69話 発掘?大作戦
今日いつもより長めです…すみません。
観光が終わった次の日の朝、どこに行こうか考えていたところ、ノックする音が聞こえる。
「はーい、どうぞ?」
返事をして入って来てもらうとそこに居たのは…
「あ、お祖父さん…!?」
「うむ、おはようロク君。…座ってても大丈夫じゃよ?」
予想だにしない来客につい反射的に立ち上がってしまったみたいだ。
「昨日はすまんかったな。今日は別件で話があるんじゃが…」
「はあ…?」
そう言って部屋を見渡し誰もいない事を確認すると耳元でコソコソと話し始めた。
「実は、お主に極秘任務を頼みたいのじゃが……」
馬車の中で僕とヒサメさん、ウンスイくんにシュウくんの4人が2対2で向かい合って座っている。
「全くお祖父様も人遣いが荒いな」
ウンスイくんがそう言うと胸ポケットの中からネズミ(ハコビ)さんがチュチュ…と苦笑いするかの様に鳴く。
馬車の操縦はハコビさんが馬に指示を出して動かしている。
僕らが頼まれた任務は魔力を吸収するという指輪の回収。その指輪はヒサメさんの魔力を帯びているため魔力感知が出来るウンスイくんと僕、護衛にシュウくん、ハコビさんを入れた捜索隊を編成した。
「ていうか…なんでヒサメがいんだよ?今回の編成に入ってるなんて聞いてねえぞ?」
「指輪にはヒサメの魔力がストックされている。万が一その魔力が暴発してしまえば俺達では対処できない」
「だから魔力を吸収できるもう一つの指輪の出番という訳だ。その指輪の持ち主がヒサメだから…という理由で今回の編成に入った」
「じゃあその指輪だけ借りれば良いじゃねえか」
「別にそれでも構わないが…借りている間に暴走してあの日のようになっても良ければな」
「……」
その言葉に皆押し黙ってしまった。く、空気が重い…。何か気分を変える話題はないものか……あ!
「そういえばさ…ここにいるのって全員代表戦のメンバーじゃない?すごい偶然だね!」
「あ?…まあ、確かにそうだな…」
「ね、ね?そうだよね?いやーすごいなぁ、偶然、偶然………」
……。……あ、ヤバい。会話持たない。そして僕の心も持たない。誰かこの永久凍土を溶かして欲しい。
「今…この中で一番強いのって…誰…?」
「!!」
その発言をした人に一斉に顔が向いた。ヒサメさんだ。意外なところから救いの手が差し伸べられた。
「そりゃ…俺だろ」
「「それはない(な)」」
「はあ!?」
兄妹2人から即否定される次男。こういう気兼ねないのを見ると兄弟っていいなと思う。
「んじゃテメーらは誰なんだよ?」
「俺はヒサメだな。攻防隙が無さすぎる。実際に代表戦では優勝しているのが何よりの証明だろう」
「俺も優勝してるしー」
「お前は俺に負けただろ」
「うっせぇ!あれは油断しただけだ!今やったら絶対俺が勝つ!」
「私は…ロクが…強いと思う」
「え?僕?」
「そうか?速いだけだろ?俺達とは相性悪いし」
ムッ!事実だけどそう言われるとちょっとむかつくなぁ。
「やっぱ俺だろ」
「いや、ヒサメだ」
「ロク」
「俺」
「ヒサメ」
「ロク」
「「ワーワー」」
議論が白熱していき、いつの間にか空気が永久凍土から熱帯地域に変わった。
あぁー…収拾がつかない…。この人達全然自分の意見を曲げないんだから……。そういうところもそっくりだ。
窓の外を見つめる。空は雲1つ無い快晴だった。
「はぁー……」
あー……良い天気だなー、早く着かないかな。
時間はお昼頃、ようやくアジトに到着した。議論の結果、僕→ヒサメさん→シュウくんの三すくみでじゃんけんのように強い弱いが決まった。僕がグーならヒサメさんがチョキ、シュウくんがパーみたいな感じで。うまい具合にハコビさんがまとめてくれた。
「やっと着いたねー。ほとんど埋まってるけどどうやって探す?」
目の前には入り口が潰れてさらに雪まで積もったアジトが。中に入るには雪かきをしてガレキをどかす必要があるけど……とても1日では終わらなそうだ。
