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67話 隠された真相

「隠された真相…それは、『白マントの勇者』ですか?」

「!!…そうじゃ」

 白マントの勇者?何だかカッコいいな。そんな存在がいたなんて。だからセッキ族の人達は白マントを着た僕を執拗(しつよう)に狙っていたのか?

「ですが、それはお祖父様のことだったのでしょう?セッキ族のお頭からそのような話は聞きました」

「そうか…彼奴(あやつ)から聞いたのか…。だが、それは間違いだ」

「…え?」

「あの場には、もう1人…白マントの男がいたのじゃ」

「…!?なるほど…そういう事ですか」

「…え?」

 ウンスイくんは納得してる様だけど、僕は全然話に追いつけてない。

「順を追って話すから、心配しなくて良いぞ?」

 そう言ってニッコリ笑う。理解できてなかったの見透かされてた…。



「60年前、この地方で蛮族として有名なセッキ族の頭領がヒョウゲツの里長の娘に一目惚れをした。その娘を大層気に入った頭領は里を出た時を狙い、誘拐したのじゃ」


「その知らせを受けた里長は戦士達を集い、セッキ族の村へ戦争を仕掛けた。戦いは熾烈(しれつ)を極め、いつしか戦況はこちらが劣勢になっていたのだ。それもそのはず、当時のセッキ族はヒョウゲツの10倍以上の戦力差があったからの。例え一人一人が強かったとしても10人に囲まれれば、なす術がない」


「皆が絶望に染まり娘の奪還をあきらめかけていた…そんな時に奴は現れた。『白マントの勇者』じゃ。其奴(そやつ)は子供でありながら自分の倍はあろうかというセッキ族を投げ飛ばし、多人数相手でも決して怯まず立ち向かい、徐々に戦況を変えていったのだ」


「先に言ってしまうとな、その白マントの勇者はワシではない。その正体は、たまたまこの地を訪れた旅人だったのじゃ」


「そしてついに勇者は頭領を追いつめ、里長の娘を救いだした…というのが本当の話じゃ」



 そこまで話し終えるとふぅ…と一息つき、ちゃぶ台の上にあったお茶をすすった。

「お祖父様、1つ聞いても良いですか?」

 ウンスイくんが先生に質問をするみたいに手を上げる。お祖父さんがコクリと頷くとウンスイくんが話し始める。

「60年前の真相については理解できました…ですが、お祖父様達が何故それを隠蔽したのかが俺には分かりません。というより、隠す必要があるのですか?」

 ウンスイくんの指摘は僕も同感だった。あと、この真相を僕ら2人だけに話すのも違和感を感じる。本当はまだ何かあるんじゃないか?…そんな気がしてならない。

「まあ、待て。一気に話すのも疲れるからな。まずは事件の内容だけに絞って話しただけじゃ。最初にも言ったが順を追って話すから質問の答えはその時に言おう」

「はい…分かりました」

「うむ。…さて次は白マントの勇者についてじゃが……」



「戦争が激化して数日、ワシが前線からの帰りに行き倒れている童を見つけた…それがワシと勇者の初めての出会いじゃった。其奴をワシの家で看病し、目を覚ました時、自分の事をしがない旅人と名乗った其奴はここに来る途中、荷物を奪われたと言っていた。きっとセッキ族が寝ている間に奪ったのだろうと話し、今起きている戦争についても忠告のつもりで教えてやった。そうしたら旅人はこう答えた。『それなら、荷物を取り返すついでにその娘を救いだしてくる』とな。」


「当時のワシは童でありながら戦士として実力を認められており、少々…いや、大分天狗になっておった。だが、戦争に参加してみれば波のように迫り来る敵に恐怖し、逃げ回ることしかできなかった。そんなワシと同じような年の男が里長の娘を救うだと?戦争を甘く見ている奴の妄言だと嘲笑(あざわら)った。だが、其奴は助けてくれた恩返しだと屈託の無い笑顔で返すものだからいつの間にか怒りすら消え失せていた…そんな不思議な魅力を持った奴じゃった」


「旅人は上着を貸して欲しいとワシに頼んできた。着替えも全て取られて今着ているものしかないらしい。確かにこの極寒の地で布服一枚は自殺行為だ。仕方なく、ワシのお古の上着を其奴にあげた」


「そして、運命の日…そこでワシは旅人の…『白マントの勇者』の実力を知った。空を自在に飛び回り、襲い掛かる敵をまとめて薙ぎ払い、たった1人で敵の陣形を瓦解させた。陣形が崩れ、混乱する相手などヒョウゲツの戦士にとって敵では無かった。そうして、どんどんと形勢がこちらに向き始め、あっという間に頭領の元にまでたどり着いた。ワシと旅人、里長の3人で追い詰めることに成功したのだ」


