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55話 受け継がれた白マント

「……恐ろしいくらい全く痛くないな……」

 走りながら傷の具合を確かめたが自分の感覚では完治しているようだった。予想以上の効果に嬉しい反面、何か副作用があるんじゃ無いかと恐怖している。それでも残りの一つは何かの保険として持っていくことにした。

 医療部屋を後にした僕が次に向かっているのは研究室だ。作戦の目的はヒサメさんを救出することなので一番いる可能性があるお頭の部屋に向かわなければならない。今ならウンスイくんが敵の大部分を引きつけているおかげで侵入しやすいはずだ。

 考えている内にもう一度大広間に戻ってきた。セッキ族は八人…だけどその中にレッドは居ない。こっちに来ると思っていたんだけど…まさかウンスイくんの方に向かったのか?だとしたら僕がヒサメさんを助けに行かなければ。鬼ごっこの作戦では敵を撒いた方が救出する手筈だ。……ウンスイくんならきっと大丈夫だ。『神隠し』を使い、大広間の敵に気づかれることなく、僕はその先の通路へと進んでいった。



「準備をしようと来てみれば、まさか大事な人質が逃げていたなんてな…。大方、昨日の新人が手を回したといったとこだろう?集会の時は反抗する気概すら無くなっていたと思ったんだがなぁ…」

「……フン。ロクは気弱そうな見た目とは裏腹に諦めの悪い性格をしているからな。そう簡単に推しはかれる者ではないぞ?」

「だが結果は変わらない。お前もあの新人も今日処刑されるのだ」

「…お前がヒョウゲツを憎んでいるのは分かる。だが、ロクはヒョウゲツの者ではない。アイツはただ巻き込まれただけだ」

 その言葉を聞き、お頭の様子が変わる。少しの間黙ってしまったと思ったら俺に変な質問をしてきた。

「…お前たち長老家の子供は3人兄弟だったはずだ。最後の兄弟は白いマントを受け継いでいるのか?」

 白いマント?何のことだかさっぱりだ。ここは少しブラフをかけてみるか。

「あのマントか?あれは爺さんの蔵に保管されている。あのマントに価値があるとは思えないがなぁ?」

「…そうか、どうやら期待外れだったようだ。たった60年でこうも風化してしまうとはな」

「風化?」

「お前はそのマントがどんな意味があるか分かっていない。あれは…あのマントは……」

「勇者の証だ」

「勇者?勇者だと?俺が聞いた話ではそんな者はいなかった」

「ならば俺が教えてやろう。…お前を捕まえた後にな!」

 奴の手から氷が伸びてくる。その生成の速さはあのヒサメと引けを取らないくらいだった。嫌な予感がして氷に包まれる直前、風魔法の応用で自分の体を後ろへ飛ばした。その精度は表現の通り、『飛ぶ』のではなく『飛ばす』と酷いもので、間一髪で拘束を避けることができたが、着地は転がりまくって軽い打ち身ができた。風魔法で身体を自在に操作するのはとんでもなく繊細なコントロールが必要だ。それをいとも簡単にできているアイツはつくづく規格外だと気付かされる。

「避けたか。いい判断だ。あのまま立っていたらお前の負けだったからな」

 自分でもなぜ避けたのかは分からん。まあ、結果的に避けて正解だった。なぜなら、

「仮面の効果が発動しない?」

「当たり前だ。誰がそれを作ったと思っている。開発者がそれに苦しめられたら意味がないだろう?」

 すぐに体勢を立て直し、伸びてくる氷を同じく氷魔法で相殺する。

「ぐっ!!ぬぬぬ…!!」

「力比べか、いいだろう。俺もこの力を試してみたかった。…簡単に潰れてくれるなよ?うっかり殺してしまうかもしれないからな」

 この氷の圧力、この魔力は…ヒサメ?先程の生成の速さもヒサメと同じスピードだった。まさか…

「この…力…は、ヒサメの…ものだな?」

 仮面の下から奴の関心したような、もしくは嘲笑ったかのような鼻にかけた笑いが聞こえた。

「たった一度見せただけですぐに理解してしまうとは…本当に素晴らしい判断力だな。…そうだとも!これはお前の妹の力だ!兄妹揃って末恐ろしい才能を持っているみたいだが…あと10年は早かったな。もう少し早く生まれていればお前か妹が白マントを受け継いでいたかもな?残念でならない」

「ぐっ!!く…くくっ!」

「そろそろ限界か?ならそのまま氷漬けにして…」

「…クハハハハッ!!」

「何を笑っている?気でも触れたか?」

 奴の氷が俺の身体に侵食してくる。ヒサメの侵食する氷魔法だ。…もう逃げることはできないだろう。それでも奴には伝えないといけない事があった。最後の力を振り絞って口を動かす。

「勇者ならもう居るぞ…!!『風の勇者』が…な………」



『研究室』

「……誰か…そこに居る?」

「……うん、居るよ…ヒサメさん」

『神隠し』を解除して目の前に姿を現す。彼女は僕を見て、何一つ表情を変えずこう言った。

「…誰?」

「……そうだよね。僕の顔を見せたくらいじゃ記憶は戻らないよね…ならさ」

 僕はあの時と同じように彼女に『疾風』を放つ。吹き飛ばされた彼女は凍てつく風で威力を相殺した。

「リベンジ戦といこうか。…今度は僕が勝つかもね?」

「キミ…面白いね…!いいよ…やろう…!」

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