クラスの男子
小学生の記憶と言ったら、仲が良かった友達のことが真っ先に思い浮かぶ。
……逆に、ヤーコフとの思い出しかないのかも知れない。
* * * * * *
「ねえヤーコフ、クラスの男子ってほんとアホだよね」
「どうしたの?内臓」
「今日さ、休み時間にイス取りゲーム始めたんだけど、最初からイスがひとつもなかったの」
「え?」
「なのに全員ガチで走っててさ、しかも『イスないじゃん!』って誰も突っ込まないの。意味わかんなくない?」
「空気を取り合ってたって事?」
「もしくはプライドを取り合ってたって事。で、最終的に椅子の代わりに空気イスで座ったフリして、変なポーズで止まってたの
なんだよ空気って。椅子取りゲームにおいて一番いらないだろ。空気」
「…… ……?? それで?」
「…… え? なんでピンときてないの? 私説明下手かな」
「いや、説明はうまいよ。なんというか、内藤の説明は、
ものすごく上手くて、ありえないほどつまらない」
「…… ……批判されてる?」
「だって、そういうものでしょ? 椅子取りゲームって。そして私が最初に内藤のことを内臓って呼んだの気づかなかったみたいね」
「…… ……やっぱりみんな『こしあん』に帰ってくるよね。
……あ、ごめん!! ヤーコフの言ってることがキモすぎてあんぱんの話しちゃった!
何!? ヤーコフが何を言ってるか全くわからないんだけど!」
「じゃあ逆に聞きますが、椅子取りゲームの椅子を取ったら、そこに何が残りますか?」
「……空気?」
「ほら」
「はー!? ヤーコフ、はー!?
ヤーコフ!! 何論破してやったみたいな顔してんの!?」
「そもそも椅子取りゲームの目的はなんだろう?」
「椅子を取ること以外に何が!?」
「では椅子を取ったら、残るものは何?」
「空気……だからさ!! 私に『空気』って言わせるゲーム始まってるわけ!?」
「シンナーの隠語らしいね」
「……は?」
「後、英語にするとred bean bun または Japanese sweet red bean bun 」
「…… ……誰が今あんぱんの話しろっつったあ!? 」
ヤーコフとは中学生で離れ離れになってしまったが、一緒にいた六年間は、全ての思い出に彼女がいる気がする、が、
本当に友達だったのかと聞かれると、とてもそうは思えないのだ。ヤーコフは。