8話 テスト期間開始
初めての休日が終わり、また授業が始まった。
クラスまで到着し、扉の中に入っていく。
「あ、ロクくん、おはよう!」
「おはよう」
クウナさんが挨拶をしてくれた。あの時の実習の日から少しだけ距離が縮まった気がする。
僕が席に座ると、コーラ先生が入ってきてHRが始まった。
「皆、おはよう!よく休めたか?今日からまた授業頑張ろうな!」
よし、今日から頑張ろう!
「それで、今日は何したの?」
「……またいつものです。」
メディス先生が怪我した理由を聞いてくる。今回で5回目だ。もう常連のように「いつもの」で通じてくる頃合いだ。
「あんまり無茶しないの」
「……はい、すみません」
「ロクくんは、魔法の威力に対して身体が未発達だから怪我しやすいのかもね。キミみたいな子もたまにくるし。……コーラ君にでも鍛えてもらったらどう?」
そう言ってフフフッと冗談っぽく笑う先生。コーラ先生か、あの身体能力なら平気で人間辞めさせられそうだな。
「う〜ん、考えておきます」
「フフッ、でも体鍛えるのはやった方がいいかもね。体幹があれば風に振り回され無くなるし、転んでも怪我する可能性が低くなるし」
確かに、僕の体はヒョロヒョロだ。筋トレか……やった方がいいかもなぁ。でも、辛いからやだなぁ。
保健室から退出し、クラスに戻ろうとした時、昨日の白銀の女の子がいた。
「あ、……昨日は大丈夫だった?」
「……大丈夫。これ、ありがとう」
そう言って手渡してきたのは呪いの魔道具。あ、あの時上手く手放せたと思ったのに……!
「いや!それ貰い物だったし、大丈夫!それよりまたあんなことがないように……あの……君が持ってなよ!」
そういえば、この子の名前聞いてなかった。でも今更聞くのもなぁ。なんとかバレないように誤魔化していこう。
「いいの?でも2つはいらないから1つ返す」
いや、いらん。
「予備として持ってなよ!無くした時とか」
「……うん」
よし!僕は生まれて初めて心の中でガッツポーズした。
「だからこそ、ロクが持ってて」
僕は生まれて初めて心の中で膝から崩れ落ちた。
これ以上は手放したいと思われるので、渋々受け取った。
「じゃあね、ロク」
「……うん、じゃあね……」
また会ったね、リング(1/2)さん。
その後、特に何事もなく穏やかな日常を過ごし、僕らは春中期(5月)を迎えた。
春中期初の朝のHRが始まり、コーラ先生がやってきた。
「皆、おはよう!今日から春中期だ!そろそろテストがあるから勉強頑張れよ!それと、魔法・実技の結果が良かった者は代表戦に選ばれるかも知れないから本気で取り組めよ!」
確か、2週間後に中間テストがあるはずだ。勉強はもちろん、実技の方も結構苦手だ。剣術は剣が重くて振り回される。このままでは代表戦どころか赤点取りそうな勢いだ。先生に相談しようかな?
今日の授業が終わり、先生に諸々教えてもらおうと先生の方を見てみると、すでに10人以上に囲まれていた。
「先生!俺らの剣術見てよ!」
「先生!ここ分からないところがあるんだけど」
先生はこのクラスの人気者なのでこうなるのは当然だ。仕方ない、諦めて帰ろう。その時、僕の元にウンスイくんがやってきて話しかけてきた。
「ロク、ちょっといいか?」
「え?ど、どうしたの?」
「テスト勉強は大丈夫か?」
「え?う〜ん、あんまり自信ないかな」
「そうか、なら一緒に勉強しないか?」
え?さっきからえ?が止まらない。ウンスイくんは僕とすごく親しいわけではない。なぜ僕を誘ってくれたんだろうか。でも、初めて誘われた。嬉しい。
「う、うん!いいよ」
「では、図書室で勉強しようか」
補足
描写するのを忘れてしまいましたが、実習には魔法と実技があります。
実技は、剣術、短剣術、槍術、拳術、柔術のうち、2つを選択して行います。
ロクは剣術、短剣術を選択しています。いずれ物語でも書きたいと思います。