「この辺は後にしよう。最後にお頭が居た場所…『倉庫』を重点的に探す。…ハコビ頼む」
「お任せください。……ああ、そうです。はい、すみません、よろしくお願いいたします」
上司に謝る部下の様にお願いしているとガレキの隙間から1匹のネズミが出てきてトコトコと歩き出した。
「あの子が倉庫までの道を教えてくれますのでついて行きましょう」
やっぱり便利だな、霊魔法。
『倉庫跡地』
「こ、ここを探すのか…」
目的の場所に到着するとそこは落石と土砂で潰れ、倉庫どころか建物すら見えない程深く埋もれていた。
思った以上に長丁場になりそうで全員心なしか元気が無くなっていた。
「ロク、指輪の魔力は感じるか?」
集中して辺りの魔力を感じ取る。……………。
「う〜ん…感じないかも」
「俺もだ。深く埋まりすぎているのが原因かもしれん」
「じゃあ…どうするの…?」
「そうだな……」
ウンスイくんが顎を撫でて考えだす。
「…仕方ない、二手に分かれよう」
ウンスイくんの考えは、ここを掘り進む発掘組とアジト周辺を見て回る調査組とで分けて効率を図ろうというものだ。調査組が見つからなかった場合は発掘組に合流する流れだ。
「俺としては調査組が速攻見つけて帰れるのが理想なんだが…」
「悪くないと思います。…して誰が調査組に……?」
「ロクとヒサメでいいだろう。ロクが魔力感知して見つけたらヒサメに取ってもらえ」
「えー俺もそっちが良いんだけど?」
「いや、お前は絶対発掘組だ」
「何でだよ!?」
「お前はどう考えてもこっちだろ。調査ってガラじゃない」
ウンスイくんの言葉に全員が頷いた。
「覚えとけよ…テメーら…!!…おい、絶対早く帰ってこいよ!それか指輪見つけてこい。見つからない上に遅かったら…分かってんだろうな……!」
「分かってるよ…確認するだけだから大して時間はかかんないって…」
「じゃあ、頼んだぞ」
こうして僕らは手分けして指輪の捜索を開始した。
崩壊したアジトの周辺を回る僕とヒサメさん。やることはシンプルでただ魔力感知をしながら反応がないか探すだけ。余りにも退屈なので会話しながら進んでいた。
「ねえ、ちょっと気になってるんだけど…ヒサメさんってお祖父さんのことどう思ってるの?」
「え…?お祖父様?…どう…って?」
「好きなのか嫌いなのかって話だけど…ヒサメさんの中で何番目くらいに好き?」
「ん……5番目くらい?」
「はは…そうなんだ…」
5番目って…下がどれだけいるかが分からないから判別付きづらいな。でも上に4人もいる事は分かった。
「ちなみに僕は?何番目くらい?」
『ドサッ』
後ろを見るとヒサメさんが雪にダイブしていた。ガレキが多いから引っ掛けて転んでしまったのだろう。
「あははっ!大丈夫?」
怪我をしていないか駆け寄るけど幸いガレキがあるところには転んでいなかった。
手を差し伸べるが自分でスクッと立ち上がりすぐに雪を払ってフードを被ると何も言わず早足で進んでいった。その時隙間から見えた顔は耳まで真っ赤に紅潮していた。笑われて恥ずかしかったのかな…?後で謝ろう。
大体周りを見終わったけれどそれっぽい反応は見つからなかった。時間も結構経ったしそろそろ戻らないとシュウくんに殺されそうだ…そう思ったとき、
「…!!ヒサメさん後ろ!!」
その言葉と同時に即座に後ろに氷弾を飛ばす。木々の間に飛んで行った氷弾は遠くの方で
「アイタッ!」
という声と重なってぶつかる音がした。
近づいてくる…この魔力反応は…、
「また会ったなぁ…ホワイト…じゃない、ロク!!」
「レッドー!?」
赤い鬼面を付けた大柄の男はのそのそとこちらに近づいてくる。鬼面のデザインは前よりも眉毛は垂れ下がって口はニッコリしている。何か…迫力がない。僕でも作れそうなクオリティーだ。
「生きていたのか!」
正直、生きててくれたことに関しては素直に良かった。氷漬けにしたの僕だったしピンク以外は死んだと聞かされて罪悪感があった。
でも、あの状態からどうやって抜け出したんだ…?
