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66話 事件の後日談

 あの事件から3日が経った。

と言っても僕からすればほんの数時間…なんなら数十分前にも感じられる。あの後、ヒョウゲツの人達が僕らを保護してくれた。僕はウンスイくんを託した後に意識を失って、気付いたら知らない天井だった。目が覚めた時にヒサメさんがベッドの横で突っ伏していたのには驚いたけど。

 どうやら僕は丸2日眠っていたらしく、その間はウンスイくんの家にお世話になっていたみたいだ。目が覚めてすぐに訪問医さんに診てもらい怪我や後遺症はないと診断されて、大事をとって安静にするように言われた。部屋にはウンスイくんやシュウくん、ハコビさん(ネズミ)、お頭の部屋で迎えに来た戦士さんがお見舞いに来てくれた。その時に僕が気を失った後のことを軽く話してもらったが、

 あの後、セッキ族のアジトは完全に崩壊、セッキ族の生存者は牢屋にいるピンクのみらしい。ちなみに僕は知らなかったんだけど、ウンスイくんはあの時洗脳されていたらしく、お頭の知識と記憶が一部刷り込まれていたみたい。その人格から洗脳の解き方を聞き出して元には戻ったんだけど、本人曰く、

「あの時の記憶は残ってないが、何故だか白マントを見ると心臓の鼓動が早くなるんだ。だが決して嫌な気持ちではない」

 と言っていた。記憶の混濁(こんだく)による一時的なものでいずれ消えるからそこまで心配しなくていいってお医者さんには言われたらしい。僕も記憶が混ざりかけたことがあったし…よくあるのかもしれない。

 シュウくん達は脱出とほぼ同時にアジトが崩壊したらしく、残っていた僕とお祖父さんを心配していたって戦士さんが言ったらシュウくんが戦士さんに殴りかかってちょっとしたパニックになった。

 話し込んでいたら夜になって皆は帰って行った…ヒサメさんを除いて。僕が目を覚ましてからかれこれずっと部屋に残っている。自分の部屋に戻らないのか聞いたら、

「…んー…眠くなったら…戻る」

 とだけ。何か話したいことでもあるの?って聞いても、

「別に…」

 って…。本当に考えが読めないんだよなぁー。

 しばらくするとお手伝いさんが入ってきてヒサメさんを連行していった。なんかこう見るとネコみたいだな。自由なところとか。

 そして今、目が覚めた時、ウンスイくんが部屋に入ってきた。



「ロク、入るぞ。調子は…良さそうだな」

「おはよう、どうしたの?」

「朝食の後、おじい…里長から話があるから連れて来てくれと頼まれてな。食べ終わったらこの部屋を出て…って一緒に行けばいいか」

「あーうん。僕もそうしてくれるとありがたいかなぁ」

 昨日、トイレに行った時は自分の部屋が分からなくなって大変だった…。

 部屋の前に置いてあった朝食を食べながら何の話か気になったのでウンスイくんに聞いてみた。

「恐らく今回の事件のことだろうな。俺も呼ばれているから。…だが、ヒサメとハコビを呼んでいないのが奇妙だ」

「それは確かに…」

「まあ、ハコビは応援を呼びに行った時に粗方話した

 みたいだし、ヒサメも事件のことはほぼ覚えてないから事情を聞くまでもないと思っているのかもな」

 里長…ウンスイくん達のお祖父さんか…ウンスイくんを助けた時、感謝されたのは覚えてるけどちょっと怖そうな感じだったな。友達のお祖父さんだけど緊張するなー。

 そんな事を考えてる内に朝食を食べ終えてウンスイくんとお祖父さんの部屋に向かった。

 集会部屋の奥に鍵のかかった部屋がそうらしい。まず、家に集会所があることの方が驚いた。ここ家というより屋敷とかに近い。部屋の数は見ただけでもざっと50はありそうだった。学園の時には家柄なんて気にしなかったけど結構凄いところの人と友達になったんだなと思う。

『里長の部屋』

「お祖父様、ウンスイです。入ります」

「おお!よく来た!入れ入れ。お友達も来てもらってすまんなぁ」

「あ、はい!」

 あれ?思ったより気さくな感じがする。初めて見た時はもっと厳格なオーラが漂っていたような…?

 部屋の中は全面畳が敷かれていて意外にもこじんまりしている(4畳分)。僕が今泊まっている部屋より狭い。かといって物が多い訳でもなく、畳まれた布団にタンスとちゃぶ台、座布団が5枚と最低限の生活品しかない。お爺ちゃんの部屋のイメージそのもので、とても里長の部屋とは思えない。

 座布団を用意され、ちゃぶ台を囲んで座ると早速お祖父さんが話し始めた。

「まずは、ロク君じゃったかな?お主を巻き込んでしまった事心より謝罪させてくれ。本当にすまなかった」

 そう言って地面に頭が着くほど深々と下げた。

「え、あ、あの、大丈夫です…!気にしないで下さい…!!」

 ウンスイくんにもこうやって謝られたな…。流石はお祖父さん、こういう所がウンスイくんにそっくりだ。

 そのウンスイくんはというと横で笑いを堪えていた。あからさまにテンパっていた僕を面白がっていて、腹を抱えて頭を下げている。側から見れば謝罪しているようにも見えるが僕の目は誤魔化せないからな。

「…っお祖父様…!ロ、ロクは…そういうの苦手なので感謝の意を伝える方が良いですよ…クク…!」

 笑いが堪えきれてないよ。

「む、そうか、逆に気を遣わせてしまったな。しかし…」

 お祖父さんが僕を見つめる。じっくりと、品定めするかのように。見つめられるのも慣れてないので気恥ずかしくて目を下に逸らす。

「…雰囲気も何処となく似ておるな。…面白いのぉ」

 しみじみと落ち着いた声でそう言った。

「お祖父様、俺達を呼んだ理由は…?」

 ウンスイくんが本題を切り出した。僕も気になっていたのでうんうんと頷いた。

「…うむ。最初はウンスイにだけ伝えようと思っていたのじゃが…」

 そう言ってまたこちらをチラリと見る。

「ロク君にも伝えるべきかと思ってな。60年前の事について」

「60年前?」

 それって前も聞いた気がする…。どの話だったっけ?

「60年前のセッキ族による誘拐事件ですね?」

 あ…!そういえばそうだった。確か昔も争った事があるって言ってた。

「そうじゃ…よく覚えておったな。ワシの妻…ヒョウゲツ ユキが誘拐されたあの事件…」

「実はあの事件にはワシとユキ、当時の里長しか知らない隠された真相があるのだ」

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