71話 隠された伝説の魔導書を探せ!(前編)
王都に帰って来て翌日、どこに遊びに行こうか迷ったため食堂のおばちゃんに朝食を作ってもらったついでに聞いてみた。すると、
「それなら、王立図書館に行ってみなよ!あそこだったらロクくんの好きな物語がいっぱいあるし、何より…」
おばちゃんは喋るのを止め、僕を見てニッと笑う。
「?」
「噂では、隠された『伝説の魔導書』があるって聞いた事があるよ…!」
な、なんですと…!?
「そ、それ…ほんとに…!?」
「あははっ!!本当かどうかは知らんさね!…でも男の子はこういうの好きだろ?興味があるなら行っておいでよ」
「行きます!!」
今日の冒険は王立図書館に決定した。
おばちゃんに教えてもらった道を進むと周りを寄せ付けないように圧倒的な存在感を放つ建物がズンと佇んでいた。屋根が栗のように丸く先端が尖っているので建物も円を描くように建っており、4つの出入り口からどこからでも入れるようになっていた。
「ここが…王立図書館?」
周りをうろちょろしていると受付らしきお姉さんに声を掛けられる。
「おはようーボク。どうしたの?迷子?」
「あ…!えっと…!!」
いきなり話しかけられたのとさっきまでの行動を見られた恥ずかしさで混乱していると、
「あれ!!ロクくん!!」
後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「あ!!クウナさん!…と」
横に目をやると冷たい目でボクを睨むベニエさんがいた。
「…なんでアンタがここに居るの?」
「あはは…ベニエさん、久しぶり…」
「ふ〜ん、伝説の魔導書ねぇー…」
図書館の中で僕は2人に図書館の噂を話した。
「なんでも、それを読んだら自分に隠された本当の力が目覚めるんだって…!どう?面白そうじゃない?」
「…アンタそんなの信じてんの?お子ちゃまねぇ…」
「そう?私は面白そうだと思ったけどな…!」
「そうね、よく考えたら面白そうよね!」
この反応の差に思わず文句が出そうになったがギリギリで留まった。…うん、危ない危ない。……。
「……自分だって幽霊信じてるくせに……」
「は?何か言った…?」
クウナさんたちはここに何度も来ているらしく、この建物内全て回っているが、伝説の魔導書らしきものは見た事がないという。王立図書館は全3階建てになっており、1階の本棚の隙間、2階の別ルートへ進む隠し階段、3階の秘密の天井裏…怪しい場所がないか探してみるが、どれも不発に終わった。
「う〜ん…無いなぁ」
一応その辺の本棚に魔導書が入っていないか魔力感知で確認するも何の変哲もない本ばかりだった。
「やっぱりただの噂だったんだって!もう行こう、クーちゃん!」
「う〜ん、そっかぁ〜あったら面白そうだったのにね、残念…。ロクくんはどうする?良かったら私達と一緒に遊ぶ?」
そう言ってニコリと微笑むクウナさんがとても眩しく見えた。ああ……これが…天使の慈愛なのか…。
その横でベニエさんは露骨に嫌な顔をしているけど。
「いや、もうちょっとだけ探してみるよ。引き留めてごめんね、探してくれてありがとう!」
「…うん!分かった…!それじゃあね…ふふっ…!」
ああ…やっぱり天使だなぁ。
「…キモ」
うるさいなぁ。
クウナさんたちと別れ、僕はまた魔導書探しを始めた。もしかしたら本棚の上に通路が隠されているんじゃないかとこっそりよじ登ろうとしたら後ろにものすごい圧を感じたのでスッ…と降りた。軽く司書さんに注意された。
「はぁ…無いよ…」
時間は既に正午を過ぎた辺り。読書スペースの机でぐったり項垂れていたら
『パサッ』
何かが落ちる音がした。気になり、顔を上げると奥の本棚の足元に一冊の本が落ちていた。音の正体はコイツだろう。周りに誰かいる気配も無かったので本を手に取り、隙間が空いていた箇所に戻した。
「…あれ?」
おかしい。目の前には真っ直ぐな壁。普通ならそれが正しいけど周りを見渡す。周りの壁は最初に見た図書館の構造通り、曲線を描いていた。そして真っ直ぐな壁の反対を見る。そこには2階へと続く階段が。つまり…
「ここに何か…ある?」
『コンコン』
耳を澄ますと音が響いた。とするとこの中は空洞という事になる。
「ある…!ここに、『伝説の魔導書』が!!」
怪しい場所は見つけた。問題はどうやってこの中に入るかだけど…。
「壊す訳にはいかないよなぁ」
そんな事したら怒られるだけじゃ済まなそう…最悪捕まるかも…。
セッキ族のアジトみたいに隠し扉があるか壁付近をあちこち触ってみるけど特になし。
『ぐうぅ〜』
…とりあえず、お昼ご飯でも食べに行こうかな。お腹が鳴り、ずっと考えていても仕方ないので昼食を食べに図書館の外に出る。
外に出て図書館の謎の空洞があった場所の壁を見る。
「…ん!?あれ!?」
窓。窓があるぞ…!そう言えば外から見た時には窓が付いていた。もしかしてここから入れるんじゃ!
近づいて窓を確認する。丸い窓は大人が潜るには小さく、子供ならなんとか入れそうな大きさだった。しかし、当たり前だが窓は開かず、中に入ることは出来ない。
「……」
周りを見る。この時間帯は皆昼食を食べに店に入っているか、家に居るためか幸運にも誰も居なかった。
「……〜〜ごめんなさい!!」
風の膜を張り、窓を破壊する。本来なら凄まじい破壊音がするはずだが、空気の膜はそれを外部に漏らさなかった。音を包み込んだのだ。
急いで中に入るとそこにあったのは…地下へと続く階段だった。