「俺だよ。こいつ助けたんは」
突然背後から声がして肩に手が置かれる。驚き後ろを振り返るとレッドとは対照的で真顔のある意味怖い顔の鬼面がいた。
「おー元気そうで何よりだなぁ!」
「その声…グリーン!?」
あの後、逃げられたのか…!というか魔力感知に全く反応が無かった。今もこうして相対しても反応が見られない。前にレッド、後ろにグリーンの挟み撃ち…最悪の状況だ。
「…復讐しに来たの?」
声が震える。この二人はセッキ族の中でも身体能力が高く、二人相手は太刀打ちできない。
「…!そうだな…俺らはお前にお礼参りを…!!」
僕の肩に置いていたグリーンの手が凍り付く。
「うおっと…!?こりゃ一体何だ!?」
「うおおおお!!」
前から雄たけびが聞こえたので向き直ると、レッドが首から下を氷漬けにされ何発も氷柱を打ち込まれてその傷口から侵食されていた。
飛び散った血は赤い水晶に変わり、ギラギラと赤い光を放っている。この地獄の光景、これをやったのは誰かなんて聞くまでもなく、目の前にいる噂に名高い『氷獄姫』だった。
「ロクを放して…!」
手を前にかざすと一瞬でグリーンの腕が凍り付いた。
「マジかよ…!!」
グリーンの姿が消え、持ち前の超スピードでヒサメさんに迫る。
「あ…!」
僕が声を上げる前に決着がついた。忘れていた。ヒサメさんと戦う上で一番危険な場所があることを。それは、侵食する氷を生み出す彼女自身…!
グリーンは不用意に近づきすぎた。そのせいで自ら凍結されに行ってしまったのだ。
「ロク…大丈夫…?」
「…!う、うん…!ありがとう」
心配して僕の顔を覗く仕草に少しドキッとして目を逸らす。
「うーん…とりあえずこれ、どうしよっか?」
何はともあれこの人たちを放置するわけにもいかないのでレッドと話をすることにした。
「レッド、僕を狙うのは…」
「うおおおお!!痛てぇーーー!!」
…これじゃ話にならないな。ヒサメさんに侵食する氷だけ解除してもらって拘束するようにお願いした。
「レッド、僕を狙うのはもうやめてよ」
「はあ…はあ……はぁ?何だそれ?」
「グリーンが言ってたよ。『僕にお礼参りしにきた』って」
「?ああそうだよ。俺たちはお前に礼を言いに挨拶に来ただけだぜ?」
「え?」
「え?」
「いやー酷い目にあったぜー。ちょっとからかうつもりがまさか俺たちの方が殺されかけるとはなぁ」
「全く…勘違いで俺の体に穴開けやがってよぉ。お前の彼女の手綱くらい握っとけよ」
「なっ!?違うよ!彼女じゃない!!」
「なんだ違うのか?あんなに必死に助けようとしているもんだからてっきり…」
「確かに!あの時相当急いでたもんな~!!」
「やめて~!!」
「俺たちが言うのもなんだがお頭を止めてくれてありがとな。詳しい事情は知らんがあの人はずっと何かに苦しんでた」
「あのアジトもホントは研究室以外は何もなかったんだが、俺達が移住してきてわざわざ部屋を作ってくれたんだ。労働力としか見てなかったのかもしれないけど…あの人が俺達の救世主なのは変わらないからな」
「俺はそんなこと全く思わなかったが、お頭がしたいことは何でも叶えてやるつもりだったぜ!」
「そんな風に思ってたんだ…。セッキ族って残忍だし仲間意識薄いと思ってた」
「そりゃそうだ!純粋なセッキ族はお頭だけだからな!俺達全員後から移住してきたはぐれ者だぜ?」
あ、そうなんだ。
「それでも皆鬼面を着けていたんだ?セッキ族でもないのに?」
「まあ…それが仲間意識ってやつなんだろうさ。別にお頭に強制された訳でもないが、なんだかんだ皆着けちゃってよー。唯一の繋がりがあの鬼面だったんだ」
「それに、お頭もちゃっかり鬼面に魔法弾きの効果まで付けてるし…心のどこかでは俺達のことも考えてくれてたのかもなぁ」
「あの面カッコよかったからな!俺もずっと着けてたぜ!今は壊れちまって自分で作ったやつしかないけどよ…」
どうりで前よりクオリティーが低いと思った。レッドの自作なら納得だ、不器用そうだもん。
「じゃあ俺達はもう行くよ。達者でなー」
「なんだ?もう行くのか?俺はまだ話し足りないんだが…」
「お前話長えじゃん。俺達は挨拶に来ただけなんだからよーここいらでお暇しとこうぜ?それに…俺達がいたらせっかくのデートなのに邪魔だろ?」
「ほ!それもそうだな!じゃあなご両人。ちゃんと手繋いで帰るんだぞ!」
言いたいことを散々言って、来た道を戻っていく二人。
「えーっと…気にしなくていいよ?あの人たち存在自体が冗談みたいなものだから」
ヒサメさんに一応からかわれたフォローを入れておく。下を向いたままコクコクと頷いてくれたので何とか機嫌を損ねる事は回避できた。
「あ…そうだった!」
少し歩いた先でグリーンが歩みを止め、こちらを振り返る。まだ何か用事があったみたいだ。
「おーい、これお前らのだろー?そらっ!」
こっちに何か投げてきた!?随分と小さいな…?投げられたものを条件反射で受け取る。手の中に入り込んできたものを見て僕は驚愕する。
「えっ!?指輪!?」
魔力感知でもヒサメさんの魔力が感じられたので間違いなくあの指輪だ。いや…でも何で?近くには反応すらなかったのに…?