「しかし、セッキ族の頭領は一筋縄では倒せず、3人がかりでも大したダメージを与えることができなかった。そして、戦っている内にこの中でワシが足手まといだったのは嫌でも気づいた。この時、ワシは焦るあまり最大のミスを犯してしまったのだ」


「足止めに成功したワシは欲をかいて自分が倒そうと前に出た。それが罠だとも知らずに。剣を突き立てる前に奴は拘束を簡単に破壊し、手斧を振り下ろす直前だった。逃げられない…直感的に死を悟った。剣は真っ二つにされ、ワシの頭に手斧が触れたとき、後ろから旅人がワシを引っ張って命を救ってくれた。だが、振り下ろされた衝撃でワシら2人は吹き飛ばされてしまった。致命傷にはならなかったが頭から深く切られたワシはそのまま意識を失った」


「次に目を覚ましたときにはワシの家じゃった。一瞬今まで夢を見ていたのかと思ったが顔の痛みとぐるぐる巻きにされた包帯が現実だと証明してくれた。里長に確認を取ろうと外に出ると里の皆がワシを囲み、感謝を口にする。悪い気分ではなかったがどうも腑に落ちない。その騒ぎを聞いてか里長がワシを呼び、事情を説明した」


「あの後、旅人の力もあって何とか倒すことができたらしいが、その手柄は全てワシがやったことになっている…と。当然ワシは納得がいかず、里長に向かって猛反発した。だが、そうしなければならない理由があった」



 そこまで話した後、お祖父さんはウンスイくんに何故だと思う?と突然問題を投げ掛けた。ウンスイくんは少し考えた後、

「……勇者が余所者だったから…ですか?」

 と答えた。その答えに、

「そうじゃなぁ…正解とも言えるし違うとも言える」

 と曖昧な言葉が返ってきた。

「お主はどう思う?」

 こっちにも質問が飛んできた。正直全然分からない…。分からないときに答えるのってどうしてこんなに緊張するんだろう?

「えーっと……?……その旅人さんが頼んだから?」

「…ハッハッハ!それも正解じゃ!」

 笑われた……。この反応からして絶対違うし……今すぐ布団にくるまりたい気分だ。



「正解は、里を守るためじゃ」

「……!第三勢力に対する牽制(けんせい)……」


「そうじゃ。セッキ族との戦いでヒョウゲツの里も甚大な被害にあった。立て直すのにも時間と金がかかる。そんな状態で襲撃にでもあってしまえば今度こそヒョウゲツはおしまいじゃ。そこで、セッキ族を1人で壊滅させたという白マントの勇者は牽制にはうってつけじゃった」


「そんな存在がヒョウゲツにはいる…そう思わせることで迂闊に手を出せないようにさせる…。里長はそう考えていたのだ。だが、それには重大な問題があった」


「肝心の勇者が余所者だった…ということだ」


「これでは、旅人が去った後に攻められてしまう。それに、余所者の童に助けられたとなってはヒョウゲツの箔が落ちてしまうと危惧した里長は、その旅人に娘の婚約者にならないかと提案した。だが、旅人はそれを断り、こう言ったという」


『僕はまだ見たことの無い世界を旅したい。だから代わりに、彼を勇者にしてはどうか?実力はあるし、僕とも背格好が似ているからきっと大丈夫。命を助けた借りもあるし、やってくれるよね?』


「半ば脅しみたいなものじゃったが、助けられたのは事実じゃし、里のためと言われワシは『白マントの勇者』という偽りの称号を受け入れた」



「…というのがことの真相じゃ。その嘘のお陰でワシが里長となった時にはヒョウゲツは王都に次ぐ大国にまで発展した。もう勇者という称号が必要なくなった時代になった時、ワシはやっとそのクソッタレな称号を闇に葬り去れたという訳じゃ」

「なるほど…だから俺達には勇者の話が伝わっていなかったのですね」

「当たり前じゃ、やってもいないことを自分の孫に伝えるなぞ…黒歴史にも程がある」

 それは確かにそうかも。でも、その称号に恥じぬように里のためにここまで頑張ったのは紛れもなくこのお祖父さんの力だ。もう十分立派な勇者だと思う。

「さて、じゃあもう1つの本題について話そうかのぅ」

「…もう1つの本題?まだ何かあるのですか?」

「実は、その白マントについてじゃが…最後にその旅人はこう言い残した」

『荷物がダメになってしまったからこの上着は貰っていく。命を助けたからこれくらいはサービスして欲しい』

「…じゃあ最後にロク君、お主に質問じゃ」

 お祖父さんの顔付きが変わる。ただよらぬ空気に息を呑んでしまう。

「お主が着ていたあの白マント…一体どこで手に入れた?」

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