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82話 ロクvs魂喰い

『さあ、第二回戦…始めましょうか?』


 急いで魔力感知を発動する。例え闇に包まれたとしても魔力は捉えられるはず…!そう思っていたが、空間全体が魂喰いの魔力に満ちており正確な位置が分からない。


 位置を知るためにはあの目を見るしかない。しかし、見れば終わりという絶望的な事だけが分かった。


『ほら、来ないならこっちから行くわよ?』


「ぐあぁ!!」


 突如、右脇腹に鋭い痛みが襲う。見えなかったが、それがカマによる攻撃だとすぐに気付いた。

 その場に留まり続けるのは危険だ。とりあえず動いて回避に専念する。


『そんなことしても無駄よ~』


「くっ…!」


 不可視の攻撃を何とか回避し続ける。幸いどれも大したダメージになっていないが、身体中に小さな切り傷が増えていく。

 流石にこのままではまずい…!いずれ限界が来る。何か方法は…!?


『つーかまーえた♡』


「むぐっ!!?」


 こ、この感触は!?突然、抱きしめられた!?


「は、離して!!」


『あん…!ツンツンしちゃって…可愛いんだから』


「かわ…!?うっ…く…!」


 傷口が開いてきた。血は出ていないけど現実世界と痛みは変わらない。ここで死んでしまったら本当に死んでしまうのだろうか?


『ほぉら…私はここよ?どうして見てくれないの〜?』


 甘ったるい声で位置を知らせてくれる。親切心?強者の余裕?違う、どちらでもない。

 遊んでいるんだ。あの化け物は僕の事を敵としてすら見ていない。この空間において僕は罠にかかったネズミのような存在で、気まぐれに戯れているだけに過ぎないんだ。


『おいで、おいで』


「でも、だからこそ」


『?』


「そうやって油断しているからこそ、良いんだよ」


 追い詰められれば怯えたネズミでも牙を剥く。

 ポケットに忍ばせていた小さな石つぶてを声の方向に向けて発射する。


『突風石連弾』


『ギャアアアァァー!!』


 遠距離に対応できるようにあらかじめ石を入れていたのが役に立った。現実世界では霊魔法以外物理攻撃が効かなかったのが逆に良かったのかも知れない。


 魂喰いは目を抑えて悶えており、真っ暗な空間が所々元の白い空間に戻っている。

 ダメージを受けて制御が出来なくなっている…?多少ノイズがあるが、これで位置が分かるようになった。このタイミングを逃せば倒すことができなくなる。攻めるなら今だ。


『こ、この…!いい気になるんじゃないわよ…!!」


「いい気になってたのはそっちでしょ?…もう決着付けさせてもらうよ!」




 追い風で接近して間合いに入り込む。接近した勢いを利用して最速の一撃をお見舞いする。


『居合』


 しかし、残念ながら相手もギリギリで反応し、惜しくもカマに弾かれてしまう。ぶつかった衝撃で腕が痺れる。このカマ、岩より硬いんじゃないか?

 向こうは完全に空間の制御を優先して防御の姿勢を崩さない。追い風で翻弄してもカマを盾にされて全て弾かれる。

 こっちが制御されてしまうと勝ち目が無くなることを分かっているからだ。この際、腕を気にしている場合じゃない…!こっちも破れかぶれだ!!


『魔剣術ver.暴風コンバート』


 耳をつんざくほど甲高い音が響き渡る。さっきと比にならない衝撃が腕を伝わり、悶絶しそうになる。その痛みを歯を食いしばって耐えながら2撃目、3撃目とただひたすら目の前の障害を排除するために剣を振り続ける。

 ついには腕の感覚が消え、重い、痛いという感覚すら麻痺し、自分が今剣を持っているかすら分からなくなる。

 ——それでも腕を振ることだけはやめなかった。


「うおおおおおおおおお!!!」


『っ…!!何なのこの子、イカレてる…!』


 岩の様に頑丈だったカマも攻撃する度に揺らいできているのを感じた。向こうもガードしているとはいえ、衝撃が伝わってきている。決して無傷ではない。

 このまま押し切るっ!!


 それでもカマが破壊されることなく、無情にも再び空間が闇に染まっていく。さらに不運なことに、剣も落としてしまう。腕に限界が来てしまったのだ。

 苦悶の表情から一変して勝ちを確信した表情(もの)に変わる。


『…アハハッ!!惜しかったわね!もう間もなく時間切れよ!!』


「…っはぁ…っはぁ…そんな…!?」


 あと少しだったのに…!もう止める事は出来ないのか?


「…!!」


『追い風』


 高度を上げて頭上に移動する。

 もう時間がない…これは最後の賭けだ。


『逆風』


『キャッ…!?』


 逆風を受けた魂喰いは下に墜落していく。それでも防御の姿勢は絶対崩さない。最後まで油断するつもりはないようだ。


『今更何しても遅いわ〜。地面に叩き付けられたくらいじゃ大したダメージなんて…』


「そのまま宙に居ればお主は勝っていただろうな」


『——ッ!!?』


岩砕拳いわくだき


 あれだけ硬かったカマを容易く破壊され、顔面に強烈な一撃を叩き込こまれる。染まりかけていた闇も完全に晴れ、元の白い空間に戻った。

 賭けは僕の勝ちだ。


「はぁ……はぁ……助かったよ…!ガンジくん」


 フラフラとガンジくんの元へ着地する。

 剣を落としたあの時、微かにガンジくんの魔力を感じた。そこに落とせば、きっと何とかしてくれると信じて逆風を放ったのだ。


「後は…任せて…いいかな?」

「ああ、よく耐えたな。任せろ、選手交代だ!」

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