「ガレキの中で見つけたんだー。ついでに渡しとこうと思って忘れてたわー!今度こそじゃーな!」
そう言って二人は去って行った。これが最後になるかもしれないし、またどこかで会えそうな気もする。
そんな二人の背中を見えなくなるまで手を振って見送っていた。
「じゃあ、僕らも戻ろうか!指輪も見つかったし!」
「うん…!」
来た道を戻っている時、ヒサメさんが転んだ場所にさしかかる。あ…そういえば謝ってなかったな。
「そういえば…あの時転んだの笑っちゃってごめんね」
「…え?……ああ…あれ…。大丈夫…怒ってないよ?」
「そう?良かったー。あのヒサメさんが転んじゃうっていうのが新鮮だったから…つい。…あ、あと聞きそびれたんだけど、僕って結局何番目なのかな?」
その時、夕暮れに照らされた白銀の糸がフワリと放物線を描く。
「おわっと…!…ふう、危なかったね?」
隣で転びそうになっていたヒサメさんを何とか手を引っ張り受け止める。
「この辺り危ないからこのまま戻ろっか」
「…う…うん……ありがと…」
ヒサメさんもおっちょこちょいなところがあるんだな。新たな一面が見れて嬉しかった。
「…で僕は何番…」
「…!ダ…ダメ…!教えない…!」
えぇー……。
馬車に揺られ暗くなってきた道を帰る。この場にいる全員が疲労でぐったりして寝ていた。
特に発掘組は土砂の撤去で体力を使った分さらに疲れているだろう。僕らが戻ってきた時は凄い勢いで喜んでいた。
それだけ掘り起こすのが辛かったんだろうな…。
そんな中ハコビさんだけ安全の為に外に出て馬車を操縦している。大人ってすごいな…。
夢うつつの状態で心地良い揺れを感じながら再び眠りに落ちると、次に起きた時には既に里に到着していた。
「皆さん、お疲れ様でした。今日はもうゆっくり休んでください。指輪は私から里長に渡しておきますから」
ハコビさんからそう言われ、僕ら四人は自分の部屋に戻って行く。これで任務は終了…。後は…
明かりが落ちた廊下をヒタヒタと慎重に進む。天井から聞こえる家鳴りや外からの風の音、広い空間ゆえにォォォと声のような空洞音など友達の家とはいえこの不気味な雰囲気はかなり怖い。
そんな調子で進んで行き、やっと目的の場所まで辿り着く。
『コンコン、コンコン』
ノックを4回。するとギィィとゆっくり扉が開いて僕はその中へと引き摺り込まれて行った。
中に待っていたのは…
「よく来たな…!今日はご苦労じゃった!まあ座りなさい」
歓迎状態のお祖父さんだった。
「それで…早速だが…聞いても良いか?今回の『極秘任務』の結果について…」
「は…はい…!」
今回の任務。指輪の回収とは別に僕だけもう一つの任務を課せられていた。その内容とは…
「ヒサメさんがお祖父さんをどのくらい好きか…なんですけど……」
「うむうむ!!」
「えっと…」
「うむ!」
「そのー…」
『キラキラ』
すごいキラキラした瞳で見つめてくる。こんなに純真無垢な目をしているのに本当の事を伝えて良いのか?
『キラキラ』
「…五本の指に入るくらい好きだって言ってました…」
「…!!そうか!そんなにワシのことが好きじゃったか…!!ムフフ…!!」
嘘は言ってない。その中でワーストなのは絶対に黙っておこう。そう心の中で誓った。
こういう他人の色恋を茶化すおじさん居ますよね。
でもその人のおかげで進展したりする事もありますよね?
今日もどこかで誰かのキューピッド
byお節介おじさん
「…レッド。お前…急にどうした?」




