。

 哲夜の良いところは、出来るだけ吸収していこう。


「じゃあまたね、何かあったら連絡して」


 そう言ってアキラは帰って行った。


 

「とりあえずオレらも今日は寝ようぜ、自分の部屋は好きに選べよ」


「……お、おう」


 精神的にもかなり疲れていた。

 主にさっき拒否られたことが原因だったが。


「あーあ、せっかく撮影の用意したのにな、長ネギが興奮するならしばらくお預けか」


 哲夜が残念そうに部屋へ戻る。


 その言葉で、あの状況を思い出してしまった。

 裸の哲夜と、濡れて光っていた——。


 駄目だ、よくない。

 とりあえず、風呂にでも入ってスッキリしよう。


 脱衣所に行って服を脱ぐ。


 タオルがどこかわからなかったので周囲を見渡すと、洗面台の横に丸めて置かれたタオルがあった。

 これでいいかと思い手に取ると、タオルの中から色々な物が落ちて来た。

 

 ピンクや紫などの色とりどりな機械。

 おそらく何かに使って洗ったのだろう、まだ水滴が残っていた。


 コードが付いたカプセル状の物や、キノコのような形をした物。

 さらには、小さな吸盤が付いた壁掛けフックみたいな形状の物もある。


 哲夜の実験道具だろうか?

 だが、どこかで見たことがあった。


 そのうちのひとつを手にとって、スイッチを押してみる。

 するとカプセルが細かく振動した。

 

 どうやら強弱を変えられるみたいだ。

 マッサージ機だろうか?


 そういえば、ビナの家に泊まった時、あいつがこれで女をイカすとかなんとか——。


「あっ!」


 思い出した!これは女の子の敏感な所に当てて使うって言ってたやつじゃないか!

 

 ——てことは何か?

 これ、哲夜のアレにアレした後のアレなのか?


 使用済みアレか!


 震え続けるカプセルを手に持ち、呆然と眺めてしまった。

 

「どうした大声出して?タオルならそこの戸棚に入ってるぞ」


 哲夜が、脱衣所に入って来た。

 そして、震え続けるカプセルを手に立ち尽くす俺を見て、拳を握りしめた。


「…………そこにあったから」


 最低限の言い訳をした。

 だが、俺の長ネギは伸びていて、なんの説得力も無かったようだ。


「この!ド低脳がぁ!」


 全力のパンチが飛んできた。

 俺はそれを甘んじて受けるしかなかった。


 

 こうして、新居での初めての夜は、鼻から鮮血をまき散らしながら、過ぎていった——。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