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78話 霊撃拳

 赤い柵を越えると女の人の声が頭の中に聞こえてきた。


『いらっしゃい…』


「わっ…!今の声が、魂食い…?」

「ワシも聞こえたぞ…入った途端にこちらを認知したのか?」

「霊魔法で完全に防ぎきれないとなると、長居は厳禁だ。一刻も早く司教殿達を見つけるぞ」


「……」

「どうかしたか?…まさかもう魂を?」


「…えっ?ああ…!!ごめんちょっと考え事してて…!!うん、そうだね。この辺りには誰もいないから大丈夫。早く行こう!」

「う、うむ。ん…?なぜ誰もいないと分かるのだ?」

「?普通に魔力感知で探ったから。まあ、魔力を消せるなら話は別だけど」


「普通に…?そういうものなのか(聞いたことないが…)」

「うん、ガンジくんが僕を霊魔法で守ってくれてるのも分かるよ。ありがとね」

「それも分かるのか!?」


 顔を赤くして驚いてるのを微笑しつつ、奥へと進んでいく。今の所は記憶は何ともない。帰り道も憶えている。仮に分からなくなってもパンくずを等間隔で放り投げているので最悪それを辿れば帰れる。物語の知識がこんなところで役立つとは思わなかった。


「しかし…不気味なくらい何もないな。もっと積極的に襲ってくると思っていたが…」

「…いや、どうやら来たみたいだよ?」


 前方に女の人が立っている。魔道具の微かな明かりではその距離を照らせないはずなのに姿がはっきりと見える。艶の良い黒髪が特徴の綺麗な人だった。


『……おいで』


 頭の中でまた声が聞こえる。おいでか…。見ると、胸の前で小さく手招きしていた。


「どうする?攻撃するか?」

「…ちょっと聞いてみよう。…すみませーん。聞きたいことがあるんですけど」


『……おいで』


「元気そうな男の子と修道服の優しそうなおじさん見ませんでしたか?」


『……おいで』


「…ダメだな。聞く耳を持たない。ワシがやろう」

 腕の包帯をキュッと締め直し、姿勢を低くして構える。まさに武闘家って感じの構えだ。

 魔力感知で見てみると腕と足に魔力が集中している。なるほど、霊魔法の使い手はこうやって強化していたのか。


「スゥーー…フンッ!!」


『ダンッ!!』


 破裂音に似た音が静かな森に響き渡る。音の正体はガンジくんが踏み込んだ衝撃によるものだった。それと同時に拳を振り抜くと女の人が消し飛んだ。


「よし。これで先に進めるな」

「今のは…?」

「拳に込めた魔法を飛ばしたのだ。名付けて霊撃拳ファントムフィスト。直接殴るより威力は下がるが、ここの主には十分だったようだ」

 何それめちゃくちゃかっこいい。






「はぁ…はぁ…っ…!これは、ちょっと…」


『ちょうだい』『ちょうだい』『ちょうだい』

『ちょうだい』『ちょうだい』『ちょうだい』

『ちょうだい』『ちょうだい』『ちょうだい』


『あなたのたましいも…ちょうだい』


「参りましたね…!」

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