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80話 取引

「バカ!!よせ!!」


手招きする魂喰いが1体、2体…と次々にカマの化け物に変化する。それでも構わず距離を詰め、霊魔法を付与された剣を手に奴らに斬りかかる。

「うああああ!!」


『ちょうだい』『ちょうだい』『ちょうだい』


追い風の推進力を使って剣を振り、一番前にいた魂喰いを一刀両断する。


『ちょうだい』『ちょうだい』『ちょうだい』


左右から2体の魂喰いのカマが同時に迫る。さらに、前からも新たな魂喰いが化け物に変化してこちらに向かってくる。


「ロク!!!」


剣に風を(まと)う。今までは剣の軌道をスムーズに変えるために出力は弱めにしていたが、今回は違う。腕が引き裂かれそうな程の風力で無理やり剣の速度を上げる。


『旋風剣』


その軌道を止めることなく身体も回転し、周囲にいる魂喰いをカマを弾いて切り裂いた。

「うあああああ!!!」




「ロク…」

手当たり次第に化け物共を倒していく。宿で見せた流れる剣術とは違い、己の身体を(かえりみ)みない荒々しい剣術。


「完全に怒りで我を忘れておる…。あれではすぐに限界が来るぞ…!」


何としてでも正気に戻さねば。

しかし、呼びかけでは全く届く様子はない。…やはり力ずくでしかないか?あの状態のロクを抑えつけるとなると骨が折れそうだ。


「どう…して……ここに…」

「!!司教殿!!2人を助けに来たのだ。リキ殿は間に合わなかったが……」

「…!あれは…?あそこで戦っている少年は……誰ですか?」


抑揚のない弱々しい声でそう問いかける。司教殿も記憶を抜かれてしまったか…。


「ワシと一緒に助けに来た仲間だ。今は友を殺された怒りで暴走してしまっている。ワシが止めてくるから少し待っていてくれ」

早く止めねばやられてしまう。話を切り上げ向かおうとした時、


「あ…待って下さい…あの子は霊魔法を使えるのですか?」

「いや、使えん。あれはワシの霊魔法を剣に付与しているだけだ」

「キミが?…そしてあの少年……。もしかしたら…」

「??」


「彼の魂を取り戻すことができる方法があると言ったら協力してくれますか?」




『ちょうだい』『ちょうだい』『ちょうだい』

『ちょうだい』『ちょうだい』『ちょうだい』


『追い風』

魔力感知で位置を把握して全方向からの攻撃を避ける。今まで何体倒しただろうか。倒しても倒してもその数が減っている気がしない。流石に少し疲れてきたが、そんなの関係ない。


「こいつらを全員倒せば、きっと…!!」

リキくんの魂が返ってくる。なんの根拠もないが、それしか……


『ちょうだい』『ちょうだい』『ちょうだい』


『旋風剣』

「…はぁ、…はぁ」


『おいで』『おいで』『おいで』

『おいで』『おいで』『おいで』


早く倒さなきゃ…。早く…早く…!


『ガシッ』


不意に手を掴まれ、顔を上げるとガンジくんが立っていた。


「ガンジくん……?」

「落ち着いたか?全く…無茶をする。お主といい、クウナ殿といい、自分を粗末にし過ぎだ」

「自分を大切にしろ。そしてもっと周りを頼れ」

「あ……」


その言葉にハッとする。また一人で暴走して迷惑をかけてしまった……。


「ごめん…」

「分かれば良い。リキ殿があんな目になっているのだから怒る気持ちはワシも一緒だ」


「……そんなお主に朗報だ。リキ殿の魂を取り戻せるかも知れぬ……」

「なっ……!!本当に!?」

「司教殿の情報だ。この状況で嘘はつかんだろう」

「一体どうやれば戻るの!?」


「うむ、それは『取引』だ」

「取引?あの記録にあった?」

「その取引だ。司教殿はその取引に持ち込める方法を知っているらしい」

「じゃあ早くやろう!!何が必要なの?」


「生け贄だ」

「…えっ?」

「そしてすまぬが……お主は生け贄となってくれ」

「な、に…言って…ガッ……!?」


後頭部に強い衝撃が入りそこで僕の意識は途絶えた。

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